Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

与謝野官房長官の「悪魔的」発言から見えること

 ──経済成長と税制が財政再建の車の両輪といっているが、具体策は。


 「数字だけの遊びであれば、例えば名目成長率15%という想定で計算すれば日本の財政はあっという間に解決する。ただ、国民の生活にとって物価が安定していることはとても大事だ。名目成長率を上げれば、確かに財政には寄与する。しかし、名目成長率をあげていけばいいというインフレ政策、悪魔的な政策は国民には迷惑な話だろうと思う。やはり地道にやっていくしかない」


 「名目成長率を上げるためには、実質成長率を上げなければいけない。口で言うのは簡単だが、日本のように成長しきった国が背丈を伸ばしていくのは簡単なことではない。しかし、国際競争力を失いたくない。新経済成長戦略は日本の豊かさを維持するためにどうしてもやっていかなければいけない政策の一つ。経済が成長すれば、一定の弾性値を持って税収は上がっていく。車の車輪の一つであり、インフレをめざさなくても大事なことだ」


 「一方で、財政を再建しないと、いずれクラウディングアウトが起きる。民間が使うべきお金を政府が使うことで、急に長期金利が上がってしまう。長期金利が上がれば、設備投資意欲は衰え、借金の返済も苦労し、日本の経済にとって決していいことは起きない。経済にとっても、健全な財政規律を維持していくことは大事なこと。そういう意味で、車の両輪という言葉を使っており、これは小泉純一郎首相、安倍晋三首相、新改造内閣において一貫して貫かれている思想と理解している」

http://www.asahi.com/business/reuters/RTR200709040006.html



このように与謝野官房長官が「名目成長率をあげていけばいいというインフレ政策」を「悪魔的政策」と表現したことに対して、経済系のブログを中心に批判や意見が相次いでます。*1


http://bewaad.com/2007/09/04/256/
http://bewaad.com/2007/09/06/258/
svnseeds’ ghoti! - もう日本ダメだね
svnseeds’ ghoti! - インフレが一番「迷惑」なのは資産家
http://d.hatena.ne.jp/econ-econome/20070905/p1
http://d.hatena.ne.jp/kmori58/20070904/p1
今のところの経済政策の成績表 - どうなってんだよ!
あいたたたた - くまくまことkumakuma1967の出来損ない日記
日本終了 - 節電対応中
Economics Lovers Live - 与謝野悪魔くん発言


与謝野氏の発言内容については、前回のエントリーで紹介した与謝野・竹中論争から変わっていないなあという印象なのですが、名目成長率15%(つまりインフレ率が10%以上)という、インフレターゲット論者も物価水準ターゲット論者も唱えていないような水準を出してきたり、自分が容認できないインフレ政策に「悪魔的政策」というレッテルを貼ったりしたところが、今回の発言の注目点だと思います。
つまり与謝野氏はもはやインフレ政策論者とまともに論争をする気はなく、国民の高インフレに対する不安を煽ったり、対立する相手を「悪魔的」と決めつけることで、自身や財務省が唱える消費税増税による財政再建を実現しようとしているのだと思います。これは真っ当な政策論争ではなく、ポピュリズムを煽る危険な政治手法でしょう。


与謝野氏については世間では「政策通」という評価が一般的ですが、今回のような発言をするようでは、もはや与謝野氏は政策通ではなく、 小泉前首相のようなポピュリスト政治家というべきでしょう。従って、小泉氏が郵政民営化のために手段を選ばなかったように、与謝野氏も消費税増税のためには手段を選ばず行動するのでしょうね。

*1:リンクをまとめてくださったid: fhvbwxさんに感謝します