Baatarismの溜息通信

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なぜ韓国はリフレ政策を採用しないのか

黒田日銀が「異次元緩和」「黒田バズーカ」などと呼ばれるリフレ政策を採用し(インフレ目標の達成は消費税増税のために遅れてしまいましたが)、ECBも大規模な金融緩和を発表するなど、今やリフレ政策は世界の主要国に広がりつつあります。
しかし、そんな中でもリフレ政策を採用せずに、白川日銀、民主党政権までの日本のように効果の薄い為替介入を繰り返しているのが、お隣の韓国です。そこでなぜ韓国はリフレ政策を採用しないのか考えてみます。

 米財務省が韓国の不透明な為替介入を世界に暴露した。輸出の不振で経済が低迷するなか、ウォン高阻止のため、先進国はもちろん新興国でもやらないような巨額介入を秘密裏に行ったと指摘、朴槿恵(パク・クネ)政権による対日本円でのウォン高対策も批判した。日本の円安が容認される一方、為替介入で悪名高い中国よりも強いトーンで指弾されるなどさらし者になった韓国では、アジアインフラ投資銀行(AIIB)をめぐる米国の意趣返し、との陰謀論まで出るなど動揺を隠せない。

 報告書は米財務省が議会向けに半年に一度提出しているもので、各国の経済状況や為替政策について言及している。

 これまでの報告書で毎回やり玉に上がるのは中国だ。今回も、制裁の対象となる「為替操作国」への認定こそ見送ったが、人民元が「著しく過小評価されている」との見解を維持した。

 ただ今回の報告書で中国よりも厳しく批判されたのは韓国だ。韓国に関する項目では、「韓国は公式には市場で為替レートを決めている」「2013年2月には他のG20(20カ国・地域)諸国と同様に、為替レートをターゲットとした意図的な通貨切り下げ競争はしないことを約束した」と前置きしたうえで、実際には韓国当局がウォン高を阻止する形で為替介入を行っていると指摘した。

 「他の大半の主要な新興国市場や先進国経済と異なり、韓国は為替介入について公式な報告を行っていない」と厳しい表現で隠蔽体質を批判。14年夏に大規模な介入を実施、同年8月から11月までは小康状態だったが、ウォン高圧力が強まった12月から今年1月にかけて再び介入規模が拡大したと分析した。

 1ドル=1000ウォン突破に近づくと介入するという傾向も指摘、今回の報告書では月ごとの介入額を推定したグラフまで作成する念の入れようで、韓国のやり口が腹に据えかねている様子がうかがえる。

 対ドルだけでなく、対日本円でも、朴政権の当局者が昨年11月、ウォンを安くするよう意図したことも明記するなど批判は詳細かつ具体的で、ウォン安維持のための介入をやめるよう徹底した要求を行った。


米財務省、韓国の不透明な“為替介入”を猛批判 “手口”まで世界に暴露 (1/3ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK 米財務省、韓国の不透明な“為替介入”を猛批判 “手口”まで世界に暴露 (1/3ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK 米財務省、韓国の不透明な“為替介入”を猛批判 “手口”まで世界に暴露 (1/3ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK

 韓国の経済・通貨外交の行き詰まりを映すように、ウォンに上昇圧力がかかってきた。ウォン売りの覆面介入に対し、米財務省のいら立ちは募るばかり。日本としても隣国の苦境は他山の石としたい。

 「7年2カ月ぶりの100円=900ウォン突破」。4月23日の韓国メディアは対円でのウォン高進行に大騒ぎとなった。日本の民主党政権時代の2012年6月には100円=1500ウォン台の円高・ウォン安だったから、7割近くウォン高になった勘定である。
 これに対し韓国政府・企画財政部は23日、「円・ウォン為替レート900ウォン台崩壊」は事実ではないと説明した。韓国紙「中央日報(電子版)」はそう伝える。裁定相場の計算違いというのだが、「崩壊」などと大仰な言葉を用いるあたり、直近のウォン高に神経をとがらせている様子がうかがえる。

 そもそも直近のウォン高のきっかけは、米財務省が4月9日に発表した「為替問題議会報告」だ。年2回の報告は韓国の為替政策に対する批判を強めてきたが、今回は為替介入によるウォン安誘導への非難を一層強めた。

