Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

リフレ政策を打ち出した安倍自民党総裁

衆院解散が決まった直後から、自民党の安倍総裁が積極的なデフレ対策を主張してインフレターゲットや日銀法改正まで言及したため、リフレ政策が総選挙の争点として急浮上してきました。

[東京 15日 ロイター] 自民党安倍晋三総裁は15日、政権を奪還した際の経済運営に関して、これまでの自民党政権の対応とは次元の違う政策で対応するとの決意を語った。総裁は、デフレと円高が最大の問題だと指摘。

デフレ脱却では、インフレターゲット設定に言及し、目標達成まで無制限な金融緩和を求めたほか、来年度予算は景気刺激型とし公共投資を増額する方針を明言した。


かつての自民政権と次元の違うデフレ・円高政策を=安倍総裁 | Reuters かつての自民政権と次元の違うデフレ・円高政策を=安倍総裁 | Reuters かつての自民政権と次元の違うデフレ・円高政策を=安倍総裁 | Reuters

  11月20日(ブルームバーグ):衆院選(12月4日公示、16日投開票)では、日本銀行法の改正が争点に浮上している。自民党が法改正の検討を政権公約へ盛り込むことを決めたほか、日本維新の会みんなの党が法改正で一致。日銀の金融緩和に対する政治的圧力が強まっているが、みんなの党や自民の一部議員が主張する内閣に日銀総裁解任権を付与する条文を盛り込むことについては自民党内でも慎重論が根強くある。
「グローバルな新しい金融に対応するために、日銀法の改正も視野に入れた、かつて自民党は一度も挑んだことはなかった大胆な金融緩和を行っていく」−。自民党安倍晋三総裁は16日の衆院解散後の記者会見で、日銀法改正にも言及し、政権を奪還すれば日銀に強力な金融緩和を求めていく考えを示した。
これに先立ち、党本部で開かれた日本経済再生本部では政権公約に反映させる経済再生策の案が提示された。物価上昇率目標2%の設定と、「日銀法の改正も含め政府・日銀の連携強化の仕組みを作る」と指摘したが、法改正を検討する具体的な条文には触れていない。
自民党関係者2人によると、党は21日に発表する予定の政権公約で日銀法改正に関する同本部の提言を明記する。自民党が日銀法改正を選挙公約に盛り込むのは、日銀の独立性を強めるために行った1998年の現行日銀法施行以来、初めてとなる。


自民:政権公約で日銀法改正に言及へ−維新・みんなも緩和へ圧力 (1) - Bloomberg 自民:政権公約で日銀法改正に言及へ−維新・みんなも緩和へ圧力 (1) - Bloomberg 自民:政権公約で日銀法改正に言及へ−維新・みんなも緩和へ圧力 (1) - Bloomberg



これを受けて、11/15頃から円相場は急速に円安になり、株価は上昇しています。市場は自民党のリフレ政策によって円安と景気回復が進むことを予想しているようです。


円ドル相場



円ユーロ相場



日経平均



また、下のリンク先に長期金利のグラフがありますが、安倍総裁の発言以降、金利が上昇しているというデータは無いようです。

長期金利推移グラフ | 日本相互証券株式会社 長期金利推移グラフ | 日本相互証券株式会社 長期金利推移グラフ | 日本相互証券株式会社



リフレ政策については、ハイパーインフレや高インフレが進むという反対意見が根強くありますが、もし市場がそのような予想をしているならば、円が暴落するでしょう。また、リフレ政策は財政ファイナンスであり、財政規律が崩壊するという意見もありますが、それならば長期金利が暴騰するはずです。
しかし、上に挙げたデータを見る限り、そのような兆候は見られません。


なお、安倍総裁が建設国債の日銀引き受けを求め、白川日銀総裁がそれに反論したという報道もありますが、東京新聞長谷川幸洋氏によると、マスコミが安倍氏の発言を曲解した誤報だということです。白川総裁はそのようなありもしない主張に対して反論したということです。

 自民党安倍晋三総裁が2〜3%のインフレ目標設定と大胆な金融緩和を日銀に求めた件で、白川方明日銀総裁が反論した。多くのメディアは「安倍が日銀による建設国債の直接引き受けを求めた」という話を前提に、白川の反論を報じている。だが、そもそも安倍の要求なるもの自体がほとんど誤報である。

