Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

中国の金融引き締めについて思うこと

 重慶市陵区にある香港の商社ノーブルグループの大豆破砕設備では、いつものように貨物船から大豆が積み下ろされている。食品や調理油に加工され、顧客企業に販売されるものだ。だが同社によると、最近、一部の顧客企業に異変が見られるという。銀行から資金を調達できなくなり、ノーブルグループに信用供与を求める企業が出てきたのだ。

 陵区で起きている異変は、多くの中国企業にとって運転資金の確保が大きな問題となり始めたことを示している。景気過熱を懸念する中国政府が銀行融資を厳しく管理しだしたためだ。

今年10回目の預金準備率引き上げ

 中国の中央銀行は12月8日、金融機関の預金準備率(預金総額のうち中央銀行に預け入れる額の比率)を1.0%引き上げ、14.5%にすると発表した。預金準備率の引き上げは今年10回目で、上げ幅は2003年以降最大。直近の金融引き締めは、投資ペースを減速させ、株式相場及び不動産価格の上昇抑制を図る相当厳しい対策となる。

 中国政府は今回、地元の銀行に加えて外資系銀行にも融資抑制を命じることで、その決意を明確に示した。その結果、借り手企業は取引先銀行から、来年まで新規融資を期待しないように言われ、既存の借入金の返済を迫られるケースも多発している。

 これに対し、企業は様々な対策を講じている。ノーブルグループの幹部らによると、同社は顧客企業の要請に応じ、ケース・バイ・ケースで与信を与えているという。当局が抜け穴を塞ごうとする中でイタチごっこが展開され、借り手企業や仲介業者が貸し手を見つけようと躍起になっている。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071212/143029/


中国が金融の引き締めを強めていて、そろそろ中国企業の運転資金にも影響が出だしているようです。
中国の中央政府にとっての悩みは、景気の過熱を押さえようとして様々な政策を打ち出しても、地方政府が面従腹背で「上に政策あれば下に対策あり」を実施して成長路線を続け、中央のコントロールが効かなくなっていることだと思うのですが、金融政策ならば地方政府の「対策」も限られているので、中央政府にとって金融の引き締めは効果的な手段なのでしょうね。

ただ、景気過熱を押さえるための引き締めならばまだ良いのですが、中央政府がバブルつぶしのために引き締め政策を使おうとすると、かつての日本のようなバブル崩壊→長期不況となりかねないと思います。特に中国のバブルが不動産中心のバブルになってしまうと、中国式の「住民追い出し→再開発」という「官製地上げ」で濡れ手に粟の、金持ちや高級幹部への反感と結びついて、バブルつぶしのための引き締めを求める声が強くなるのではないかという気がしますね。

12/15追加

2008年初めにも住宅ローン焦げ付きが急増か 〔2007年12月14日掲載〕


 2007年度はこれまでに5回にわたって利上げされ、住宅ローンを抱えている市民にとっては、手痛い出費となっている。中国の銀行各社も、住宅ローンに対するリスクに警戒しだしており、2008年初めにかけてローン支払い不能となる違約者が増加する予想も出ている。
 2004年に上海の中国系銀行が融資している住宅ローンのうち、焦げ付いたのは全体の1%前後だったが、2006年には8.6%にまで上昇した。さらに、毎月のように上海のCPI(消費者物価指数)があがっており、リスクが高まる要素が増えている。
 中国の大手銀行3社が抱える住宅ローンの焦げ付きは、2006年度で192.41億元と発表されている。

中国をもっと身近に!-エクスプロア中国トラベル

中国では住宅ローンの焦げ付きも増えているようです。
今世界中で問題となっているサブプライムローンや、昔のアメリカのS&L、日本の住専など、住宅ローンの過剰融資が焦げ付いて金融不安が発生した例は多いですが、中国でもそのようなことが起こるのかもしれませんね。
住宅ローンが変動金利ならば、CPI上昇だけでなく金利高も焦げ付きを増やすことになるので、金融引き締めと焦げ付きリスク増大の関係も気になります。