Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

「リフレの年」だった2013年

2013年の金融・証券市場は歴史的な株高・円安となった。日経平均株価は年間で57%上げ、41年ぶりの上昇率を記録。円は対ドルで34年ぶりの下落率になった。世界の投資マネーが新興国から先進国へと向かうなか、大規模な金融緩和などで日本が長引くデフレから脱するとの期待が浮上。内外の投資家が取引を活発に膨らませた。来年もこの流れが続くかどうかは、景気の持続的な拡大がカギを握る。


株高41年ぶり、円安34年ぶり… 歴史的値動きの1年  :日本経済新聞 株高41年ぶり、円安34年ぶり… 歴史的値動きの1年  :日本経済新聞 株高41年ぶり、円安34年ぶり… 歴史的値動きの1年  :日本経済新聞

アベノミクス三本の矢の中で政策が十分な形で実行され、成果が出ているのは第一の矢たる「大胆な」金融政策である。4月4日に公表・実行された量的・質的緩和策では、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭においてできるだけ早期に実現すべく、長期国債ETFJ−REIT、CP・社債等の買取りを通じてマネタリーベース(2012年末実績138兆円)を2013年末に200兆円、2014年末に270兆円まで拡大するとしている。

量的・質的緩和策公表時のマネタリーベースやバランスシートの見通しと実施動向を比較すると、日銀が当初見通したとおりの緩和がなされている。今年も日銀の想定通りの経済動向が続くのであれば、見通し通りに緩和が行われるはずだ。

第一の矢は予想インフレ率を引き上げ、円安・株高をもたらした。昨年11月14日の野田前首相の解散発言から11月14日における日経平均株価・ドル/円レートの動きを比較すると、株価は72%上昇し、ドル/円レートは25%の円安となった。

4月時点では、大胆な金融政策を行っても株高や円安といった資産市場の好転しか生じず、実体経済には影響しないという指摘もなされたが、第二の矢の効果も相まって、実質GDP成長率(前期比年率)は、2012年10-12月期の0.6%から2013年1-3月期には4.5%と大きく上昇し、その後2013年4-6月期3.6%、7-9月期1.1%と回復が進んだ。

実質GDPが回復することで2012年10−12月期に17兆円であったデフレギャップは、2013年7-9月期には8兆円まで減少した。そして完全失業率は昨年12月から11月までに0.3ポイント(4.3%→4.0%)、有効求人倍率は同じ期間に0.17ポイント(0.83倍→1.00倍)回復しており、マクロでみた雇用も改善が進んだ。企業利益も輸出企業を中心に大幅に改善している。


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この記事にもあるように、今年、2013年は大幅に株高と円安が大きく進み、実質成長率も上昇、デフレギャップも縮小し、景気回復が鮮明になりました。それに伴い雇用状況も改善しています。安倍政権と黒田日銀執行部によるリフレ政策の結果であることは、もはや明白でしょう。
2013年はリフレ政策が実施されて、それが大きな成果を上げた年であったと言えるでしょう。まさに今年は「リフレの年」でした。
正直言って、これほど早く景気が改善するとは僕も予想していませんでした。インフレ期待が景気に与える影響は、長年リフレ政策を支持してきた僕の予想も超える素晴らしいものであったと言えます。
その一方で、リフレ政策反対派が懸念していた長期金利暴騰やハイパーインフレは、その兆しすら見えません。少なくとも「インフレ誘導政策」はコントロール不可能な事態になるという主張は、現実によって否定されたと思います。

しかし、同時に消費税増税が決定され、来年4月からは8%に上がることが確定してしまいました。再来年10月に予定されている10%への再増税も阻止できるかは分かりません。
従って来年はリフレ政策による景気回復効果と、消費税増税による景気落ち込み効果がせめぎ合い、どちらが勝つか分からない状況です。
2014年の日本経済の最大の懸念点が消費税増税であることは間違いないでしょう。


