Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

エクストリーム金融政策

そして、これと関連して「エクストリーム」という考え方も提唱したいと思います。


アジャイル」は複数の方法論の総称ですが、具体的な個別の方法論として「エクストリームプログラミング」というものがあります。なぜエクストリーム(極端)なのかと言うと、「良いことは何でもとことん(極端に)やってみよう」というポリシーがあるからです。


たとえば、「テスト用(検証用)のプログラムを書く」ということは、アジャイル以前からソフトウエアの品質を高める良い習慣とされてきました。


しかし、必要とされるプログラムを書いた上に、もう一つ本番では使われないプログラムを書くのは、大きな手間がかかります。だから、以前の常識では、特に重要なプロジェクトの重要なプログラムについてのみ、テスト用のプログラムを書くものでした。


つまり、良い習慣であっても、コストと便益のバランスを見て、ちょうどよいくらいに導入しようということです。


エクストリームプログラミング」では、そのバランスというあいまいさを否定して、「テストファースト」ということを言っています。「先にテスト用プログラムを書け=全てのプログラムに対して書け」ということです。


従来、「良いことだけど副作用もあるからバランス良く導入しよう」とされてきたことを「例外無しに全面的に導入する」という極端なことを主張したので「エクストリーム」なのです。


この「エクストリーム」でこんなネタを書いたことがあります。


* エクストリームはてな = デスクトップ生中継企業 - アンカテ(Uncategorizable Blog)


これは、弁証法の正反合で言うと、反を見ながら正を少しづつ合に持っていくということではなくて、とりあえず反にしてしまって、反の位置から合に持っていくということだと思います。


小泉改革は少なくとも自民党にとっては良い結果となったと思いますが、非常に「エクストリーム」です。安倍さんにしても福田さんにしても、小泉の後始末っぽいことをしているということで、かろうじて政権に留まっているわけですが、小泉抜きであの二人が出てきても何もできなくて政権から転落していたでしょう。自民党の延命という視点で見れば、小泉さんは「反」で、安倍さん、福田さんは「合」ではないかと思います。それ以前の「正」の位置から直接「合」に持っていく解が他にあったでしょうか。


自民党でなく日本を延命させる為には、小泉さんよりもっと「エクストリーム」な人が必要なのでしょう。


また、ベーシックインカムは*1、この文脈で言えば「エクストリームウエルフェア」でしょう。


* 次のビッグイシューベーシックインカムだ! - アンカテ(Uncategorizable Blog)
* 「WEB進化論」的ネット経済とベーシックインカム - アンカテ(Uncategorizable Blog)


手当の支給を例外としている現状(「正」)から適正な配分の社会(「合」)に持っていくのではなく、原則支給するという「反」の位置から、「合」に持っていた方が簡単だと思います。


「エクストリーム」の原則を適用すべき改革は多いと思うし、同様に「アジャイル」による官僚制の解体も多くの組織に要求されてくると思います。

官僚制解体の一般的方法論としての「アジャイル」と「エクストリーム」 - アンカテ



この考え方で言えば、日本においてリフレ政策は「エクストリーム金融政策」と言えると思います。
従来の日銀や大蔵省・財務省の経済政策が「失われた15年」という大失敗を犯してしまい、この現状(「正」)から適切な経済状況(「合」)に持って行くことが出来ないので、「インフレターゲットを定めて、それを達成するために政府・日銀は従来の政策の常識を越えて何でもする」という、これまでの金融政策の(財務省・日銀的な)常識に反した「反」の位置から、「合」に持って行くという理屈が成り立つと思います。
ただ「正」の立場である財務省・日銀から見ると、そんな「反」の政策はとんでもないということになるのでしょうね。
ソフトウェア開発に例えれば、今の財務省・日銀や、それを支持する政治家(与謝野馨氏など)は、ウォーターフォール・モデルを支持する人に相当するのでしょう。