Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

北朝鮮債券の人気から考えたこと

 北朝鮮の債券が、国際金融市場で密かな人気商品になっている。しかも米国や日本の投資家が買っている。現在の取引価格は額面1ドルに対して26セント。年初の価格が21〜22セントだったので、この数カ月で2割ほど上昇したことになる。日本のニュースは拉致問題や6カ国協議一色だが、投資家たちは全く別の論理で行動しているのだ。

北朝鮮債券が密かな人気商品に:日経ビジネスオンライン

北朝鮮の債権は債務不履行のためほとんど価値がなかったのですが、その後この債権が証券化されて金融商品となり、最近では密かな人気商品となって価値が上がっているそうです。
この動きの元にあるのは、70年代にはやはりほとんど価値がなかったベトナム向け債権をING(オランダ国際銀行)東京支店が買い集めて大量に保有していたところ、80年代のドイモイ政策によって国の信用力が急激に向上し、債権も額面価値で取引されるようになって、INGは大儲けしたという事実だそうです。北朝鮮債券を買っている投資家は、このベトナム債券の再現を狙っているようです。


北朝鮮債券がかつてのベトナム債券のように値上がりするためには、南北統一が実現して韓国が債券を返済するか、北朝鮮ドイモイ政策のような経済自由化政策が行われて国の信用力が向上するか、そのどちらかが必要でしょう。
ただし、今の金正日政権の元ではどちらの可能性もないと僕は思います。金正日は援助や合法・非合法な輸出による外貨獲得による利権を、国内の様々な政治勢力(軍、党、工作機関など)に分配したり、それらの勢力が握っている利権を保証・安堵することで、その権力を維持していると思われます。南北統一はもちろんですが、国内が自由化されて国民や各勢力が独自に利益を追求するだけでも、金正日の権力には大きな打撃となるでしょう。だから金正日が死ぬまでは、どちらの可能性も低いと思います。
しかし、金正日の死後は状況が一変すると思います。マカオに逃げてしまった金正男や、まだ若い金正哲金正雲には、金正日の役割を果たすことはできないでしょう。そうなると国内の各勢力は独自の利益を追求したり、利権を保証してもらうために中国や韓国といった外国勢力を引き込んだりして、北朝鮮情勢は大きく流動化するでしょう。その過程で韓国の影響力が大きくなれば南北統一(実質的には韓国による北朝鮮併合)の可能性が高くなるでしょうし、中国の影響力が大きくなれば北朝鮮は中国に従属して自由化を進めていくでしょう。
だから、北朝鮮債券を買っている投資家は金正日の死後を見据えて投資をしていると思います。


国際政治の世界が六カ国協議で手詰まりする中で、投資家は金正日死後の北朝鮮に期待しているのでしょうね。
金正日が死んで核問題、拉致問題が解決した後は、中国も韓国も北朝鮮への影響力を狙ってパワーゲームを始めるでしょう。また、日本企業は北朝鮮の安価な労働力や資源を狙って投資や進出を始めるでしょう。その時、日本政府はどういう方針で動いていくんでしょうね。