Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

国際協調しない日本銀行

 [東京 8日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)など米欧の6中銀は8日、協調利下げに踏み切ったと発表した。利下げ幅は6中銀とも0.5%。日銀は利下げせず、金融調節面での改善の検討を始めることを明らかにした。


 6中銀は経済活動の低迷と物価圧力の軽減を踏まえて利下げしたと説明。米国発の金融危機が欧州にも波及し、株価が世界的に急落したことへの対応であることをにじませた。


 6中銀の対応を具体的にみると、FRBフェデラルファンド(FF)金利の誘導水準を2%から1.5%、ECBは定例買いオペ最低応札金利を4.25%から3.75%、イングランド銀行政策金利を5.0%から4.5%に引き下げた。スウェーデン中銀(スウェーデン国立銀行)はレポ金利を4.75%から4.25%、カナダ中銀は翌日物金利を3.0%から2.5%、スイス中銀(スイス国立銀行)はスイスフラン3カ月ものLIBORを3%(実績値)から2.5%(誘導レンジの中間)にそれぞれ引き下げた。


 6中銀は共同声明を発表、その中でエネルギーや原材料価格の下落などを背景に、インフレ圧力が緩和し始めていると指摘。インフレ期待は減衰しつつあり、物価安定に対する信頼は高いとした。その上で国際的金融危機で経済成長の下方リスクは高まっている一方、物価安定に対する上方リスクは低下しており、グローバルな金融環境をある程度緩和することが正当化されると明言した。


 また、FRBは利下げの理由について、経済活動の低迷と物価圧力の軽減を踏まえて利下げしたとし、商品価格の下落や経済見通しの悪化がインフレリスクを抑制していると説明した。


 フラット米大統領補佐官は8日、今回の対応について「各中銀が金融システムの緊張に協調して、対処することは重要かつ有益だ」と語った。


 ECB理事会メンバーのウェーバー独連銀総裁は8日夜、協調利下げに関連し、市場の状況を踏まえ、断固たる行動を取る必要があったと発言。各中銀は、危機悪化防止に必要な全ての措置を取るとの明確はシグナルを送ったとし、「全ての市場参加者は、冷静かつ責任ある行動が今求められている」と述べた。 


 一方、日銀は、当座預金制度の運用を含め金融調節面でさらに改善を図る方策について検討するよう、白川方明総裁から執行部に指示があったとの声明を発表。6カ国中銀の決定を歓迎し、金融システム安定の確保に貢献することを期待している、とした。


 山口廣秀理事は同日夜の会見で、FRBが実施した準備預金への付利が参考になるか考えると指摘。このことで銀行が超過準備を持つことのインセンティブが高まると説明した。また、適格担保の範囲に関して、拡充の余地がないか検討を進めることも明らかにした。


 しかし、追加的な金融緩和措置が必要とは思っていないと強調。今回の協調利下げに加わらなかったスタンスを明確にした。また、補完貸付金利の見直しは、総裁指示の中には入っていないとの見解も示した。


 こうした米欧中銀の動きに歩調を合わせるように中国人民銀行も同日夜、1年物貸出基準金利を0.27%引き下げ6.93%とし、1年物預金準備率を0.27%引き下げ3.87%とすることを発表した。

米欧6中銀が協調利下げ、日銀は参加せず金融調節面の改善検討 | Reuters



米欧の6中銀だけではなく中国も利下げに踏み切っているのに、日銀は頑として利下げを拒んでいるようです。日本の政策金利は0.5%なので、ゼロ金利にして他国と同じ引き下げをする余地はあるはずなのですが。
これじゃ日本は金融危機対策に貢献していないと、他国から思われても仕方ないでしょうね。

 [東京 7日 ロイター] 麻生太郎首相は7日夕、官邸で中川昭一財務相兼金融担当相や白川方明日銀総裁らと会談し、欧米を中心に金融危機が深刻化するなか、10日にワシントンで開催される7カ国財務相中央銀行総裁会議G7)では、日本の不良債権処理の経験などメッセージを世界に発信するとともに、各国で支え合う合意が得られる努力を行うよう指示した。


 会談後、麻生首相は記者団に対し、現在の欧米を中心とした金融システム問題について「日本の場合、金融システム、決済システムは欧米に比べて今のところ痛みは軽微」としながらも、「遠からず(日本の)実物経済に影響が出てくる。米国・中国という両方の輸出先が先行き駄目になる確率が極めて大きい。従って日本は内需がしっかりしてこないとうまくいかない」と先行きに警戒感を示した。


 さらに、米国発の金融危機が欧州にも広がっている点を指摘し、「欧州の金融環境は大きく乱高下している。日本に(影響が)出てくることを懸念している」とし、足元の為替市場の状況について「ユーロもかなり具合が悪くなってきて、円がえらく買われている状況でもある」と語った。