 「競争的な通貨安政策をとらず、為替相場を競争力強化の道具にしない」。13年2月の20カ国・地域(G20)財務相中央銀行総裁会議でうたったこの約束を、韓国も受け入れたはずである。それなのに、ウォン高を防止するための介入を、韓国はその後も繰り返している。

 為替報告はウォンと円の関係にも言及している。韓国当局は昨年11月にウォン安誘導の意図を宣言。実際の相場も100円=940〜950ウォンの狭い範囲に押し込めてきた、というのだ。

 米財務省が腹を立てているのは、韓国が依然として介入の情報を開示せず、事実上の為替操作をしている点だ。しかも国際通貨基金IMF)による14年7月時点の評価では、ウォン相場は依然として割安なのだ。
 先進国になったのなら、もっと政策運営の透明性を高めるべきだ、というのが米国の言い分。残念ながら、韓国はその辺の雰囲気が読めないようだ。為替報告の発表後も、介入継続の方針を示している。


韓国ウォンを呪縛する通貨外交のつまずき :日本経済新聞 韓国ウォンを呪縛する通貨外交のつまずき :日本経済新聞 韓国ウォンを呪縛する通貨外交のつまずき :日本経済新聞

 ウォン相場の上昇基調が続いている。輸出への依存度が高い韓国にとっては負の影響の方が多いとの見方が一般的で、通貨当局は断続的に市場介入をしているようだ。ウォンの取引は韓国内に限定されており規模も小さいため、介入は相場に大きな影響を与えることがあるが、今回の局面では威力を発揮できていないのはなぜなのか。

 「ウォンの実質実効相場は低評価区間にあったがいまや高評価区間に入った。主要交易相手国である中国と日本の緩和基調が続く場合、我が国の対外競争力が低下する可能性がある」
 韓国銀行(中央銀行)が公表した議事録によると、3月12日に開いた金融通貨委員会である委員はこんな見解を述べた。このとき同委員会は政策金利を年1.75%と史上最低水準への引き下げを決めている。ウォン高警戒一色というわけではないが、為替は重要な検討テーマの一つになっていたことがわかる。

 実質実効相場はウォンとドルなど特定の通貨ペアだけでなく、様々な通貨に対する相場を貿易額に比例するように組み合わせて計算したものだ。物価も勘案しており、貿易上の対外競争力を示す。国際決済銀行(BIS)によるとウォンの実質実効相場は2月時点で113.44。1月よりはやや低下したが、中期でみれば7年ぶりの高値圏だ。
 「最近も通貨当局は市場でウォン売り介入をしている」。韓国のある国内銀行関係者は証言する。それにもかかわらずウォン高が止まらないのは、ウォン相場が交換相手の通貨ごとに異なった動きをしているからだ。

 年内の利上げが取り沙汰されるドルに対してはウォンは下落している。韓国銀行によると3月の平均は1ドル=1112ウォン。半年前に比べ7%低い。一方で、円やユーロに対しては上昇が続いている。日銀や欧州中銀は量的緩和政策を継続しており、ウォン以上に対ドルで下落している。


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韓国、市場介入でも止まらぬウォン高 :日本経済新聞 韓国、市場介入でも止まらぬウォン高 :日本経済新聞 韓国、市場介入でも止まらぬウォン高 :日本経済新聞


このように、韓国は米国から激しく批判されながらも、ウォン売りドル買いの為替介入を行ってウォン高を阻止しようとしていますが、その結果対ドルレートは下がっても、それ以外の通貨も含めたウォンの価値を示す実質実効相場(実質実効為替レート)はウォン高のままです。これでは国際的な批判を受けるだけで、ウォン高阻止には何の効果もありません。

かつては日本もこのような為替介入を行って米国から批判されてましたが、アベノミクス以降は金融緩和により円安が進み、国際的にもその行動は容認されています。従って、韓国も為替介入ではなく、金融緩和をすれば良いように思えます。

しかも韓国はインフレ目標(韓国は3%)を達成できず、インフレ率は大きく目標を下回っています。普通に考えれば、高橋洋一氏が指摘するように日本と同様の大規模金融緩和を行うべき状況でしょう。

