ギリシャ、人民元を通貨に採用
[北京 1日]中国を電撃訪問したギリシャのチプラス首相は習近平主席と会談し、ギリシャがユーロと平行して人民元を通貨として採用することで合意した。
会談後の記者会見で、チプラス首相は4月にも政府の資金が底を突く状況であり、そのための支援を中国に要請したことを明らかにした。会談の席で、中国がギリシャにEUやIMFへの返済資金を融資すると同時に、ギリシャが人民元を通貨に採用することでユーロ圏から段階的に離脱することを提案、EUとの交渉が行き詰まっていたギリシャ側もこれに応じて、人民元圏入りと中国からの援助で経済を再建する方針を決定した。
当面、緊急に必要となる支援は中国政府が行うが、AIIB(アジアインフラ投資銀行)の発足後は、AIIBが財政支援と経済再生のための融資を行う方針である。
また、中国はギリシャへの支援国として、ギリシャの債務軽減に協力する。ギリシャは第二次世界大戦中のナチスドイツによる被害に対する賠償金や、当時ナチスドイツからに強制された融資の返済をドイツに要求しているが、中国はギリシャの立場を支持し、ドイツに支払いを要求する方針である。
中国にとっては、ギリシャを人民元圏に加えることで、人民元を国際通貨にしようとする目標に近づくことになる。今後もギリシャのように経済危機になった国に対して人民元採用を提案する方針であり、ユーロ参加で苦境に陥っている南欧や東欧の諸国がギリシャに続いて人民元圏入りし、ユーロに匹敵する巨大通貨圏が誕生する可能性もある。
これに対して、3月にAIIB参加を決めたばかりのイギリス・フランス・ドイツなどは一斉に反発し、「AIIBはアジアのインフラ投資を行うための組織であり、アジアではないギリシャに、インフラ投資以外の融資を行うことは、設立の趣旨に反する」と批判している。
これらの批判の本当の理由は、AIIBにはこれらのEU諸国も出資するが、その資金の一部がギリシャに回ることでEUはギリシャに圧力を加えることができず、要求してきた緊縮政策が行われない結果となるためである。さらに欧州に人民元採用国が増えることは、EUにとって悪夢でしかない。特にドイツは、第二次世界大戦時の賠償問題を取り上げられることも懸念している。
しかしAIIBには常設の理事会が置かれないため、中国人の総裁の決定に対して出資国が意見を言う機会は限られており、AIIBがギリシャに融資しても、EU諸国がそれを止めることは事実上不可能である。「バスに乗り遅れるな」とばかりに、中国からの商業的利益だけを考えて拙速にAIIB参加を決めたEU諸国は、今回の合意によって手痛い打撃を受けることになる。
この決定に対して米国政府は「EUとの交渉が行き詰まり、ギリシャ財政の破綻が目前に迫っている状況では、中国がギリシャを支援することを容認せざるを得ない。その結果EUが不利益を受けることになっても、それは米国とは関係が無いことである。」と突き放したコメントをした。
この決定について経済学者のポール・クルーグマン教授は、「最適通貨圏を超えて拡大してしまったユーロは、やがて崩壊する運命だった。その運命をもたらしたのが中国だったにすぎない。しかし中国が作ろうとしている「人民元圏」も、最適通貨圏の理論に反している。だからいずれ「人民元圏」も崩壊するだろう。こんな経済圏に参加するの愚か者だけだ」と皮肉に満ちたコメントをした。
ギリシャ、人民元を通貨に採用 - フィナンシニカル・タイムズ
3月になって英国を皮切りに世界中の国がAIIBに参加し、米国と日本は孤立しているという意見もありました。しかし主要国が参加を決めた途端に、中国がこのような一方的な決定を行うとは驚きました。AIIBのガバナンスに対する米国や日本の懸念が、早速裏付けられた形です。
AIIBがギリシャ支援を行うことは「アジアインフラ投資銀行」という名前には反しますが、中国がAIIBを設立する本当の理由が、米国が中心となって設立されたIMFや世界銀行への対抗であることは明らかですから、この名前自体が単なる名目に過ぎなかったことになります。
IMFやEUが失敗しているギリシャ支援に中国が成功すれば、米国中心の経済体制は正当性を失い、計り知れない打撃を受けるでしょう。
しかしギリシャへの支援そのものは、ギリシャ危機を沈静化させて世界経済の安定に貢献することも事実です。欧州がこの問題を解決出来ない中、渦中の栗を拾って支援を打ち出した中国の決定は高く評価すべきだと思います。その裏に通貨覇権への野望があったとしても、中国の支援で多くのギリシャ国民が救われることは間違いないのですから。
北方領土、独立を宣言
[クリリスク*1 1日]本日、択捉島、国後島、色丹島、歯舞諸島から成る南クリル諸島は、「南クリル共和国」として独立を宣言した。同時に大統領選が行われ、初代大統領に南クリル友愛党のゴールーピー氏が就任した。首都は択捉島のクリリスクに置かれる。
南クリル諸島は1945年にソ連によって日本から解放された地域であるが、今でも日本は「北方領土」と称して領有権を主張している。この状況に心を痛めたゴールーピー氏は南クリル友愛党を結成し、プーチン大統領との交渉の結果、独立を認められた。
南クリルの人々の総意によって独立が達成されたことで、日本の領有権主張は根拠を失うことになる。ゴールーピー大統領は日本に対し、独立の承認と国交樹立を呼びかける声明を発表した。
この声明に対して日本のハトヤ元首相は、「南クリルの人々の総意によって民主的に独立が決定され、ロシアが独立を承認したことで、北方領土問題解決への道が開かれた。日本政府も南クリル共和国の独立を承認し、北方領土問題を解決させるべきである。必要ならば私自身が政府特使として南クリル共和個を訪問し、外交交渉に当たりたいと思う。また個人的にも南クリル共和国との民間交流を活発に行い、南クリルを平和の島、平和の海とすることに貢献したい」と、歓迎のコメントを述べた。
南クリル、独立を宣言 - オソ・ロシアの声
この「南クリル共和国」というのは、併合前のクリミアやウクライナ東部のドネツク、ルガンスクの「共和国」、モルドバの沿ドニエストル、グルジアの南オセチアやアブハジアと同じく、ロシアの影響力の元に作られた「国家」だと思われます。ロシアはこれまで紛争状態にある他国の領土の一部を「独立」させるという方法を取っていましたが、今回は自国が支配している地域を「独立」させることで、ロシア影響下の国家として国際的に認めさせようという、新たな外交的方法を採用しました。
もちろん日本政府がこの「国家」を認めることはありませんが、中国など日本と対立している国がこの「南クリル共和国」を認めると、外交的に難しい状況になります。またこの記事の元首相のように、日本国内でも「南クリル共和国」の承認を求める勢力は出てくるでしょう。
今回の「独立」はロシアが打った外交的奇手ですが、日本としては対応が難しい状況に追い込まれたと思います。