高齢者犯罪の急増
高齢者犯は急増、10年で3.6倍に
経済、株価、ビジネス、政治のニュース:日経電子版
高齢者の刑法犯検挙人員が昨年までの10年間で3.6倍に急増していることが13日、警察庁のまとめで分かった。今年1―11月の検挙人員も4万4928人で昨年同期を4.5%上回っており、万引きが半数を占めている。
同庁によると、65歳以上の高齢者の刑法犯の検挙人員は1997年に1万2818人だったが、昨年は4万6637人に上った。昨年の高齢者人口は、97年の1.3倍で、検挙人員の増加はこれを上回るペース。
警察庁のまとめによれば、高齢者の刑法犯検挙人員が昨年までの10年間で3.6倍に急増している――のだそうだ。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20071214AT1G1304Y13122007.html
おお、やはりそうだったか。膝を打ちましたよ。あまりにも個人的な印象と一致する話でしたから。
(中略)
が、続報は無い。新聞は、警察発表をリークしてそれでおしまい。どうやら、一歩踏み込んだ分析記事を提供しようという気持ちは持っていないようだ。週刊誌が後追い取材をしている気配もない。各局ワイドショーの新聞読み上げコーナーも知らん顔――つまり、彼らは黙殺しているわけだ。
お役人が酔っ払い運転をやらかしたとか、どこかの大学教授がセクハラで告発されたとか、少年犯罪の凶悪化が……みたいなお話については、番組付きのコメンテーターに手持ちの警鐘を乱打させながらの大報道を展開しているのに、高齢者犯罪はシカト、と。結局、テレビは、マジョリティのメディアで、要するに、主たる視聴者層である宅内老人の皆さんにアピールしないタイプのニュースについては、あんまり熱心に報道しない、と、そういうことなのか?
もっと深読みすれば、テレビをはじめとするマスメディアは、最大の顧客である団塊の世代に対して、これまで、数十年にわたって、一貫して媚びを売り続けてきたのである。*1小田嶋隆「大日本観察」(週刊ビジスタニュース)より - ラスカルの備忘録
メディアは、政治的に、弱者(と世間に認識されている人達)を批判することができない。また、社会の多数を占める「団塊の世代」を批判することは、市場が許さない。今後は、「団塊の世代」が退職し、高齢者の数はさらに大きくなる。「多数者の専政」のような事態が、さらに深刻化することが懸念される。これらを考えると、言論における政治性を弱め、科学的、あるいは学問的な見地に立った言論を尊重するような風土を、今から創り上げておくことが必要なのではないか。
とはいえ、科学的、あるいは学問的な議論をする上での前提となる社会的な価値ぎめをする際には、深刻な利害の対立が派生することも、あるとは思われる。
ラスカルさんが引用した小田嶋隆氏のコラムでは、マスコミが続報しないことを批判していますが、僕はむしろこれほどまでに高齢者犯罪が急増した理由の方が気になります。
引用されている日経の記事では、高齢者人口の増加がこの10年間で1.3倍なのに対して、検挙人員の増加は3.6倍なので、人口当たりの検挙人数の増加は2.8倍となります。
これは僕の考えですが、高齢者の割合が増加した結果、社会や家庭が高齢者をケアするのに必要な金銭的、人員的な余裕がなくなってきて、社会的に「放置」される高齢者が増えてきているのではないかと思います。そのような高齢者は金銭的な余裕や社会・家族における人のつながりを失い、容易に犯罪に走るようになるでしょう。
いくら高齢者の政治力が高まって、マスコミが彼らを大事にしても、彼らを支えている非高齢者に高齢者を支える余裕がなければ、社会全体では高齢者はどんどん冷遇されるでしょう。「科学的、あるいは学問的な見地に立った言論」も、やればやるほど社会の余裕のなさを浮かび上がらせることになるので、高齢者冷遇の風潮を高める方向に働くでしょう。
今後、社会における高齢者冷遇が進めば、高齢者におもねるマスコミと、高齢者を邪魔者扱いする世間との差がどんどん開いていくのでしょうね。マスコミの影響が及ばないネットでは「爺婆氏ね」「税金ドロボー」などという言葉が飛び交うのかもしれません。マスコミにとってはそのような世間の風潮を批判すれば大きな反響を呼べるので、このような状況はありがたいことなのかもしれませんが、そのような報道は世間の本音レベルでの高齢者への反感を煽るでしょうから、当の高齢者にとっては利益とはならないのでしょうね。