Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

安倍内閣を待ち受けるもの

自民党総裁選で6割以上の票を得て当選した安倍晋三新総裁ですが、読売新聞の記事によると、安倍氏は実質成長率3%を目指す方針だそうです。

 また、安倍氏は、今後の経済運営について「政府として(7月の新経済成長戦略大綱で)定めた2・2%実質成長は何とか実現したい。できれば3%まで近づけていくことも不可能ではないだろう。その努力をしていきたい」と述べ、年3%の実質成長率を目指す考えを初めて表明した。


http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe6600/news/20060906i113.htm


これが実現すれば誠に結構なことなのですが、そこに至るには現在予測できるだけでも次のような問題があるように思います。

  1. 日銀の量的緩和解除とゼロ金利解除、そしてさらなる利上げの可能性
  2. 政府の歳出削減による財政赤字削減
  3. グレーゾーン金利廃止に伴い新たな借り入れが不可能になる債務者の急増と、彼らの自己破産・自殺・夜逃げなどに伴う不良債権の増加
  4. 「利上げによる消費拡大」「強制ボランティアによる大学入学延期」「徴農制度」など、経済学への無理解や無視に基づく政策実施の可能性

これらはいずれも景気を悪化させる可能性がある政策であり、このような政策がまかり通るようであれば年3%の実質成長率は非常に困難でしょう。
これに対して景気を回復させるための具体的な政策としては今のところIT投資減税くらいであり、あとは抽象的な意見の域を出ていません。これだけで上記のマイナスを埋め合わせることが出来るかは疑問です。特に金融面の対策が欠けていることは問題でしょう。


今後安倍政権が年3%の実質成長率を目指すのであれば、金融、財政の両面で相当思い切った政策が必要でしょう。金融面ではインフレターゲットの導入と日銀買いオペの大幅増は不可欠でしょうし、財政面でも財政赤字削減は時期尚早でしょう。
ただ、これらの政策は財務省や日銀の抵抗に遭うことは必至ですから、その抵抗を抑えて政策を実施できるだけの力量と見識を持った人材が経済閣僚には求められることになります。


ただ、今の自民党にそれだけの人物がいるかと言えば、どうも疑わしいんですよね。麻生太郎氏や中川秀直氏もまだ金融面の見識が不足しているように思えます。まあ、民主党よりはかなりマシなのですが。
小泉首相竹中平蔵氏を重用したように民間から経済のブレーンを連れてくるという手もありますが、これは安倍氏自身がその必要性をどれだけ理解しているかにかかってくるでしょう。ただ経済に弱いことでは定評がある安倍氏ですから、どれだけブレーンの必要性を理解しているか、あまり期待できない面があります。


今のままでは年3%の実質成長率というのはかなり苦しいのではないかという気がするのですが、安倍氏にはまだ明かしていない秘策があるのでしょうか?もしそのようなものがなく、先に述べたようなマイナス面だけが目立つのであれば、来年7月の参院選の頃には景気が悪化し、安倍政権は危機を迎えることになるのではないかと思います。