Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

「小さい政府」を言うならば

皮膚細胞から万能細胞(iPS細胞)を作ったことで、科学界はおろか、ブッシュ大統領ローマ法王にまで衝撃を与えた山中伸弥京大教授ですが、「おこじょの日記」によると、彼がiPS細胞を手がけた理由の一つとして、受精卵を使うES細胞研究に対する国の手続きが煩雑すぎたため、それを回避しようという考えがあったそうです。

ヒトの生殖細胞を使わず、皮膚の細胞から幹細胞を作り出した山中教授のグループの研究は大きく取り上げられています(ノーベル賞もん?)が、教授にインタビューしたTimes記者氏のブログに非常に興味深い内容がありやした。

なんと、教授の研究の原動力は日本政府の無能さに対する怒りなんだそうです。なぜ日本では生殖細胞の研究利用が認められているのに、あえてそれを使わずに研究してるのかを尋ねられた彼は・・・
ではどうぞ:


(中略)


日本の幹細胞研究に対する政府の態度には2つ大きな問題がある。まず、一つの幹細胞に関する実験のたびに500ページもの書類3部を提出しなければならない。これを書くのに1カ月、さらに政府の審査に1カ月、これでは英国のライバルがその間10回以上実験できてしまう。本気で競争しようと思ったら、研究者を一人首にして代わりに事務員を2人雇わなければならない。だからほかの研究者が、公務員仕事の代わりに実験に集中できるよう、幹細胞を人工的に作る方法を見つけたんだ。

それから日本の厚生省の気の変わりやすさ。長期研究を短い期間に押し込めたり、十分な資金を与えずに放置したり。問題は、事務官の長が3年ごとに変わることだ。新しい人が来るたびに、科学研究に足跡を残そうと新しい予算を立ち上げるが、科学的な根拠はなく思い付きだけで、すでにある研究プロジェクト(どんなに成功していても)から予算を奪ってしまう。基本的に、3年でプロジェクトが完成できなければ、あきらめろということだ。

京大の山中伸弥教授かっこよす - おこじょの日記


ただ、http://bewaad.com/によると、厚生労働相文部科学省もも好きこのんで手続きを煩雑にしているわけではなく、これまで手続きに問題があったため政府が批判されることが多かったため、政府は批判を避けるためにそのようなことをしているそうです。

実態としてはそうなのだろう、とは霞が関の住人であるwebmasterも思います。不当な非難やいいがかりではないでしょう。しかし、厚生労働省文部科学省とて、好きでそのようなことをやっているわけではない、というのがこのエントリの趣旨となります‐嘘だろう、とお感じになる方も多いでしょうけれども。

担当職員が偉ぶっていて不愉快な思いをした研究者の方々も少なからずいるとは察せられます。だからといって、担当職員が偉ぶりたいからといって制度ができるわけでもありませんし、その上司が部下を偉ぶらせたいからといって制度を作るわけでもありません。組織の権限の維持・拡大のためにあれこれ手を広げるとは霞が関(に限らず官僚組織一般)についてよくいわれる批判ではありますが、それが真であるとは限らないのです。

では何のためにこのような制度ができるのか、それを示唆する好例が、最近話題の建築基準法の「改悪」でしょう。耐震偽装問題を受けて昨年に行われた建築基準法改正が、あまりに面倒な手続を強いるために住宅着工が落ち込み、ひいては景気の足を引っ張っていると最近言われています。なぜ国土交通省がこのような改正に踏み切ったかといえば、ねちねちと業者をいじめることに役所の窓口の人間が喜びを見出すからではなく、耐震偽装問題が大いに世の中で問題視され、国土交通省自身も厳しく批判されたからに他なりません。

それと同様に、幹細胞研究における政府の関与も、それなくしては政府自身が大いに批判を受けかねない、との主観的認識の帰結であるとwebmasterは考えます。

政府=間接部門の効用 - bewaad institute@kasumigaseki

とかく何か問題があると政府や役所が批判されたりする日本では、政府の方もそれに対応して規制や手続きを増やしてしまうのでしょうね。


ただし考えてみれば、国のお金を使うからこそ、「納税者の声」を錦の御旗にしたマスコミや世論の批判を受けてできた様々な規制の影響を受けてしまい、研究の大きな障害となるわけです。
一方、天漢日乗では、自由に使えるお金を山中教授に提供するため、2ちゃんねるで寄付を呼びかける意見が出ているという話を紹介しています。

513 :名無しさん@八周年:2007/11/24(土) 03:52:55 id:ozbfQV9I0
今、ちょっとお金が余っているそこのアナタ!
京都大学に寄付をしてみませんか?
http://www.kikin.kyoto-u.ac.jp/


年末に東京タワーからお札を撒く、またはポストに入れる、または
溝に捨てたいと考えているアナタ!
今は京都大学への寄付がトレンドですよ!


