Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

慰安婦問題意見広告で思ったこと

6/14に、日本の右派の有志がワシントンポスト慰安婦問題に関する意見広告を出しました。「雪斎の随想録」によると、その中に次のような文章があったそうです。

 実際、一般市民の強姦を防止するため多くの国が軍用の売春施設を設置していた。(例えば、1945年、占領軍当局は日本政府に対し米軍兵による強姦を防止する目的で衛生的で安全な「慰安所」を設置するよう要請していた。)
  Many countries set up brothels for their armies, in fact, to prevent soldiers from committing rape against private citizens. (In 1945, for instance, Occupation authorities asked the Japanese government to set up hygienic and safe "comfort station" to prevent rape by American soldiers.)  

何という展開か…。: 雪斎の随想録

この日本における占領軍のための慰安所設置については、5/5の産経新聞に次のような記事が載っています。

 AP通信は4月26日、東京発で米占領軍が進駐直後、日本の政府や旧軍当局に売春婦の調達や売春施設の開設を許可した一連の日本語書類が発見されたと報じ、その内容として(1)1945年8月末から9月にかけ、米軍の許可を受けて日本政府の内務省などが東京はじめ茨城県などの地方自治体に「慰安婦」集めを指示し、合計7万人以上の女性が売春に従事した(2)米軍当局はそれら女性の一部は強制徴用されたという報告があることを知りながら、慰安所開設を認め、連日連夜、米軍将兵が詰めかけることを許した−と報道した。同報道はこの米軍慰安所にかかわって当時の日本側関係者数人を実名で紹介し、その談話をも引用した。


 しかしこれら日本の米軍用慰安所は連合軍最高司令官のマッカーサー元帥の命令で1946年3月末には閉鎖されたという。

産経ニュース

しかし、この記事は最初は「占領時、米軍も「慰安婦」調達を命令 ホンダ議員言明」というタイトルでした。この記事のはてなブックマークには、そっちのタイトルが残っています。この記事について「命令」の事実はないという指摘を受け、産経新聞はタイトルを「占領時、米軍も「慰安婦」調達を許可」に変更したわけです。


はてなブックマーク - 占領時、米軍も「慰安婦」調達を命令 ホンダ議員言明|米国|国際|Sankei WEB



このように、米軍向けの慰安所設置について米軍が命令をしたという事実は、産経新聞やこの記事を書いた古森記者も訂正したものです。上の意見広告では「要請した」とありますが、米軍側の主導でこのような慰安所が設置されたというのは、やはり疑わしいと言えるでしょう。この意見広告は"THE FACTS"というタイトルでしたが、「事実」を謳うのであればこのような疑わしい話は外しておくべきだったと思います。


慰安婦問題について、日本国内でかつて主流であった左派の主張が疑われ、右派の主張が支持された理由は、左派の主張の中に嘘の証言や資料の曲解に基づくものが多いと考えられたためです。もし右派がこのような疑わしい「事実」を取り上げ続けるのであれば、かつて左派の主張が疑われたように、右派の主張も疑われるようになるでしょう。少なくとも僕は今回の件で右派の主張も左派と同様に疑おうと思いました。


「人はおのれの敵の姿に似る」と言いますが、慰安婦論争についてもこの言葉は当てはまりそうですね。