Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

バンコールの復活

[ロンドン 1日 口イ夕一] 4/1、主要20か国・地域(G20)緊急首脳会議(金融サミット)のため、ロンドンを訪れたオバマ米大統領は、ブラウン英首相と会談を行った。その後の共同記者会見で、金融危機の根本原因がドルを基軸通貨とする国際通貨体制にあることで意見が一致し、1944年のブレトンウッズ会議で英国のケインズ代表が提案しながら、アメリカのホワイト代表の反対によって実現しなかった国際通貨「バンコール」を復活させることを、G20金融サミットにおいて両国合同で提案すると発表した。


3/23に、周小川・中国人民銀行総裁が米ドル、ユーロ、円、英ポンドの通貨バスケットで算出される国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の使用範囲を拡大し、基軸通貨として活用していくことを提案し、ドイツ、ロシア、フランス、オーストラリアなどの各国からこれを評価する声が出ていた。その一方、アメリカのガートナー財務長官がSDRの使用範囲拡大の提案に「極めてオープン」と述べてドルが急落、慌てて発言を取り消すといった混乱も見られたが、この混乱の背景には、今回の「バンコール」復活提案があったことになる。


この提案に関して、昨年のノーベル経済学賞受賞者であるポール・クルーグマン教授は自らのブログに"Bancor is Baaack!"という記事を掲載し、「世界経済危機によってケインズが見直されているけど、とうとうその最後の提案も復活することになったんだ。バンコールの復活だぁっ!」と、今回のオバマ・ブラウン提案を高く評価している。


このオバマ・ブラウン提案を受けて、1944年に提案された「バンコール」を現代の経済状況に合った制度とするため、IMFに専門委員会を設置する方向であり、委員長として、クルーグマン教授の他、やはりノーベル経済学賞受賞者であるジョゼフ・スティグリッツ教授の名も候補に挙がっている。


なお、この提案によってドルが基軸通貨でなくなることを見越した大幅なドル安が進んでおり、東京外国為替市場では1ドル=80円41銭前後の大幅な円高となっている。


国際通貨「バンコール」復活へ - 口イ夕一



中国の提案とそれに伴う各国の反応については、新城カズマさん(id:sinjowkazma)の記事


「バンコール2.0はいかが?」と中国人民銀行総裁は言った - 散歩男爵 Baron de Flaneur (Art Plod版)


で詳しく紹介されていますが、本当に「バンコール2.0」が誕生するとはびっくりです。
僕はこれまで「アメリカの凋落」といった内容の主張を嘘くさいと切り捨てていましたが、当のアメリカ自身が基軸通貨を放棄するという決断を下した以上、そのような主張も再検討する必要がありそうです。