Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

「靖国に弥栄(いやさか)あれ」を読んで

数日前から麻生太郎氏が靖国神社についての私見を発表するという報道が出ていましたが、今日「靖国に弥栄(いやさか)あれ」というタイトルで自身のホームページに発表されていました。


http://www.aso-taro.jp/lecture/talk/060808.html


靖国神社に対して政治が介入しようとする時の問題点として、憲法政教分離原則との矛盾があったのですが、麻生氏の基本的なアイデアは、宗教法人としての靖国神社護国神社が自主的に解散することで、この問題を回避するということのようです。そして最終的には特殊法人として国の元に置くことを提案しています。
僕も靖国問題がここまで混乱した大きな原因として、戦後、靖国神社が国から独立した宗教法人となってしまったことがあると考えています。もし靖国神社が戦後も国の元にあったならば、元A級戦犯を合祀するかどうかの判断も政府の決定として行われていたでしょう。元A級戦犯についてどちらの判断が出たとしても、それは民主主義に基づく正当な決定ですから、堂々と国の方針として主張することができたと思います。
靖国神社が独立した宗教法人となってしまったことは、靖国問題における最初のボタンの掛け違えであり、問題の根底に横たわっていると思います。麻生氏が分祀や首相参拝と言った派生的な議論ではなく、靖国神社を国の元に戻そうという本質的な問題を取り上げたのは、さすがだと思います。
ただ、この手法に危ういところがあるとすれば、政教分離原則を宗教法人か否かという問題に置き換えていることでしょう。靖国神社宗教法人でなくなったとしても、やはり神道の形式に基づく神社なので、それを特殊法人とすることについては左派の反対が強いでしょう。また、靖国神社特殊法人とすれば、政府の決定で元A級戦犯分祀遊就館の内容変更が可能となりますので、それを恐れる右派からの反対もあると思います。今の靖国神社上層部にとっては、特殊法人化によって神社を追われる可能性もありますしね。左右双方の反対をどう抑えるかが、この案の実現の鍵となるでしょう。
僕は靖国神社が国から独立した宗教法人となっていることが問題だと考えているので、この麻生私案は支持したいと思います。今更靖国神社特殊法人になっても、国家神道が復活するとは思えません。この私案が実現すれば、元A級戦犯分祀遊就館の問題についても民主主義に基づいた解決が可能となるでしょう。だから実現して欲しいと思います。

(追記)

今日、麻生氏がこの件について行った記者会見の記録がありました。報道が信用ならない以上、こういうのも目を通しておかないといけませんね。w


外務省: 外務大臣会見記録(平成18年8月)