Baatarismの溜息通信

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反リフレ政党となった民主党

[東京 12日 ロイター] 民主党は12日夕の「次の内閣」で、政府が提示している次期日銀正副総裁人事案について、黒田東彦総裁候補と中曽宏副総裁候補に同意する一方、リフレ派の急先鋒とされる岩田規久男副総裁候補には反対することを正式に決めた。

ただ、岩田氏に関してはみんなの党新党改革が賛成する意向を示しており、与党少数の参院でも過半数の同意が得られる見通し。14日の衆院本会議、翌15日の参院本会議でそれぞれ採決され、週内には正副総裁が確定する見通しとなった。


<岩田氏不同意で「リフレ政策と一線画す」>

会合終了後に会見した桜井充政調会長は、日銀人事をめぐる党内論議の結果を「安倍政権の『アベノミクス』に非常に危うさを感じている。今のところ円安・株高とプラス面だけが出ているが、金融政策だけですべてのことが解決するわけではない。(政策の)実現性もどうなのか」などと説明。岩田氏を不同意としたのは「リフレ政策に一線を画す」ことに加え、解任権を含む日銀法改正は「とても飲める案件ではない」との結論に達したためだとした。


<空白回避の黒田氏同意、4月再任手続きまでにさらに考え質す>

同意を決めた黒田氏についても桜井政調会長は「党内でさまざまな意見があった。正直に言うと(マルやバツではない)三角」と表明。「リフレ派なのか立ち位置がはっきりしない」ことや「どう(政策を)実現するのかについて説明が十分でなかった」点を指摘したが、同時に「(正副総裁のポストに)空白は作れない。政治の責任として決断した」と述べた。

今回の日銀総裁国会同意人事は、白川方明現総裁が任期満了を待たずに辞任するため、4月8日までの間の「後任人事」の位置づけ。4月以降の5年間の任期については再度、国会で採決が行われる。政調会長は「(次回の同意人事までの間に)国会であらためて考えを聞きたい。この時は不同意もあり得る。納得して同意を決めたわけではない」として、今後の議論が重要だとけん制した。

衆参両院での所信聴取後に正副総裁候補の賛否を協議した財務金融部門会議の役員会では、不同意を決めた岩田氏と黒田氏の考えが似かよっていることに慎重論が広がっていた。財務金融部門会議で判断基準に掲げた「政府の言いなりにならない『胆力』」に疑問符が付いたためだ。

同役員会での一任を取りつけ次の内閣で賛否の考えを提案した前原誠司ネクスト財務・金融担当大臣(前経済財政相)はロイターに対して、期待に働きかけることで、2%の物価目標達成を明言する危うさを警戒し、黒田総裁候補について「リフレ派が過ぎることへの強い懸念がある」と指摘した。4月再任手続きの時まで黒田氏の考えを国会で質していく考えを強調。「2回目には不同意もある」と提案して次の内閣での了解を得たことを明らかにした。


中曽氏については、党内議論でも「特段の異論はなかった」(桜井政調会長)という。


日銀正副総裁人事、黒田氏と中曽氏への同意を決定=民主党 | Reuters 日銀正副総裁人事、黒田氏と中曽氏への同意を決定=民主党 | Reuters 日銀正副総裁人事、黒田氏と中曽氏への同意を決定=民主党 | Reuters



前回の記事の予想通り、結局、民主党は岩田副総裁に反対することに決めたようです。さらに黒田氏についても4月以降の5年間の任期については反対があり得ると言っています。問題なしでフリーパスなのは、日銀出身の中曽氏だけということになります。
また、太字で強調したような意見が党内の主流であるということは、民主党は明確に反リフレ政策の立場を打ち出したということです。これまでリフレ政策に理解がある発言をしていた前原氏もこういう発言をしているわけですから、もはや民主党は反リフレ政党と言って良いでしょう。
民主党にリフレ政策を採用させようとしたデフレ脱却議連の試みは、残念ながら失敗に終わりました。これ以上リフレ派の議員が民主党に残る意味はないと思います。


そんな中、デフレ脱却議連の中心人物の一人だった馬淵澄夫議員が、これまでの日銀の行動を批判し、岩田氏を評価するブログ記事を載せています。

 要は、民主党政権は、与しやすいと思い、ゆっくり動き、不穏な空気を感じ取ると、政策を小出しにする。一方で、自公政権が誕生し、日本銀行法の改正を主張する安倍議員が総理になると、態度を一変させて、従順の意を示す。民主党の新成長戦略は無視し、自公政権の成長戦略は評価し、民主党政権下で散
々否定したインフレ目標を導入する。つまり、日本銀行は、極めて政治的に動く集団なのである。
 株価が上がると、政権の支持率もアップする。これは、今回の安倍政権のときだけではなく、過去も、小渕政権で株価アップと同時に、内閣支持率がアップしてきた。民主党政権下で3年3ヶ月かけてゆっくりと
国や英国のように、素早く、大胆に実行していたら、おそらく、株価は上昇し、円高も阻止できたであろう。民主党政権は株価を味方につけることができなかった。まさにこれは、日本銀行のゆっくりゆっくり動くという「政治的な動き」が一つの大きな要因ではないか。
 黒田総裁候補、岩田・中曽副総裁候補に対する衆参議運委での参考人質疑が3月4日から行われた。「日本銀行法改正が必要」と答弁する岩田副総裁候補に対し、日銀の独立性を確保するためとの理由から問題があるのではないかとのニュアンスが質疑の中でも垣間見られた。しかし、日本銀行はむしろ独立性をよすがとして、極めて政治的な動きで民主党の政策には×をつけ、自公政権の政策に〇をつけ、そして、株価上昇による内閣支持率アップを安倍政権に与えているのである。前原議員が大臣のときには、物価安定の目標は導入せず、3ヶ月後に安倍政権が誕生するとすぐに、物価安定の目標を宣言した。
果たして、これを独立性と呼んでよいのか。
 見方を変えれば、岩田副総裁候補は、まさに民主党政権時代、独立性のもとに日本銀行が政治的に動いていることを喝破し、日銀法改正を主張しているのである。


総裁候補ら3名の所信表明質疑: まぶちすみおの「不易塾」日記 総裁候補ら3名の所信表明質疑: まぶちすみおの「不易塾」日記 総裁候補ら3名の所信表明質疑: まぶちすみおの「不易塾」日記



ここに書かれていることは、まさにその通りだと思うのですが、そのように民主党政権をなめきった行動をしてきた日銀総裁を誕生させたのは、5年前の執行部人事で日銀出身者ばかり同意した民主党でした。
そして、今回も民主党はその時と同じ選択をしようとしています。


民主党はこのまま日銀理論と心中する道を選ぶのでしょうが、少なくともデフレの害と日銀の過ちを知っているリフレ派の民主党議員は、このような党の方針にはっきりと反対し、岩田氏や黒田氏を支持して欲しいです。そして、反リフレ政党と化した民主党には見切りを付けて、リフレ政策による日本経済の復活と、自民党にはない貧富の差を縮める再分配政策を看板とした路線を打ち出して欲しいと思います。