Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

安倍が負けたら大増税!?

色々盛り上がっている参院選ですが、経済政策だけはほとんど争点になっていません。「溜池通信」でかんべえさんが述べているように、市場は「ポスト安倍」よりも「ポスト福井」を心配している有様です。

●市場は何故、政治に無関心なのか


 このように「政治の混迷」が前途に予想されるにもかかわらず、株式市場は1 万8000円台で概ね好調を続けている。NY 株が史上最高値を更新していること、世界経済の復調が確認されつつあること、そして日本経済も個人消費などはパッとしないながら、企業収益の上昇と雇用の改善が続いているからだ。政治はほとんど材料視されていない。


 それにしても不思議なのは、2005 年の郵政解散との対比である。あのときは、「これで日本の改革の後戻りがなくなった」ことが外国人投資家に評価され、株価は盛大に上昇したものである。当時のロジックが正しかったとすれば、現在は日本株が売られなければならないはずである。なぜ、そうなっていないのだろうか。


 仮説その1 は、2 年前と今とでは、日本経済に対する外部の認識が変化していることである。2 年前の2005 年当時は、まだまだ日本経済は危ういと思われていた3し、そうなったら困ると思われていた。ところが今日になってみると、金融問題はほとんど解決して久しいし、再び危機的な状態に戻るとは誰も思っていない。しかも、中国やインドなどほかに気になる市場がいっぱいあるので、それだけ日本に対する関心も減っている。残念なのは、こういう外部の眼の変化に対して、日本国内がまったく無自覚であることだ。


 仮説その2 は、「政策の停滞」がむしろ歓迎されている可能性である。市場がもっとも嫌うのは「不透明性」であり、2005 年夏の政局はまさしく前例のない性質のものであった。それだけに小泉自民党の勝利はポジティブ・サプライズであり、そのことが「日本買い」につながった。それに比べると現状は、与野党のどちらが勝っても「政治の停滞」につながる点では変わらない。むしろ、消費税増税を急ぐことによって景気が腰折れする、といったリスクが消えるという利点もある。もっとも、これが「日本政治が弱いリーダーの時代に戻った」という認識に至るようなら、いずれ「日本売り」が始まることだろう。


 仮説その3 は、外国人投資家の間では「日本政治より金融政策」の方に関心が高いという事情がある。端的に言うと、「ポスト安倍はいいから、ポスト福井が知りたい」4といったところがある。サブプライム問題など「ドルの死角」が為替市場で注視される中で、日銀の動きには世界のマネーが注目している。なにしろ低金利の円はキャリートレードという形で、全世界に対する流動性の供給源になっている。その日銀は、8 月会合でも再利上げを行う公算が高い。


 参院選における与党の敗北は、ときの政権の弱体化を通して日銀にフリーハンドを与えるかもしれない。そういう間接的な形であれば、市場も参院選の行方に関心を持つのかもしれない。

溜池通信365号 特集:参院選の行方と市場の論理(5ページ)



しかし、そんな市場の見方に冷や水を浴びせかけるような分析を、かみぽこさんがしていました。

4.経済政策


これ、今回の参院選ではまったく争点になってないわけだけど、参院選の結果は、参院選後の経済政策の方向性にものすごい影響があると思いますよ。


これまで


「インテリ喧嘩師・塩崎恭久シリーズ」(爆笑)
(と、勝手に今、名づけてしまいますが=苦笑)


で、書いてきたことなのでご興味あらばそっちを読んでいただければと思いますけれども、要は、安倍政権になってから、


「静かに、しかし劇的に経済政策の方向性が変わっている」


ということなんだよね。


どういうことか簡単に書くと、小泉政権時代というのは、とにかく経済を立て直して成長軌道に乗せることがなによりも優先事項だった。


だから、財政赤字の拡大には目をつぶり銀行に公的資金を投入して、不良債権問題を片付ける一方で、日銀の公定歩合は限りなくゼロに抑えて、とにかく、銀行と企業を立ち直らせようとした。


結果、経済は成長軌道に乗った。


しかし、それは大蔵省(財政赤字)と日銀(ゼロ金利)に経済の悪い部分をとりあえず押し付けることで銀行と企業を立ち直らせることを優先させたということなので、日本経済全体が正常に戻ったというわけじゃない。


安倍政権は、実はこの小泉政権時代の経済政策を静かに、しかし大胆に転換させていた。


それは、経済が成長軌道に乗っている間に財政赤字とゼロ金利という日本経済に残った異常な部分を徐々に正常化させていこうという方向転換である。


そして、安倍政権では財務省寄りの政治家が(例えば、谷垣さん、与謝野さんなど)政権から「排除」されてしまい、逆に、日銀OBの塩崎官房長官が経済政策の主導権を握ることで、ゼロ金利を徐々に正常化することが
財政再建よりも優先されることになった。(まあ、消費税というのが過去、大平、中曽根、竹下、宇野、細川、橋本という歴代内閣を事実上崩壊させてきた極めて政治的リスクの高い政策課題であることも日銀をまず優先させた大きな理由であるとは思うけれどもね。)


これは、日銀の政策委員会で短期金利の引き上げの検討が行われていることが明らかになった時、中川秀幹事長や太田経済担当相や、尾身財務相がいろいろ批判した時に塩崎長官が


