Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

与謝野馨の陰謀?w

現在発売中の月刊現代11月号に、末延吉正(元テレビ朝日政治部長立命館大学客員教授)の『我が友・安倍晋三「苦悩の350日」』という手記が掲載されています。

我が友・安倍晋三「苦悩の350日」
ニュースステーション」「朝まで生テレビ!」を手がけ、政・官界からは「安倍首相が最も信頼を置くブレーン」と目されていた末延氏だからこそ分かる、若い首相の直面した真の危機・福田新政権誕生までの真相とは。今まで報じられなかった衝撃の事実満載の手記を一挙公開!


末延吉正(元テレビ朝日政治部長立命館大学客員教授

http://moura.jp/scoop-e/mgendai/mokuji/index.html

この記事によると、安倍首相辞任の最後の引き金を引いたのは実は与謝野官房長官の「裏切り」だったそうです。
安倍首相はAPEC総会に行く前に、高橋洋一参事官の身柄を渡辺喜美行革相に任せるように言い残していたのですが、帰ってきた後に中川秀直前幹事長から、与謝野官房長官が命令を無視して高橋氏を左遷させようとしていると聞き、それが辞任の最後の引き金となったということです。
安倍総理のブレーンの一人と言われていた末延氏が名前を出して書いた記事ですから、その信憑性は高いと言えるでしょう。


経済に詳しい人ならよく知ってるように、高橋氏は小泉内閣時代に竹中平蔵大臣の右腕だった人物であり、第1次安倍内閣の経済政策にも深く関わってました。
一方、8/28のエントリーでも書いたように、与謝野官房長官は竹中氏とは対立する立場でしたから、当然高橋氏とも対立していました。最近、毎日新聞に掲載されたインタビューでも、第1次安倍内閣の「上げ潮政策」やインフレを目指すリフレ政策を激しく批判しています。

 −−官邸主導と言いながら、本当に必要なアドバイスを首相にする人材を欠いていた?


 去年、安倍政権を誕生させた人たちは、長期政権を作ろうという夢を見ていた。彼らは、政権や政党の支持率にマイナスになることは一切避けて通ろうという精神でした。けれども自民党は、どんな時にも責任を回避しない、責任政党であるということが唯一の売りなんですよ。


 安倍政権の演出者たちはそこを全部はがして、ポピュリズム大衆迎合)で政権運営をしようとした。例えば、安倍政権発足前から私は日本の財政の窮乏を正直に国民に話さなければいけないと主張してきました。そうすれば自然に税制改革の話になる。しかし、経済成長で解決しますなんて幻想を振りまいた、いわゆる上げ潮路線グループがいた。長期政権を目指したがゆえに、政策的にひとつのバイアス(偏った考え)をつくり上げた。財政や税制について、避け難き現実を直視しない。それは政権内部にあった大きな欠陥だったと思います。


 ◇進む政党の同質化


 −−福田新首相には何を期待するか。


 日本の経済成長に過剰な幻想を抱かないことです。インフレ率を高く見積もって日本の税収を予想することは決してやってはならない。インフレは弱者に厳しいもので、国民が最も嫌うものがインフレ。ミャンマーのデモも引き金はそれでしょう。物価が上がらず、100円ショップで何でも買えるのはいい話なんですよ。さっき私も買ってきたんですが、このハンドタオル、2枚で99円ですよ。いいでしょう。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071002dde012010011000c.html

このように経済成長重視政策やインフレを激しく批判していた与謝野氏が、対立する高橋氏を安倍首相の意向を無視して追放しようとしたというわけです。


結局この与謝野氏の行動が引き金になって安倍内閣は崩壊し、与謝野氏も官房長官の地位を失ってしまったわけですから、与謝野氏は下手な陰謀を企てたせいで元も子もなくしてしまったことになりますね。さらにこんなことになったのでは、与謝野氏は安倍氏や麻生氏の信頼も失ってしまったことでしょう。


さらに先程の毎日新聞の記事には、こんな発言もあります。

 −−参院選の当日、中川秀直自民党幹事長(当時)が公邸に行ったら、すでに麻生太郎外相(当時)が安倍前首相と会った後で、続投が決まっていたと報道されている。


 つじつまが合わないのではないでしょうか。「参院選の結果は政権の行方には関係ない」と言い出したのは、そもそも党執行部です。「参院選は政権選択の選挙ではない」などとばかなことも言っていた。安倍さんにしたら、辞めるに辞められなくなった部分もあったと思っています。いまさら党執行部が、安倍続投を麻生さんの責任にするのはおかしいと思います。


 −−麻生さん(前自民党幹事長)と与謝野さんによるクーデター説は、何だったのか。


 クーデターは、その人を倒したら自分が得する状態で起こすもの。私がクーデターなんてばかじゃないかという話です。安倍さんを倒したら、損するのは与謝野馨なんですから。人がやったやったと言って、クーデターを起こした人が他にいるんでしょう。政局になると、頭が悪いなと思っていた人たちが急に頭を回転させて、思いもかけない行動に出たりする。そういう方たちを見ると頭の良さというのもいろいろ種類があるんだなと思います。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071002dde012010011000c.html

確かに麻生・与謝野クーデター説はばかげた話でしたが、「頭が悪いなと思っていた人たちが急に頭を回転させて、思いもかけない行動に出たりする」と、福田氏の擁立に動いた人たち(森元総理や古賀氏など)を馬鹿にするようなことを言うと、福田政権を支持する森氏や古賀氏からも信頼を失ってしまうように思います。
こういうことを不用意に言う人こそ、政治家として「頭が悪い」のではないでしょうか?w


安倍氏や麻生氏からも、森氏を中心とする町村派からも、古賀氏を中心とする安倍時代の反主流派からも信頼されなくなると、自民党で与謝野氏を起用する勢力はなくなってしまうでしょう。
僕としてはリフレ政策を敵視する与謝野氏の失脚は歓迎するところなのですが、与謝野氏は今後どうなってしまうのでしょうね?


それにしても官房長官を道連れにしてしまう暗黒卿*1、恐るべし。w

*1:もちろん高橋洋一氏のことですw