Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

日豪捕鯨対立がYouTubeに飛び火

動画投稿サイト「ユーチューブ(YouTube)」に投稿された日本の捕鯨をめぐる動画がネット上で大きな波紋を呼んでいる。日本の調査捕鯨に対して豪州政府が猛反発している事態を痛烈に批判する内容。豪州での「人種差別」や「動物虐殺」を例に挙げた刺激的な動画に、日本語のみならず英語での書き込みが動画のコメント欄に1万件以上書き込まれる「大論争」を巻き起こしている。さらに、この事態に豪州政府の外相がコメントする事態にまで発展しているのだ。

捕鯨問題で「豪批判」動画 YouTubeで日豪サイバーバトル : J-CASTニュース

11/20のエントリー(「捕鯨問題がちょっと気になりました - Baatarismの溜息通信」)で、オーストラリアで日本の調査捕鯨に対する反発が強まっていて、労働党は軍を派遣するという発言までしているという話を書きました。その後、日本側でもオーストラリアの状況に反発した人がいたのか、今度はYouTubeにオーストラリアの反発を批判する動画が投稿されました。これに対してオーストラリアでは、ネットユーザーのみならず、マスコミや政府まで批判発言をしているそうです。


この動画は今でも見ることが出来ますが、オーストラリア人がディンゴやカンガルーを殺す映像が出てきたり、オーストラリアのCM(キリンビール傘下のビール会社のボイコットCMらしいです)で「鯨体験定食」を注文した日本人が銛と電気ショックで(つまり捕鯨と同じ方法で)殺されるシーンが挿入されるなど、かなりショッキングな物です。残酷な場面が嫌いな方は見ない方が良いでしょう。





この動画を見て思ったのは、使われている手法が、従来「嫌韓」や「嫌中」で使われていた手法に似ているなということです。相手を直接批判するのではなく、相手の主張の矛盾点や相手が嫌がる事実をことさらに取り上げて揶揄するというのは、日本のネットにおける「嫌韓」や「嫌中」でよく使われていた手法ですが、この動画も「人種差別」や「動物虐殺」といった、オーストラリア側の矛盾や嫌がる事実を強調しています。
今後も日本のネットナショナリストは、他国で日本に対する理不尽な批判が行われたと感じたら、このような方法で相手を攻撃するのでしょうね。


ただ、マスコミや政府は「フフンw」と平静を保っている日本に対して、マスコミや政府も大騒ぎでポピュリズムを煽っているオーストラリアは、やはり冷静さを欠いているように思います。


一方、オーストラリア政府は日本の調査捕鯨を監視するために、税関巡視船と偵察機を派遣する方針を表明していましたが、今年初めの段階ではどちらもまだ出航していないようです。

 【キャンベラ4日AAP】豪政府は南極海での日本の捕鯨活動を監視すると公言していたが、巡視船はいまだに派遣されておらず、政府への批判の声が上がっている。

 スティーブン・スミス豪外相は先月19日、税関巡視船「オセアニック・バイキング」をフリマントル港から出港させて日本の捕鯨活動を監視すると発言していた。しかし巡視船はいまだに出港しておらず、捕鯨活動を記録するための偵察機にいたっては使用登録も済んでいない。

 政府は弁明に必死で、スミス外相、デーブス内務相、ギャレット環境相による共同声明が4日に発表された。この中では「オーストラリアは東京で反捕鯨国30カ国と欧州委員会が参加した大規模な国際的抗議を先導しました。またスミス外相は先月21日に日本の外務大臣と個人的に会談し、オーストラリア政府が日本の調査捕鯨に強く反対していることを伝えました」と述べられている。しかし、なぜ巡視船と偵察機が派遣されていないのかについての説明はなかった。

 一方、グリーン党のレイチェル・シーワート上院議員は「労働党政権は口先だけで行動が伴っておらず、自由党ハワード前政権とほとんど変わりがない」と批判している。

http://news.jams.tv/jlog/item/id-3479



恐らく、この件については日本側が外交ルートで抗議していて、オーストラリア政府は対日関係と国内の反捕鯨世論の間で苦慮しているのでしょう。やはり野党であっても一度ポピュリズムを煽ってしまうと、実際に政権を握ったときに苦労するようですね。

1/10追記

オーストラリアの税関巡視船「オセアニック・バイキング」は出航したようです。結局、反捕鯨世論に従ったということですね。

 【シドニー=新居益】オーストラリア政府は9日、日本による南極海での捕鯨を監視する船「オセアニック・バイキング」号が8日、豪西部パース郊外の港を出港したことを明らかにした。

 監視船は20日間の日程で、日本の捕鯨船を追尾し、豪州が日本を国際法廷に提訴した場合に使用する写真やビデオの「証拠」を収集する。期間中、航空機による空からの監視も予定している。

http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/world/20080109i511-yol.html?fr=rk