Baatarismの溜息通信

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財務省に梯子を外された麻生総理?

 財政制度等審議会財務相の諮問機関)は15日の会合で、今国会で審議中の2兆円の定額給付金を撤回し、使い道を見直すよう政府に求めることで大筋一致した。近く中川財務相に意見を伝える。政府が決定した政策を審議会が批判するのは異例だ。


 財政審は西室泰三会長(東京証券取引所グループ会長)の3選を決めた。


 西室会長は会合後の記者会見で、08年度2次補正に盛り込まれた定額給付金に対し、委員から「正すべきは正すべきだ。このようなものが次々出てきたら国家財政は成り立たなくなる」「本当に役立つものに振り向ける方がいい」などの批判が相次いだことを明らかにした。


 西室会長は「給付金で予算審議が空転すると、経済への影響が大きい。2兆円はしっかりした議論を与野党でやってもらうことが必要ではないか」と述べた。

http://www.asahi.com/politics/update/0115/TKY200901150263.html



高橋洋一氏によると、このような審議会では事務局を通じて、官僚が裏で結論を操っているそうです。ということは、この審議会の意見も、その裏には財務省の意向があると考えて良いでしょう。
つまり、財務省が麻生総理に対して「定額給付金 No!」を突きつけたことになります。


そして、何故このタイミングで財務省がこのような動きに出たかというと、恐らくこの件が関係していると思います。

 政府は14日、自民党の政調全体会議に対して、平成23年度以降、段階的に消費税税率を5%引き上げる財政試算を前提とした「経済財政の中長期方針」の原案を提示したが、出席議員から批判が噴出し、了承は見送られた。政府は麻生太郎首相の強い意向を踏まえ、「方針」を月内に閣議決定するとともに、3年後の消費税引き上げを21年度予算案の関連法案である税制改正法案の付則にも盛り込む方針。これに次期衆院選増税批判を浴びるのを嫌う自民党議員が反発する構図が鮮明となった。定額給付金に加え、消費税が造反を誘発しかねず、政局の火だねとなりそうだ。


 自民党中川秀直元幹事長は14日昼、都内での同党所属議員のパーティーで、財務省主税局幹部の姿を見つけ、声を張り上げた。


 「これから消費税増税が政局、政策の焦点になっていく。今日は(自民党政調全体会議で)2時間、獅子吼(ししく)してきた。増税の前にやるべきこと(=行革)をやらないでいいのか。こんな経済状況で適切なのか!」


 中川氏は政調全体会議で、ひな壇の保利耕輔政調会長の前に陣取り、2時間の会議の中で、何度もマイクを握り、「景気がちょっと上向いたところで増税すれば、景気が2番底、3番底になる」「いつの間にか増税を付則に入れる話になったが、おかしい。誰が決めたんだ」と攻め立てた。


 他の議員からも「行革や国会議員の歳費カットをせずに消費税増税をいって国民の理解が得られるのか」(塩崎恭久官房長官)「税制法案の付則への(消費増税)盛り込みは絶対反対だ」(世耕弘成首相補佐官)との声が相次いだ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090115/stt0901150016000-n1.htm



麻生総理は、「3年後の消費税引き上げを21年度予算案の関連法案である税制改正法案の付則にも盛り込む方針」でしたが、これに対して自民党上げ潮派を中心に反発が相次ぎました。定額給付金では2人の造反で済みましたが、中川秀直氏が動いたとなるとそれでは収まらないでしょう。恐らく、この件は法案提出にも持って行けないと思います。


財務省としても、本音では「埋蔵金」を削られる定額給付金は反対だったでしょう。それでもこれまで黙っていたのは、定額給付金と引き替えに3年後の消費税引き上げを確定させるつもりだったからだと思います。しかし、それを担保する「税制改正法案の付則への盛り込み」が出来なくなった以上、もはや定額給付金を出す意味はなく、「埋蔵金」の回収に動いたのだと思います。


これまで麻生氏は、財務省の代弁者である与謝野馨氏と友好関係を築くことで、財務省とのパイプを保ってきました。3年後の消費税引き上げにこだわったのは、そんな財務省への配慮だったのでしょう。しかし、それが困難になった途端、財務省の方から麻生政権を見限った、どうも僕にはそのように思えます。


この線でこの先の動きを予想すれば、財務省の意を受けた与謝野経済財政担当相が動いて、麻生総理は定額給付金の撤回を余儀なくされ、それに変わる代案も示されず、麻生政権は求心力を失っていくのでしょう。その先、レームダッグとなった麻生政権がずるずる続いていくのか、財務省の後ろ盾で与謝野政権が誕生するのかは分かりませんが、定額給付金撤回で公明党が反発することも考えれば、そろそろ自民党政権も終わりが見えてきたのかもしれません。


財務省の力を借りるというのは、まさに諸刃の剣なんですね。