Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

偽史としての慰安婦問題

慰安婦問題を考えていると、どんどん鬱になってきます。かみぽこさんのところで英米マスコミの論説が紹介されていますが、「従軍慰安婦=性奴隷」という説がすっかり世界の常識になってしまっています。



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もし慰安婦が実質的に性奴隷であったのならば、慰安婦制度は東京裁判で取り上げられ、責任者は戦犯として処罰されていたでしょう。当時、慰安婦制度は機密事項ではなかったわけですし、日本軍による証拠隠滅があったとしても、連合軍が調査すれば十分な証拠は得られたはずですから。
しかし、従軍慰安婦問題が取り上げられたのは1970年代以降であり、それ以前は問題視されていませんでした。東京裁判でも戦争犯罪とはなっていません。
英米のマスコミですらそんなことも指摘できないほど、「従軍慰安婦=性奴隷」というステレオタイプは世界を覆ってしまっています。


さて話を変えますが、最近、日韓関係に関する偽史を取り上げた、『韓vs日「偽史ワールド」 』という本が出版されました。この本はなかなか面白い本で、「写楽は朝鮮王朝のスパイだった」「中国大陸、朝鮮半島、日本列島に跨る大百済帝国が存在した」といったとんでもない偽史から、実在の人物にいつの間にか史実にない話が加えられて、それら全てがあたかも真実のように語られている例まで、いろんな例が紹介されています。


韓vs日「偽史ワールド」

韓vs日「偽史ワールド」


そして、この本に紹介されている多くの例で、歴史文献のうち都合の良いところだけを取り上げて偽史が作られたり、日本側と韓国側がそれぞれの思惑でいいかげんな話や説を付け加えているうちに、その話がいつの間にかとんでもない偽史に育ってしまい、当初の思惑を越えた役割を果たしてしまうという現象が起こっています。そして、いったん偽史を信じてしまうと、それはあまりに自分にとって都合の良いものであるため、それに反する資料や学説は全て嘘に見えてしまい、そこから容易に抜け出せなくなってしまいます。この本に紹介されている例の中には、日本軍が朝鮮統治時代に隠した財宝の存在を信じ込んで、莫大な資金を投入して発掘調査を続けている話もあるくらいです。


従軍慰安婦問題」の歴史を見ても、歴史文献のうち都合の良いところだけを取り上げた説がマスコミ報道や書籍で広められたり、根拠に乏しいいろんな説が日本、韓国、中国、米国などで作られてその間を行き来しているうちに、人々の同情を引く「従軍慰安婦=性奴隷」説として育っていったように思います。従って「従軍慰安婦=性奴隷」説は典型的な偽史、それも世界で最も成功した偽史の一つと言って良いでしょう。


かつて、河野外相は慰安婦への謝罪をすることで問題を沈静化させようとして、却って問題を大きくしてしまいました。また、安倍首相は歴史的な事実を指摘しようとして、世界中の反発を買っています。このように日本の政治家が「従軍慰安婦=性奴隷」説を肯定しても否定しても、偽史を強化する材料にしかならないのも、この「従軍慰安婦=性奴隷」説がそれを信じる人にとっては極めて都合の良いものであり、容易にそこから抜け出せないからでしょう。


『韓vs日「偽史ワールド」 』によると、偽史の中には何百年もの歴史を持っているものも少なくありません。従って、「従軍慰安婦=性奴隷」説も今後長期間にわたって信じられ続けると思われます。もちろん、日本人としてはこの偽史を否定する努力を続けるべきでしょうが、同時にこの偽史が長期間にわたって世界に存在するであろう事を覚悟しなければならないと思います。


ホント、鬱になる話ですけどね。w

3/14追記

コメント欄でのid:Apemanさんからの指摘を受けて、東京裁判関連の記述を削除することにしました。ご指摘、ありがとうございます。