公定歩合は日銀の専管事項」


と、静かに発言すると、そういう批判がピタッとやんだことでわかる。


この安倍政権の経済政策の運営を僕は高く評価しています。そして、「塩崎エントリー」で紹介したThe Economistの記事のように、それは海外でも高く評価されているように思う。


さて、参院選後にそれがどうなるかということなのだけれども。。。(苦笑)


自民党が勝てば問題なし。問題は自民党が負けた時だ。


自民党が負けた時、とりあえず最初になにが起こるかというと、


「安倍首相の人事権の事実上の剥奪」


である。


まずは、「仲良し官邸団」の解体である。(笑)
その時、塩崎官房長官がどうなるか。


僕は、政権内に留まるのは難しいかもしれないと思うし、もし留まっても、影響力の低下は避けられないと思う。


そうなると、何が始まるかというと、以前から散々言っているけど、参院選後の政局の舞台は、政府税調・自民税調での大バトルの勃発である。


安倍政権から「排除」されてきた財務省よりの政治家が税調を舞台に大暴れを始める。要は、


「消費税の大増税


である。


もちろん、消費税増税を含む税制改革の検討は、参院選の勝敗にかかわらず規定路線である。


しかし、問題は消費税の上げ幅がどれだけになるかということなのだ。


安倍政権が参院選に勝利して、塩崎長官が経済運営の主導権を握り続けるならば、消費税の上げ幅は


「経済情勢を見ながら慎重な範囲で日銀の金利と同時に徐々に上げられる」


になるだろう。


しかし、塩崎長官という抑え役がなくなってしまうとまた、「日銀法改正」と脅す政治家が出てきて、日銀の金利はゼロに抑えられ、消費税率はとめどなく上げられるということも起こるだろうね。


自民党が負けたら、消費税の検討はできなくなるだろうと単純に言う人がいるけど、事はそんなに単純じゃないですよ。


基本的に参院選の敗北では政権交代は起きないだろうし、人気のない内閣のうちに国民の嫌がることをやってしまったほうがいいという判断だってあるからね。


民主党だって、消費税増税に賛成はしないだろうけど、知らん顔というかね、安倍政権のうちに増税させたほうがいいと思うかもしれない。


「政権が近くなると、現実的になる」


のだから。(苦笑)


これに、もし国民新党と安倍政権の連立が起こって、


「亀ちゃんの公共事業大増発路線」(爆笑)


が、復活したりしたら、いったい日本経済はどうなるのでしょうか?(失笑)


ということで、経済政策の評価というのは、本来、この参院選ではとてつもなく重要な争点だと思うのだけども、まったく議論されていないのは非常に残念なことだと思う。

「かみぽこ政治学」的に参院選の争点を検証する。(4) | かみぽこぽこ。 - 楽天ブログ



もし、かみぽこさんの言うとおりになって、消費税が大幅に引き上げられた場合、日本経済にも大きな影響が出るのは確実でしょう。
「消費税率はとめどなく上げられる」となると、税率アップが1%や2%ということはなく、少なくとも消費税は10%以上になると思われます。そうやって増えた歳入が社会保障や公共事業で再び民間に戻されるのであればまだ良いのですが、財務省のことですからそのほとんどは財政赤字の削減に使うことになるでしょう。そうなると国債の大量償還によってマネーサプライが大幅に減少し、景気は大きく落ち込むことになります。日銀を脅してゼロ金利量的緩和を復活させても、マネーサプライの減少を十分補うことはできず、焼け石に水でしょう。
このような状況では、インフレターゲットを導入しても期待インフレ率が上がるとは思えませんから、金融面でのリフレ政策も無効になってしまいます。むしろ財務省はこの状況を利用して、インフレターゲットの無効性を喧伝する口実にするかもしれません。
従って、消費税の大幅増は1997年〜1998年の日本経済の混乱を再び引き起こすと思います。そうなると、失われた15年は、失われた20年や30年になってしまうのかもしれません。
かみぽこさんの推測が意味するところを考えると、僕は ((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル になってしまいます。


自民党の職員として選挙運動で日本中を飛び回っている副会長さんは、こんな感想を述べています。

 副会長は北は青森から南は石垣島までいろんなところに行きました。詳細は選挙が終わってからにしますが、要は「負ける選挙」であることを痛感している日々です。


 先週末に各報道機関の世論調査の結果が出ましたが、感想は「有権者は『血』を求めている」ということです。2年前「260くらい」と出た世論調査の一週間後、300くらいまで伸びた逆の現象が、今度の日曜日に起きる気がしてなりません。あぁ恐ろしい。


 当初「51」だった「勝敗ライン」(責任ラインと言ってもいい)がどんどん下がって、今や「どんなに負けても辞めない」という状態になっている。であれば「じゃあ、どれだけ負ければ辞めるんですか!?」というのが民の声ではないだろうか。

http://blog.livedoor.jp/k95123548/archives/50329968.html



日本国民は、この参院選安倍総理を「血祭り」に上げた代償として、とてつもなく大きなツケを払わされるのかもしれませんね。これも因果応報なのでしょうか。