Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

bewaadさんからのフォローアップについて

「元々民主党にあった考え方とは思えません」「今回の民主党の主張の根源は日銀にあったと考えるのが妥当」とおっしゃりますが、では日銀出身議員がいるわけではない他の野党(社会民主党国民新党日本共産党)が反対したのはなぜでしょうか? 今回の民主党(や他の野党)の主張を受け入れる素地が少なからず世論の中には存在し、それを反映したものと理解する方が自然でしょう。


「そのような考え方が日銀の内部に伝統的にあったことは確か」とBaatarismさんが書かれているのは高橋洋一「さらば財務省!」がソースなのですが、高橋先生がそのような存在であると日銀を認識していることと、それが客観的に妥当であることとは別の話です。たとえば竹中平蔵構造改革の真実」でのこの点で興味深かったのは、金融庁幹部の間で、日銀への不信感が決して小さくなかったことだった(p115)との記述に沿って「金融庁幹部」同様財務省出身である高橋先生が同様に一般的に日銀を否定的に捉えるバイアスがあり、それに基づく認識であってもおかしくありません。


客観的な事実といえるのは、

  • 日銀は昔から総裁・副総裁・理事・監事などの幹部として財務省(大蔵省)出身者を受け入れてきている、
  • それら財務省出身者を排除しようとした事例は、少なくとも俗に言う総裁のたすきがけ人事が定着した以降は観察されない、
  • 定量国債引受けは継続的に行っている、



ということです。これらの事実は「そのような考え方が日銀の内部に伝統的にあった」わけではないであろうことの証拠となりますし、無論嫌々受け入れていただけで本音は違うとの議論は成立し得ますが、であるならばその挙証責任はかかる主張を行う側にあるとwebmasterは思います。

http://d.hatena.ne.jp/bewaad/20080409/p1



他の野党が反対した理由については、野党間の協調を優先したという考え方も可能でしょう。政治的には、そのような考え方の方が一般的だと思います。
ちなみに今回の白川総裁、渡辺副総裁の件を例とすれば、民主党と同じ行動をした野党は社民党だけで、共産党は白川総裁・渡辺副総裁の双方に反対、国民新党は白川総裁・渡辺副総裁の双方に賛成しています。だから必ずしも他の野党が民主党と同じ行動を取るわけでもありません。
次に高橋洋一氏に他の財務省出身者と同様のバイアスがあったかについてですが、高橋氏が財務省の意向に反して小泉政権や安倍政権で様々な改革を手がけたことは事実です。一般的な財務官僚はこんなことはしないでしょう。従って、高橋氏の考え方は他の財務省出身者とは大きく異なっていると考えるのが妥当であり、「一般的に日銀を否定的に捉えるバイアス」によってそのような認識をしているという主張は、根拠が薄いと思います。
最後に挙証責任についてですが、私の意見は高橋氏の「さらば財務省!」に書かれたことが事実であると考えた上でのものです。一方、bewaadさんの意見は、それが事実ではないと考えた上でのものですよね。だからこの場合、bewaadさんは高橋氏に「そのような考え方が日銀の内部に伝統的にあった」かを問うべきであり、私に求めるのは筋違いだと思います。私が誰かの考え方を正しいと信じたからと言って、その考えが本当に正しいかどうかの挙証責任が私に発生するわけではなく、そのような考え方を元にした意見であることを表明すれば十分だと考えていますから。