573 :名無しさん@八周年:2007/11/24(土) 09:34:22 id:fDfZiBeu0
京都大が研究費用の寄付を募ってるけど、
これって「○○の研究に使ってください」と指名して寄付したら、
その研究に使ってもらえるのかな。
使ってくれるなら、ボーナス支給後にまとまったお金を寄付してもいい。
どこに使われるかわからんのなら、ちょっと戸惑うな。
京大のキチガイ文系左翼教授の反日研究に使われたらかなわん。


588 :名無しさん@八周年:2007/11/24(土) 10:06:50 id:fDfZiBeu0
>>584
うむ。しかもES細胞なんかと違って、「自分の皮膚を使う」ってのがすごいね。
ローマ法王庁はアメリカでの発表の直後に「倫理に反しない」「人類の福音」と
表明しましたが、別の人間になりうる受精卵などを使うES細胞と決定的に違うのが
この点ですね。科学に倫理は必須だと思いますが、その倫理の点を明瞭にクリアにしてるのは
まさに画期的だと思います。


報道ステーションで古館が人間の尊厳がどうのとバカをさらしていましたが、
内容的には自己血液輸血に近く、これを人間の尊厳がどうのといっては、
現代医療は何もできません。


俺は両親ともにガンで亡くしてるから、自分の生活でできるレベルで、
寄付でもなんでもやりたいと思ってますよ。俺はその恩恵を受けられなくても、
子や孫が受けられるなら満足ですしね。


594 :名無しさん@八周年:2007/11/24(土) 10:19:42 id:u3zQJtJo0
>>573
山中教授を指名して寄付することが出来る。
委任経理金ってやつ。


国からのお金は使い道が厳しくチェックされ、
報告書も書かないといけないので
非常に使い勝手が悪く、あまったお金も次の年に繰越が出来ないの不便。
酷いときは簡単な文房具も買うことが出来ないときもある。


その点、この委任経理金は繰越もできて、非常に自由に使えるので
貴重な雑用費になっている。


599 :名無しさん@八周年:2007/11/24(土) 10:27:30 id:fDfZiBeu0
>>594
おおう、ありがとう!(本気で感謝)m(_ _)m
来月頭にボヌスが出たら、激励の手紙とともに寄付することにするよ。
UDがん研究プロジェクトも終わっちゃって、何かしたいと思ってたんだ。


602 :名無しさん@八周年:2007/11/24(土) 10:30:32 id:ImdDM0MF0
自分もヒトケタ万円くらいしか寄付できそうにないが、やってみるよ!
せめて教授のところのコピー用紙代くらいにはなってほしい。


でもざっと京都大学のホムペみたけど、寄付要項がわからん…。
あと京都大にメールしてみよっと。


673 :名無しさん@八周年:2007/11/24(土) 12:16:26 ID:7Kheublo0
>>602
これのことか?


※研究助成等、特定の部局、研究者に対する寄附については、
下記問い合わせフォームから、ご照会内容をお送り下さい。
折り返し事務局より連絡いたします。


http://www.kikin.kyoto-u.ac.jp/inquiry.php


603 :名無しさん@八周年:2007/11/24(土) 10:34:58 id:fDfZiBeu0
>>595
本当にそうだね。今回の発見、発明は、研究へのブレイクスルー。
実はこれからが本当の競争なんだよな。
ある意味、インキュベーターとアルバイトや助手の数次第って感じがする。
日本は物量や人件費の点で諸外国に比べ不利な点が多いけど、
人海戦術は得意な民族性もある。がんばってほしいね。


606 :名無しさん@八周年:2007/11/24(土) 10:47:21 id:BG8uyBr20
ちなみに反対派や釣りだと思われたらかなわんので、あえて書くけど
寄付はたとえ少額でも、それが全国から殺到ともなれば
必ずマスコミに報道されるだろうから、それが後押しになって
さらに予算がつく可能性は高い。
文部科学省だけなら70億でも精一杯だろうけど
他省庁はもとより、専門省庁を発足させてプロジェクトを推進するべき発見なのだから。
>>603氏が言うように、まさにブレイクスルー。
あとは物量による全速力のレースになるし
ここで出遅れたら本当に取り返しがつかない。
原油穀物メジャーを抑え込む力すら秘めているのだから。


俺も週明けに京大を訪れる予定だから、寄付について詳細を聞いてみるよ。


611 :名無しさん@八周年:2007/11/24(土) 10:59:24 id:QSnnDS8w0
>>606
西海岸にある有名なソーク研究所は、ポリオのソークワクチンに感激した人たちの寄付が集まって出来たらしいね。


618 :名無しさん@八周年:2007/11/24(土) 11:07:02 id:BG8uyBr20
>>611
そうだね、一般のムーブメントの力は侮れない。


ここで整理しておくとiPS技術(ESもそうだが)とは
クローンや不老不死とはあまり関係がない。
それよりも難病の治療や損傷した人体部分の復元という
今まで不可能だった医療が可能になるということ。


そして国際競争の観点からも、今後の世界を左右するほどの大きな武器となりうること。


何一つ反対する理由なんてないのよね。
625 :名無しさん@八周年:2007/11/24(土) 11:14:53 id:QSnnDS8w0
>>618
ここで委任経理金の話が出ていたけど、ネット発で山中先生に委任経理金で寄付する、なんて動きがでて実現化したら、
社会的にも大きな事件だし、大変感謝されると思う。
ただ、任天堂の寄付の時みたいに、寄付があるぶん他を削ってもいいでしょ、なんて話にならないといいと思うけど。
(最終的にはどうなったんだろ)


休日出勤中なので、すまんが落ちる。

皮膚細胞から万能細胞を作った山中伸弥京大教授(その4)山中教授グループの研究に個人で寄付をしたい: 天漢日乗

この書き込みで提案されている委任経理金を個人で送るというのは、政府の規制がかからない研究資金を研究者に提供できるという点で、非常に有効な方法だと思います。
このような政府や企業を介さない自由に使える研究資金の調達ルートが大きくなれば、国家プロジェクトに頼る割合が小さくなるので「政府の失敗」の影響が少なくなり、研究分野で国に頼らない「小さな政府」を実現できるでしょう。
日頃から「小さな政府」を主張している方は、委任経理金を自分の応援する研究者に送ってみてはどうでしょうか?もちろん自分のできる範囲で十分でしょう。