Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

日経新聞「ドキュメント日銀−攻防 量的緩和解除」

今回の量的緩和解除で僕が一番疑問に思ったのは、すでに4月量的緩和解除で政府や市場の認識が一致しつつあったのに、何故3月に前倒ししたのかということです。
その疑問の手がかりになりそうな記事が、今日(3/12)の日経新聞の3面にある「ドキュメント日銀−攻防 量的緩和解除(中)」の中にありました。

(福井日銀総裁の)脳裏にはゼロ金利解除を巡る前総裁、速水優の苦い経験があった。二〇〇〇年春から解除を探ったが、当時の蔵相、宮沢喜一の反対で決断を先送りした。八月にようやく解除したものの、直後に米国のITバブルが崩壊。「解除は失敗」と言われ、翌〇一年春にゼロ金利復活と量的緩和導入を余儀なくされた。「同じ失敗を繰り返したくない」が日銀の共通認識だった。

つまり、日銀としては早く量的緩和解除やゼロ金利解除を行わないと、次の景気後退と時期が重なってしまい、また日銀の政策が不況を招いたと言われかねないので、量的緩和解除やゼロ金利解除を急ぎたいということのようです。
僕がゼロ金利解除失敗から得た教訓は「デフレ下で利上げするな」ということなのですが、日銀が得た教訓はそうではなく、「利上げしたいなら誰がなんと言おうと無視して利上げしろ」ということのようです。
だから、日銀は強引に量的緩和解除を早めたのだと思います。そしてここから予想されるのは、日銀は日銀当座預金残高の削減が終了して利上げの準備ができ次第、誰が何と言おうと利上げを行うということです。


ただ、この考えには、日銀の利上げが景気後退やインフレ率減少を招くという、金融政策の基本的な考え方が抜け落ちているように思います。米国のITバブル崩壊があったとはいえ、ゼロ金利解除後に消費者物価が1%近く落ち込み、深刻なデフレ不況に陥った主原因は、明らかに日銀のゼロ金利解除=利上げでしょう。


このように市場や政府の声も聞かず、自らの政策失敗の責任も認めず、金融政策の基本的な考え方すらねじ曲げる日銀は、中央銀行と呼ぶにふさわしい存在でしょうか?
韓流好きなリフレ派さん(田中秀臣さん)が日銀を揶揄して「厨銀」と言っていますが、もし僕の予想が当たり、日銀が市場や政府の声を無視して強引に利上げを行うのであれば、僕ももうあの銀行を「中銀」と呼びたくはないですね。
また、bewaadさんは「日銀は存在自体が日本経済にとって害悪ですねぇ、まったく。」と言っていますが、日銀が強引に利上げを行うのであれば、やはり僕もその言葉に同意したいと思います。