ウォン円レートは、日韓のマネタリーベースでかなり説明できるので、アベノミクスで韓国経済が相対的に日本経済に後れをとっているのは明らかだ。


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2年前から、アベノミクスのよる金融緩和の影響について、韓国はかなり真剣に考えていた。筆者に対して、韓国のメディアは日本のメディアより、しばしば取材にきていた。実は、韓国大使館やその関係者からも今後の見通しを聞かれた。その際、韓国はどうしたらいいのかとも聞かれたので、日本と同じ金融緩和すればいい、韓国はインフレ目標なので、日本と同じ金融緩和すればいいといった。ところが、筆者の相手の韓国人はどうも歯切れが悪かった。

実際、韓国のインフレ目標は、2013年から15年まで2.5〜3.5%である。ところが、2012年6月以降、この目標はまったく達成されていない。2015年2月のインフレ率は0.5%であり、このままでは目標期間で一度も目標達成していないということになりそうだ。つまり、この間、金融緩和が不十分だったのだ。利下げをしているが、そもそも為替が安くならないように、つまり経済効果があまりでない範囲での、言い訳程度の利下げしかしていないわけだ。


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シャープへの金融支援は功を奏するかもしれない。その理由を示そう  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] シャープへの金融支援は功を奏するかもしれない。その理由を示そう  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] シャープへの金融支援は功を奏するかもしれない。その理由を示そう  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社]



また、韓国国内でも、今の韓国経済がかつての日本のような「氷河期」「失われた20年」だという、深刻な記事が出ています。

 韓国メディアのアジア経済は20日、「日本に似ていく韓国」というタイトルで記事を掲載し、現在の韓国経済は「少消費病」であると同時に「春來不似春」(春がきたが、春らしくないという意)だと紹介した。
 記事は、現在の韓国経済は「氷河期」であり回復の兆しが見えないと指摘。「低金利・低物価・低成長基調は“日本の失われた20年"を踏襲しているようだ」と報じた。
 また、現在「日本の失われた20年」と類似していると言われている韓国経済は、韓国史上初となる国内基準金利1%時代が到来し、消費者の財布の紐も緩まないと指摘。さらには、消費者物価上昇率までも0%台にとどまっており、OECD(経済協力開発機構)の調査において、韓国の2014年の消費者物価上昇率は「1.3%」で、41年ぶりに日本の2.7%」よりも低く、OECD(経済協力開発機構)の2014年の平均値である1.7%にも及ばなかったと報じた。
 また記事では、この現在の韓国経済の姿は、日本が不況に入り始めた時期と酷似していると指摘。実際、「韓国の実質金利(名目金利物価上昇率)が2008年の金融危機以降、最高値となる現象が現れている」と論じた。
 続けて記事は、現在の韓国の消費パターンも1990年代の日本と類似点が多いと分析した。バブル崩壊直後の日本の20年間は、消費者が「低価格製品を好み、自社ブランド商品やアウトレット・食べ物のバイキングや超低価海外ツアー」など人気を集めた一方、日本のデパート業界では内需低迷により売上の伸び率がGDPの伸び率を大幅に下回ったと指摘。これは、現在の韓国流通産業も似ていると論じた。


韓国経済は「氷河期」・・・かつての日本のように=韓国メディア<サーチナ・モバイル> 韓国経済は「氷河期」・・・かつての日本のように=韓国メディア<サーチナ・モバイル> 韓国経済は「氷河期」・・・かつての日本のように=韓国メディア<サーチナ・モバイル>


それにも関わらず韓国が不十分な金融緩和しかしていない理由として、高橋氏は韓国の対外債務は短期ものが多く、ウォンが安くなると外資は韓国から引き揚げやすいからだと言っています。つまりウォン安がキャピタルフライトを招きかねない状況だということです。

その理由は、韓国では思い切った金融緩和ができにくい事情があるのだ。韓国の対外債務は短期ものが多く、韓国ウォンが安くなると外資は韓国から引き揚げやすいからだ。ちなみに、日本は対外資産が対外債務よりかなり大きくGDP比でみて6割程度の純債権国であるが、韓国は5%程度の純債権国にすぎない。


シャープへの金融支援は功を奏するかもしれない。その理由を示そう  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] シャープへの金融支援は功を奏するかもしれない。その理由を示そう  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] シャープへの金融支援は功を奏するかもしれない。その理由を示そう  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社]

これについては、東京三菱UFJ銀行系のシンクタンクである国際通貨研究所でもレポートが出ています。このレポートは、韓国と中国や東南アジア諸国の対外純資産ポジションを比較しているのですが、韓国は「足の遅い」海外からの直接投資が少なく、「足の速い」(経営権取得目的でない)株式・債権の投資や銀行からの借り入れが多いことが分かります。