 メディアが安倍の話を曲解して報じたあげく、白川に反論させた構図である。言ってみれば、メディアが勝手にでっち上げた空中楼閣のような「論争」なのだ。

 それで得したのは誰かと言えば、日銀と民主党である。なぜなら「日銀の国債引き受けはとんでもない」という認識が広まったうえ、前原誠司経済財政相兼国家戦略相らの安倍批判がもっともらしく聞こえてしまうからだ。

 こういう展開を目の当たりにすると、つくづく世の中を悪くしている原因の1つはメディアであると思う。自分たちのいい加減な報道を棚に上げるだけでなく、デフレを脱却できない主犯である日銀に免罪符を与えている。それどころか、あたかも日銀の言い分が正しいかのように国民を誤解させているのだ。


 まず出発点を確認しよう。いったい安倍はなんと言ったのか。私は現場にいなかったので、報道をベースにすれば次のようだ。


自民党安倍晋三総裁は17日、熊本市内で講演し、デフレ脱却について『やるべき公共投資をやって建設国債を日銀に買ってもらうことで強制的にマネーが市場に出ていく』と述べ、政権に復帰した場合、建設国債の全額日銀引き受けを検討する考えを示した」(毎日新聞、11月18日付)


 念のため、もう1つ紹介する。


「安倍総裁は『国民の命を守り、子どもたちの安全を守るため、公共投資などを堂々と行っていく必要がある。やるべき公共投資を行い、そのための建設国債をできれば日銀に全部買ってもらうことで、新しいマネーが強制的に市場に出ていく。景気にもよい影響がある』と述べ、政権に復帰した場合、公共事業の財源に充てるために発行される建設国債を日銀に引き受けさせることを検討する考えを示しました」(NHK、18日5時38分)


 以上の記事で注意すべきは、どちらも「・・・と述べ」以下の部分である。直前のカギカッコの中は安倍の発言を紹介した形だが「・・・と述べ」以下は、記事を書いた記者の解釈だ。実際には、安倍は「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう」と言っただけで「建設国債の日銀引き受け」という言葉は安倍のカギカッコ発言の中には出てこない。

 日銀による国債購入には、金融調節手段として市場から買う「買いオペ」と、市場を通さず日銀から直接購入する「日銀引き受け」がある。市場を通した間接購入か、通さない直接購入の違いと言ってもいい。キーワードは「直接」である。

 この肝心の部分について、多くのメディアは勝手に、安倍の提案は「直接購入=日銀引き受け」と自分たちの解釈を付け加えて報じたのである。


「建設国債の日銀引き受け」発言は本当にあったのか?安倍自民党総裁vs白川日銀総裁の「金融政策論争」はメディアが仕組んだけんかだ  | 長谷川幸洋「ニュースの深層」 | 現代ビジネス 「建設国債の日銀引き受け」発言は本当にあったのか?安倍自民党総裁vs白川日銀総裁の「金融政策論争」はメディアが仕組んだけんかだ  | 長谷川幸洋「ニュースの深層」 | 現代ビジネス 「建設国債の日銀引き受け」発言は本当にあったのか?安倍自民党総裁vs白川日銀総裁の「金融政策論争」はメディアが仕組んだけんかだ  | 長谷川幸洋「ニュースの深層」 | 現代ビジネス



このようにマスコミ報道であっても、うかつには信用できない状況です。また、経済学を学んでいないため、今回の論争をどう判断すれば良いか分からない人も多いでしょう。
このような状況では報道される専門家の意見よりも、集合知に頼った方が良いと思います。経済分野では、多くの人や企業が自分のお金をかけて行った予想の集積が、市場という形で現れます。もちろんバブルの時のように、市場が間違った予想を出してしまうこともありますが、現在はそのような状況ではないでしょう。
その市場は安倍総裁のリフレ政策発言に対して、円安、株高、長期金利の安定という反応を示しているわけですから、これがリフレ政策のもたらす効果であると考えて良いのではないかと思います。