Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

拉致問題の「解決」はあり得るのか?

どうも以前から、拉致問題については日本側が何をもって「拉致問題解決」と見なすのかがはっきりしていない印象と持っていました。ちょうど「forrestalの回顧録」さんが拉致問題を取り上げていたので、コメント欄にそんな意見を書き込んだところ、雪斎さんからコメントを頂きました。

拉致問題ですが、日本側が何をもって「拉致問題解決」と見なすのかがはっきりしていない印象があるんですよね。
もちろん交渉事だから、日本側が最初からそれを明かす必要はないのでしょうが、少なくとも政府内部で達成目標をはっきりさせておかないと、拉致問題は永遠の問題となりかねないと思います。


投稿 Baatarism | 2007/03/09 10:32:53


 日本政府における「解決」の定義は、
 ① 被害者の帰国
 ② 真相の究明
 ③ 実行犯の身柄引き渡し
 です。客観的に③は無理だとと思います。日本では、この案件は、「犯罪」処罰と同じように考えられていることが問題だと思います。北朝鮮は、朝鮮戦争以来、戦時が継続している国家ですから…。


投稿 雪斎 | 2007/03/10 3:58:45

日朝関係の今後: forrestalの回顧録


確かに政府の定義は雪斎さんのおっしゃる通りなのでしょうが、①の定義を実現するためには、まず被害者の生死をはっきりさせなければなりません。もし被害者が全員生きているのならば、北朝鮮にそれを認めさせれば良いのでしょうが、一人でも亡くなっている場合、北朝鮮がそれを表明しても、日本側は素直に信じられないため、議論が全く前に進まなくなるでしょう。
そうなると②の真相の究明が重要になってくるわけですが、この点で日本側が守らなければならない条件は、「もし被害者の死亡が明らかになっても、被害者家族がそれを受け入れられるだけの信頼性がある調査の実施」となると思います。ただ、現在の北朝鮮は信頼性が非常に低いですから、北朝鮮側だけの調査ではその条件を満たすことが出来ず、日本側が北朝鮮国内で自由に調査を行い、北朝鮮側が全面的にそれに協力するようにしないと、日本側は受け入れられないでしょう。ただ、そのような調査を北朝鮮側が認めるとは思えません。


そうなると、日本側としては、あくまでもそのような調査の実施を求めて北朝鮮と対立するか、それとも北朝鮮側がごまかす余地のある調査にとどめて政治的決着を図るか、の二者択一となるでしょう。
もし前者を選べば、仮に米朝国交正常化が実現しても日本は北朝鮮と敵対することになります。となると、「テポドンの唯一の標的は日本」という事態を招き、日本は北朝鮮を仮想敵国とする覚悟を固めなければなりません。
また後者を選べば、拉致問題は決着したということになるので、北朝鮮に有利な形で日朝国交正常化が実現し、日本は今の韓国のように北朝鮮にたかられ続けるでしょう。


何だか進むも地獄、引くも地獄といった状況に思えるのですが、今の日本政府にそこまでの覚悟があるのか、どうしても疑問に思ってしまうのです。まあ、政府はどっちも嫌なので時間を引き延ばしているのかもしれませんが、それもいつまでできるんでしょうか?