対外純資産からみた韓国ウォンの脆弱性 - 国際通貨研究所 対外純資産からみた韓国ウォンの脆弱性 - 国際通貨研究所 対外純資産からみた韓国ウォンの脆弱性 - 国際通貨研究所


ただ、このような議論についてはやや疑問も感じます。なぜなら、かつてアジア通貨危機の時、韓国はウォンへの通貨アタックを招いたドルへの通貨ペッグ制(固定相場)を放棄し、それに替わる通貨安定策としてインフレ目標を採用した経緯があるからです。なのに、インフレ率が目標を大きく下回っているのに十分な金融緩和を行わず、キャピタルフライトを恐れて対ドルレートの維持を最優先とするのは、まるで通貨ペッグ制への回帰のように見えるからです。それが不可能であるというのが、アジア通貨危機で得られた教訓ではなかったのでしょうか。


この疑問を解く鍵は、アジア通貨危機への対策として作られた日韓通貨スワップ協定が、韓国の反日政策によって崩壊したことにあると思います。アジア通貨危機のあと、日中韓ASEAN諸国は、チェンマイ・イニシアティブという相互通貨スワップ協定を策定しました。それに加えて、日韓は独自に通貨スワップ協定を行い、最も多かった2011年には合計700億ドルに達しました。
しかし、2012年の李明博韓国大統領の竹島(独島)上陸、今上天皇への謝罪要求などをきっかけに、日韓の通貨スワップ協定は次々に廃止され、2015年2月には全て終了しました。これによって韓国の通貨スワップの主要な相手国は中国となり、通貨危機の際、西側諸国が韓国を支える仕組みは失われました。

この日韓通貨スワップ廃止について、日経新聞編集委員で韓国に詳しいジャーナリストの鈴置高史氏と、真田幸光・愛知淑徳大学教授の対談で面白い記事がありました。アジア通貨危機の際、日本は最後まで韓国を助けようとしましたが、IMF救済を主張するアメリカの圧力に屈し、救済を断念しました。それにもかかわらず韓国では日本が通貨危機の原因だという主張が出てきたため、「恩を仇で返された」という不信が日本に広がり、韓国を助けようという動きがなくなっていったというのです。

−今後、韓国が金融面で困った時に日本は助けないのですか?

真田:容易には助けないと思います。日本の金融界には「恩を仇で返された」との思いが強いからです。韓国人は、あるいは韓国メディアは「1997年の通貨危機は日本のために起きた」と主張します。
 でも、それは全くの誤りです。あの時は、欧米の金融機関が韓国から撤収する中、最後まで邦銀がドルを貸し続けたのです。韓国の歴史認識は完全に誤っています。

鈴置:当時、真田先生は東京三菱銀行で韓国を担当しておられました。私も日経新聞のデスクとしてアジアをカバーしていました。
 あの頃は、韓国人の中でも分かった人は「日本は最後まで面倒を見てくれた」と語っていました。1998年と思いますが、危機の原因を追及した韓国国会でも、それを前提にした質問があったそうです。
 でも今やそんなことを語る人はいない。韓国では日本が悪者でなければならないからです。当時をよく知るはずの記者も「日本の貸しはがしが危機の引き金となった」と書きます。

真田:米欧が貸しはがす中、我々は最後まで引かなかった。「日本が引き金になった」とは言いがかりも甚だしい。これだけは記録に留めていただきたい。邦銀の担当者は本店を説得し、欧米が逃げた後も最後まで韓国にドルをつないだのです。
 韓国が国際通貨基金IMF)に救済を申請した後でも、KDB韓国産業銀行)とIBK(中小企業銀行)へは日本輸出入銀行がドルを融資しました。我々、邦銀の韓国担当者が走り回った結果です。
 それなのに「我が国の通貨危機は日本が起こした」と世界で吹聴する韓国。そんな国を助ける気になるでしょうか?
 麻生太郎財務相が2014年10月に「韓国から申し出があれば、スワップの延長を検討する」と国会で答弁したのも、恩を仇で返す国への不信感が背景にあったと思います。


