Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

借金のタンゴw

米国のクレジットカードの話: 極東ブログ

自己裁量と私の能力:支払い慣行のお話 - セカンド・カップ はてな店


id:finalventさんとid:Soredaさんが、アメリカやカナダでのクレジットカード事情について、興味深い話をしています。内容を自分なりにまとめてみると、こんなシステムのようです。

  • アメリカやカナダではクレジットカードは自動引き落としてはなく、カード利用者が自分で手形を切って決済を行う。
  • アメリカでクレジットカードを利用するときは、クレジットヒストリと呼ばれる借金歴が重要視される。日本みたいに「定職に就いてなければカードを作れない」なんてことはないが、過去にカードを利用していない人はクレジットヒストリがないので、カードを作りにくい。(「限度額相応の現金を預託しておいてカードを作る」という手はある)
  • 利用した金額すべてを一度に支払う必要はなく、カード会社が決めたミニマムの支払額さえ支払っておけば問題はなく、クレジットヒストリにも傷は付かない。ただし支払わなかった額については当然金利が付く。


日本では借金が罪悪視されているため、借りた方はできるだけ早く全額返済すべきだし、貸した方は全額取り立てるべきであるという発想になりがちだと思うのですが、アメリカやカナダでは、金利を払っている限りはいつまでも借金していて何ら問題はないという発想のようです。むしろ、金利をきちんと支払う債務者は資金の運用先としてありがたい存在なのでしょう。


でも経済学的に考えてみれば、借金というのは単なるマイナスの貯蓄でしかありません。市場で決まった金利をきちんと支払っている限り、そこに倫理的な善悪を持ち込む必要はないはずです。そう考えると、アメリカやカナダの発想の方が経済学的には正しいと思います。


ちょっと話は脱線しますが、月亭可朝「借金のタンゴ」という曲の中に、こんなフレーズがありました。

『借金と貯金はたいして変わりはない 借りているか貯めているかの違いだけ』

世間では単なるコミックソングとしてしか認識されていない曲ですが、この歌詞は経済学の核心を突いていると思います。w


さて、アメリカは日本などの東アジア諸国に比べると貯蓄率が低く、その結果、東アジア諸国からアメリカに資金が流入し続けているわけですが、借金がマイナスの貯蓄であると考えると、アメリカは東アジア諸国よりも借金の割合が多いとも考えられます。そのような「借金大国」を支えているのは、借金を罪悪視しない文化に基づいたクレジットカードシステムなのかもしれません。
そして、アメリカが借金大国であることは膨大な国内需要を生んでいると考えられますから、世界経済を支えている柱の一つはアメリカの借金なのでしょう。「ブレトンウッズ体制2.0」はアメリカの借金があって初めて成り立つのかもしれませんね。w


いつまでも消費不足で悩んでいる日本も、この借金の効用に注目すべきでしょう。借金を罪悪視する風潮を変えるために、「借金のタンゴ」をテーマソングにして一大借金キャンペーンをしてみるというのはどうでしょうか?w