また、ちょうど1年前の大晦日、僕はこんな記事を書きました。

このように振り返ってみると、リベラル左派政権だったはずの民主党政権は、結局リフレ政策に否定的で、消費税増税を進めて、リーマンショック以降の日本経済を衰退させてしまいました。一方で、自民党の中でも右派と言われる安倍氏は、リフレ政策を推進し、消費税増税にも慎重です。
しかし考えてみれば、リフレ政策そのものは需要管理政策ですから、本来はリベラルな政策だと言えるでしょう。アメリカでも、この政策を理論づけたポール・クルーグマン教授は、リベラル派の代表的な学者です。
ところが日本では、リベラルな政策のはずであるリフレ政策や公共事業を右派が推進するという、ねじれた構図になっています。
なぜこうなってしまったかと言うと、日本ではリベラル・左派の経済学に対する無理解があまりにも酷く、その影響を受けていた民主党の議員達が、財務省や日銀の説明をあっさりと受け入れてしまったのでしょう。id:finalventさんが今日のブログで日本のリベラルや知識人を批判していましたが、僕もそれに同感します。


(中略)


一方、右派は中国や韓国の台頭に対する危機感もあって、日本経済の立て直しを本気で考えざるを得なくなり、リフレに好意的になってきたのだと思います。安倍総理自身は前回の政権の頃から、高橋洋一氏を起用するなどリフレに近い立場でしたが、最近はそれが右派に広く広がってきたように思います。

安倍政権のような右派政権は、生活保護などの社会保障削減や、教育政策にトンデモな考え方が入り込む、マンガやアニメなどの表現規制が強まるのではないかという懸念もあるので、一概に歓迎ばかりもできないのですが、ここまでリベラル・左派の経済音痴が酷いと、他に選択肢がなくなってしまいます。
今年の民主党の迷走と崩壊は、そのことをはっきりさせてしまったのだと思います。


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参院選自民党が大勝し、ねじれ現象が解消した後の政治は、まさにこの言葉通りになっていると思います。特定秘密保護法案や靖国参拝を巡っては左派・リベラル派を中心に批判の声が上がりましたが、リフレ政策で景気を回復させた安倍政権への支持は根強く、彼らの反対は無力でした。内閣支持率も概ね50%程度を維持しています。経済政策を軽視し、経済成長や金融政策を敵視すらしてきた左派・リベラル派や民主党は、すでに政治的な選択肢から外れてしまっているのでしょう。
もちろん、このように選択肢が1つしかないという状況は好ましくないですが、それを脱却するためにはまず民主党がリフレ政策を受け入れて、景気回復を止めないことをはっきりさせる必要があるでしょう。そうしないと、民主党や左派・リベラル派が求める、社会保障の充実や中国・韓国との緊張緩和も実現できないでしょう。


繰り返しますが、2013年はリフレ政策が大きな成功を収めた年でした。それはマクロ経済学の知見に基づく経済政策が正しいことが実証されたということでもあります。
そのような政策を理解して推進したのが右派の安倍政権であったため、衆参両院で多数を得た安倍政権によって、経済政策以外の分野では右寄りの政策が進むことになりました。もしリフレ政策を実施したのが民主党政権であったなら、経済政策以外でも多くの分野で左寄りの政策が進むことになったでしょう。

安倍政権はこの成功に奢らず、今後も日本経済の再建を最重要課題として欲しいと思います。中国の軍事的膨張が進んでいるので防衛力の強化は必要だと思いますが、貧困層を増やしたり人権を制限したり、日本を国際的孤立に追い込むような政策は止めて欲しいものです。
一方、民主党や左派・リベラル派には、自らの経済音痴を反省して、マクロ経済学の知見に基づいた政策を取り入れて欲しいと思います。そうすれば彼らも再び政治的選択肢として復活するでしょう。


来年は消費税増税などの不安要因もありますが、日本経済がそれに負けずに力強く復活することを願います。