Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

野田政権で予想されること

先週の民主党代表選は野田佳彦氏が当選し、野田政権が発足しました。彼は財務相時代から増税を主張している政治家でしたが、就任後の財務相や経財相の人事を見ても、やはり「財政規律派」が登用された増税重視の布陣となっています。安住財務相については経済は「素人」という評判が出ていて、さっそく財務省の言うなりになったような発言を始めていますし、古川経財相についてもデフレ対策に消極的だという話があります。*1

 「将来の子供たちへ莫大(ばくだい)なつけをつくることは、許されない」と発言している安住淳財務相、旧大蔵省OBでもある古川元久国家戦略相兼経財相は、ともに財政規律派。野田首相が自らの方針を実行するために起用した。
 「二〇一〇年代半ばまでに消費税率10%」とする「社会保障と税の一体改革」について、安住氏は「財政の国債依存度をただすため、消費税もタブーにしないで国民の前で議論すべきだ」と発言している。
 野田政権は消費税率引き上げを含む一体改革の関連法案を来年三月までに国会提出したい方針。社会保障のために消費税率を引き上げる方針に理解を示す閣僚が大多数で、方針の大きな転換はないだろう。


東京新聞:増税に大きくかじ 「財政規律派」を登用:経済(TOKYO Web) 東京新聞:増税に大きくかじ 「財政規律派」を登用:経済(TOKYO Web) 東京新聞:増税に大きくかじ 「財政規律派」を登用:経済(TOKYO Web)



ただ、増税については、6月に「社会保障と税の一体改革」による消費税増税の方針が民主党内で大きな反対に合い、2015年にしたかった時期が2010年度半ばとぼかされたり、経済状況の好転を「条件」としたり、閣議決定が見送られるなど、政府側も譲歩を強いられた経緯があります。また、復興増税については代表戦でも野田氏以外の候補は全員慎重で、与党だけではなく野党にも異論があるので、野田総理増税方針をややトーンダウンしています。
野田政権では「政策決定の内閣への一元化」が見直され、政策決定で党の政策調査会の権限が大きくなるなど、政策決定における党の力が大きくなりますので*2増税を巡って6月と同様の反対の動きが発生すれば、政府が増税を強行することはさらに難しくなるでしょう。
とは言え、野田政権が増税志向なのは確かですから、例えば同じく増税志向である自民党の案を丸呑みするなどして、民主党内部の批判をかわして増税に持って行く可能性もあるでしょう。増税が実現するかどうかはまだ不透明だと思います。


また、今は円高が深刻な問題になっています。野田氏が財務省に就任した昨年6月はまだ1ドル90円くらいだったのですが、今では1ドル76円の歴史的最高水準まで進んでしまいました。*3
今、政府は円高対策を言ってますが、その内容は企業への融資や資金繰り支援であって、円高そのものをおさえるためには全く役に立たない代物です。これでは企業の海外脱出を止めることもできないでしょう。*4
この円高の原因は他国に比べて日本の通貨供給量が少ないことであり、日銀が大幅な金融緩和をして通貨供給量を増やさない限り、円高は収まりません。*5
しかし、野田首相財務相時代に日銀に対して金融緩和を訴えることもなく、円高になるのを「注視」し続けました。恐らく野田政権でも円高が続き、なんらかのきっかけ(例えばアメリカのさらなる金融緩和とか、欧米の景気後退観測など)で1ドル60円台に円高が進むと思います。野田財務相時代の1年3ヶ月で14円も円高ドル安が進んでいることを考えると、来年中に1ドル50円台になることも十分にあり得るでしょう。
このような超円高は日本経済に大きなショックを与えるでしょう。野田政権は増税ばかり熱心で、大規模な金融緩和や復興のための大規模財政出動には消極的です。例えば、20兆円規模の復興予算を国債を財源として政府が組んで、その国債を日銀が引き受けるとか、それに相当する国債を市場から買い入れるというような対策は行われないでしょう。従って、増税が反対勢力によって阻止されたとしても、この円高と、政府・日銀の金融政策や財政政策の無策によって、来年は大きな不況になると思います。もし増税が行われば、その不況に拍車をかけるでしょう。1998年や2008年の時のような経済の大混乱が、再び発生するのではないでしょうか。
そのような状況で、来年の民主党代表選で野田総理が順調に再選されることはないでしょう。また首相が交代して、「日本の首相は毎年替わる」という記録をさらに更新するのではないかと思います。