Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

インフレターゲットのある国の話

id:Soredaさんの「セカンドカップ はてな店」で、カナダのインフレターゲットの話が出てました。


永遠の安定基調はあるんだろうか - セカンド・カップ はてな店


カナダでは2%のインフレターゲットが設定されていて、カナダ人はそれを当然だと思い疑いもしないのですが、デフレの国日本から来たSoredaさんから見ると物価の上昇が気になってしまうそうです。
最近の円・カナダドルレートを見ると円安傾向が続いているので、日本人にとってはなおさら物価高が気になるのかもしれません。



http://www.nomura.co.jp/market/report/outlook/exchange_canada.phpより


この記事の中でSoredaさんは次のような疑問を述べています。

で、この間の成り行きを見ていて私は人々が物価がががっと下がったらどうしよう、とは思ってないらしいということにひたすら感心している。そうしないためのターゲットだという強い信念なのだろうとも言えるわけだが、しかし、何かをきっかけに圧倒的多数の人の購買力が付いていかないとか、輸出入の調整に失敗して安物が大量に出回って価格破壊が起きたりという事態が発生したらどうするの?とか思うんだが、そういうのってない想定らしい。

ある程度経済学をかじった人間として答えさせていただくと、「何かをきっかけに圧倒的多数の人の購買力が付いていかない」というのは、例えばバブル崩壊で株や土地の資産価値が暴落したときが考えられますが、その場合はアメリカのITバブルで当時のグリーンスパンFRB議長がやったように、急速に金利を下げてデフレに陥らないようにするのでしょう。また「輸出入の調整に失敗して安物が大量に出回って価格破壊が起きたり」というのは、最近の日本のデフレでも「中国発デフレ」(中国の安い品物が大量に輸入されたのがデフレの原因であるという説)として議論されましたが、当時大きく価格が低下したのは輸入できないサービスの価格であったことや、同時期に日本以外の国はデフレにならなかったことを理由として、現在では否定されている考え方です。仮にカナダで外国産の安物が大量に出回ったとしても、カナダ程度の経済規模があれば国内で供給される財やサービスの規模の方が遙かに多いので、それがデフレの原因となる可能性は低いと思います。だからカナダの中央銀行もそういう想定はしていないのでしょう。


Soredaさんは永遠にインフレが続くのかと疑問を述べられていますが、インフレは中央銀行がマネーの量を適切に増やせば絶対に起こる現象ですから、それは心配しなくても良いと思います。
ただ、カナダの中央銀行インフレターゲットのターゲットラインを下げる検討をしているというのは、ちょっと心配かもしれません。消費者物価指数は実際のインフレ率よりも1%程度高めに出る指標だと言われていますから、もしインフレターゲットが1%になると、それは事実上のゼロインフレターゲットになりますから。