 その上で、ワシントンG7では「きちんとしたメッセージを出さないと影響が大きい」とし、G7に出席する中川財務相や白川日銀総裁に対して「皆で支えようという合意ができるような努力をしてもらいたい」と指示したことを明らかにした。


 具体的には、日本として90年代後半に深刻化した不良債権問題を公的資金の活用などで乗り切った点を強調。「日本の場合は(金融機関に対して)13兆円の資本を投入し、他国に迷惑をかけずにくぐり抜けた。日本の経験として堂々と語れることのひとつ」と米政府による金融機関への公的資金注入に期待感をにじませた。


 中川財務・金融相も官邸内で記者団に対し、麻生首相から世界へのメッセージ発信と世界との連携について指示を受けたことを明らかにした上で、G7では不良債権問題を乗り越えた日本の経験を説明すると述べるともに、「日本経済を悪くしないことで世界に貢献できる。緊急総合対策、補正予算について説明し、参考にしてもらいたい」と語った。


 ただ、金融機関への公的資金注入を米政府に要請するのかとの質問には「求めるとか求めないではない。(公的資金注入は)米国が判断することだ」と述べるにとどめた。

G7に向け麻生首相が財務相・日銀総裁と会談 | Reuters



今回のG7で日本は不良債権問題を乗り切った経験を世界に伝えたいという意向のようですが、協調利下げすらできない日本がそんなことを言っても、欧米は冷ややかな目で見るだけではないでしょうか?日本は目の前の危機に対して全力で対処する気はありませんよというメッセージを、利下げに協調しないことで他国に送ってしまっているわけですから。
まあ、日本は不良債権問題による金融危機の真っ最中だった2000年に、ゼロ金利解除、すなわち「利上げ」を行って事態を悪化させた経験もあるので、そっちを語れば反面教師としては聞いてくれるかもしれませんが。w

 欧米の協調利下げに、それに参加せずに日本銀行は前代未聞のエールを送るだけという声明を発表した。


 「このため、カナダ銀行イングランド銀行欧州中央銀行、米国連邦準備制度スウェーデン中央銀行、スイス国民銀行は、本日、政策金利の引き下げを公表した。日本銀行は、これらの措置に対して強い支持を表明した。」


 http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/un0810b.pdfより抜粋


 このような日本銀行の姿勢は、量的緩和解除、ゼロ金利解除時での将来リスクの不当な軽視とその後の「金利上げ」戦略の失敗に基づいている。


 すなわち万が一協調して利下げを行えば、自らの政策の失敗を露呈してしまうという、ただの組織防衛のロジックが上記の声明の背後にあるのは疑い得ない。


 日本銀行は緊急に利下げ(ゼロ金利政策)に転換し、長期国債買い切りなどの手段で量的緩和政策に復帰すべきである。それが政府の財政政策と連動することで、日本の不況を脱出する上で貢献することになるだろう。

日本銀行は利下げ、そして積極的な量的緩和に戻るべきである - Economics Lovers Live



田中秀臣さんは日銀が利上げを拒む理由はただの組織防衛だと言ってますが、もしこれが本当なら白川総裁は日銀総裁の資格なしと判断するしかないですね。金融政策についてどのような考えを持っていたとしても、今回のような金融危機への対策においてあらゆる手段を動員するのは、中央銀行としての責務でしょう。FRBバーナンキ議長とECBのトリシュ総裁は金融政策についての考え方は違いますが、このような危機においては一致して行動しました。何故白川総裁にはそれができないんでしょうねえ。

追加(10/9)

韓国、香港、台湾の中央銀行も協調利下げのようですね。特に韓国はインフレが深刻なのに協調するようです。
日本はインフレが深刻でもないのに、何故協調しないんでしょうねえ。

 【ソウル=島谷英明】韓国、香港、台湾の中央銀行は9日、政策金利の引き下げを発表した。韓国銀行は政策金利を0.25%引き下げ、年5.00%とすることを決めた。韓銀は8月に物価の上昇抑制を主眼に政策金利を0.25%引き上げたばかりだが、利下げで金融市場の混乱抑制を狙う。米欧や中国などの主要中央銀行による同時利下げに協調する。


 香港金融管理局(HKMA)は公定歩合に当たる基本金利を0.5%引き下げ、2.0%にした。HKMAは8日に1%の利下げを発表したばかり。香港ドルは米ドルに連動しており、基本金利は米国の金利に追随する仕組み。米国の緊急利下げにより、自動的に利下げの幅が広がった。


 台湾の中央銀行公定歩合を0.25%引き下げ、年率3.25%にすると発表した。利下げは9月26日に0.125%引き下げて以来。世界的な金融不安が広がり、台湾でも一部銀行の経営に関する不安が広がっていることに対応する。

NIKKEI NET(日経ネット):韓国・香港・台湾が利下げ、主要中銀に協調 金融市場の混乱抑制