「人民元圏で生きる決意」を固めた韓国:日経ビジネスオンライン 「人民元圏で生きる決意」を固めた韓国:日経ビジネスオンライン 「人民元圏で生きる決意」を固めた韓国:日経ビジネスオンライン

また、韓国は米国に対しても、中国カードを使ったチキンゲームを行っており、そのことが米国とのすれ違いを招いているとも指摘しています。

真田:韓国は米国に対しては「中国カード」を使えると考えているフシがあります。いざという時は「中国に人民元スワップを発動してもらう」と言えば、米国がドルを貸してくれる、と計算していると思います。

鈴置:そこの、米韓の心理的なすれ違いに注目すべきですね。韓国は「中国側に行くぞ」と脅せば米国が言うことを聞くと考えている。なぜなら「米国は自分を手放せないはずだから」です。
 一方、米国は「そんなに中国が好きなら、そっちへ行け」と放り出せば、韓国は戻ってくると信じている。「韓国は自力で国を守れないから」です。
 先生が指摘されたMD、ことに終末高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)の韓国配備の問題でもそうですが、米韓はチキンゲームを始めています。
 中国の怒りを避けようと韓国は「配備計画など米国から聞かされていない」と言い張る。「THAADで追い詰められた韓国が中国側に行ったら大変」と米国が思うはず、と考えているからです。
 これに対し米国は「もう、韓国と相談を始めている」などと“勇み足の発言”をしては「米中どちらの味方なのか」はっきりするよう、韓国に迫っています。

真田:そこが分析のポイントです。ただ、米国のハラが読みづらい。韓国を脅せば戻ってくると計算しているのか、あるいは「戻ってくればよし、戻ってこなくてもよし」と達観しているのか――。
 レームダック化したこともあり、オバマ政権は朝鮮半島に関し思考停止した感があります。問題は肝心の、米国を本当に動かしている金融と軍事の2つのパワーセクターが、この半島をどうしようとしているのか、迷っているように見えることです。

鈴置:ことに米国の金融界がどう動くかが注目ですね。ウクライナ問題でもそうですが、最近の米国は軍事力での勝負を避け、金融力で相手を圧倒しようとします。
 そして仮に米国が「朝鮮半島を捨てる」時も、単に捨てるのではなく中国と交渉するための「カード」にするのだろうと思います。


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このように、日本も米国も、韓国経済を本気で助けようという意志はもうありません。また、中国についても、韓国が米国へのカードとして使っているのであれば、本気で中国に助けを求めるのは躊躇するでしょう。
ということは韓国が再び経済危機に陥ったとき、韓国が頼れる国はありません。日本も米国も(韓国がそれを嫌がっていることをわかっていながら)冷淡にIMF支援を要請するでしょうし、中国に頼った場合は、どんな交換条件を押しつけられるか分かったものではありません。韓国はこの点で完全に孤立していると言って良いでしょう。
韓国が自分でもそれを認識しているのであれば、何が何でも経済危機を避けようとして、少しでも経済危機に繋がる政策は避けようとするでしょう。日本の例を見ても、金融緩和は大幅な通貨安を伴いますから、韓国はそのようなウォン安が通貨危機を招くのではないかと恐れ、インフレ目標が有名無実になっても、国内がどれだけ不況になっても、金融緩和に踏み出せないのでしょう。
しかし一方で、ウォン高が進むと輸出依存度の高い韓国経済は大きなダメージを受けるので、何とか通貨介入でそれを防ごうとするのでしょう。その結果、皮肉なことに、韓国はアジア通貨危機以前に似た、事実上の通貨ペッグ制になりつつあります。
しかし、通貨ペッグ制は市場から足下を見られるため維持不可能というのが、多くの経済危機の歴史と経済理論(国際金融のトリレンマ)から得られた教訓です。
もしウォン高要因が大きくなれば、韓国はデフレに陥り、かつての日本のような長期不況に陥るでしょう。
逆にウォン安要因が大きくなれば、韓国は通貨アタックを受けて、金融危機に陥るでしょう。しかも韓国を救済する国は、下心を持った中国だけです。


結局、韓国が自分勝手な外交によって日本と米国の信頼を失ったことが、韓国がリフレ政策を採用できない理由だということになります。韓国はなんとも愚かなことをしたものだと思います。
これを解決するには、韓国がその夜郎自大な態度を改め、日米との和解を進めるしかないのでしょう。例え韓国がそれを、日米への屈服だと感じたとしても。