Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

官製動員の陥穽w

 【北京=峯村健司】北京五輪聖火リレーへの妨害を防ぐため、各地の中国大使館側が旅費を負担するなどして、現地の中国人留学生らを大量動員していたことが関係者の話でわかった。「人間の壁」による妨害対策を指示するなど、対処マニュアルも作成。各地で赤い中国国旗を振っていた「聖火応援隊」は、やはり当局主導だった。

 長野市を走った26日の聖火リレーでは、約5千人の中国人留学生らが日本各地から集まった。東京から参加した複数の留学生によると、前日から夜行バスで向かい、1人2千円の交通費を負担したが、残りの費用は、すべて大使館側が負担してくれたという。

 配られたマニュアルでは、(1)聖火が引き継がれる地点にそれぞれ20人ずつ集まって「人間の壁」をつくり妨害者の進入を防ぐ(2)自分たち以外の大人数の団体を見つけたら責任者に報告する(3)不審な物を発見したらすぐに新聞紙や服で包んで排除する、などと書かれている。

 さらに「体を張って妨害を食い止めてもいいが暴力を振るってはいけない」「大声を出してもいいが、相手を侮辱するような言葉は使わない」など、法律やルールを守るよう呼びかけ、現場でも注意されたという。中国のイメージが損なわれないよう配慮していることがうかがえる。

 関係者によると、パリやロンドンで聖火妨害が相次いだため、各大使館が中国人留学生や華僑を動員し、聖火を防衛することを決めたという。オーストラリアのキャンベラでは1万人以上が、アルゼンチンのブエノスアイレスでも数千人の留学生らが動員された。リレーが通過しなかったカナダやニュージーランドなど15カ所でも、現地中国人による大規模な「北京五輪支持集会」が開かれている。

 24日にあった中国外務省の定例会見で、「中国大使館が費用を負担して現地の中国人を動員しているのか」という記者からの質問に対し、姜瑜副報道局長は「そのような質問をして、どんな意味があるのか」と明言を避けた。

http://www.asahi.com/international/update/0429/TKY200804280362.html



世界各地で行われた北京五輪聖火リレーの沿道を埋め尽くした中国人集団は、やはり各地の中国大使館が動員したものだったようです。
ただ、そうなると不思議なのは、マニュアルまで作って参加者の行動を統制していたはずなのに、なぜソウルのような大騒動が生じてしまったかということです。すでにソウルの件は中韓間の外交問題に発展しており、李明博大統領の訪中まで危ぶまれる状況となっています。これはソウルの中国大使館としては大失態でしょう。

 【ソウル=箱田哲也】北京五輪聖火リレーがソウルであった際、中国人が暴力行為を働いたとされる事件で、脱北者の支援団体などが29日、ソウルの中国大使館前で集会を開き、寧賦魁・駐韓大使の謝罪を求めた。韓国のテレビ局はニュース番組などで暴行シーンを繰り返し放送。インターネットの掲示板などでは中国批判が過熱している。

 韓国側の反発は当面続きそうで、来月にも予想される李明博(イ・ミョンバク)大統領の訪中への影響を懸念する声が出始めている。

 中国大使館前では、ある支援団体の代表が、中国人から投げ込まれた工具で肋骨(ろっこつ)が折れたことを明らかにし、診断書や工具を見せながら「合法的なデモをしているのに、なぜこんなものが投げられるのか。大韓民国そのものに加えられた暴行だ」と訴えた。

 支援団体などは、北朝鮮から逃げ出した脱北者中国当局が強制送還しているなどとして、27日にあった聖火リレーの際、中国の人権意識の改善を訴えていた。

 韓国メディアからは、政府は中国側に、もっと強い抗議をすべきだとの論調も出始めている。韓国外交通商省は28日、寧大使を呼んで抗議したが、報道官の定例会見では連日、追加措置についての質問が集中。李大統領の初の中国訪問などを協議するため訪中している外交通商省の李容濬(イ・ヨンジュン)次官補が、改めて中国政府に遺憾の意を伝えるという。

http://www.asahi.com/international/update/0429/TKY200804290222.html



また、バンコクでは中国大使館員が現地警察の指示に従わず、警備を妨害したのではないかという話も出ています。

 「中国大使館だ」

 バンコクで五輪の聖火リレーがあった19日、中国人男性が警備中のタイの警官に身分証を見せ、「なぜ動く必要があるのか」と詰め寄った。

 近くでチベット解放を求める100人規模の集会が開かれていた。そこに、真っ赤な服を着て中国国旗を振る中国人留学生ら150人が現れた。警官が混乱を防ごうと割って入った時のことだ。

 警察は留学生たちに道路の反対側へ動くよう指示。大使館員という男性がこれに不満を示し、約20分のすったもんだが続いた。その間に留学生は300人に増え、大合唱を始めた。チベット集会の方もいきり立ち、一触即発の雰囲気が漂った。

 留学生によれば、集会の話を聞いて仲間同士で連絡をとりあい、反論のために集まったという。「中国大使館」を名乗る複数の男女が常に一緒だった。最後は留学生たちが指示に従ってことなきを得たが、警察からは「聖火のための警備を大使館が混乱させてどうするのか」。「官製デモ」とのうわさまで出た。

 本当に大使館員であるなら、混乱回避へ地元警察に協力すべきではないのか。五輪の政治利用を批判する中国政府の主張は正しい。ならば中国側も挑発行為を慎むべきだ。(山本大輔)

http://www2.asahi.com/olympic2008/column/TKY200804290154.html



これは僕の推測なのですが、世界各地で聖火リレーが行われた結果、各地の中国大使館の間では聖火リレーを盛り上げようとして中国人の動員競争が生じ、大人数で派手に聖火リレーを盛り上げた方が、中央政府の覚えがめでたくなるという意識が生まれてしまったのではないでしょうか?大使館内部でそういう内向きの意識が働いた結果、本来大使館が行わなければならない参加者の行動統制がおろそかになり、ソウルのように友好を盛り上げるはずの聖火リレー外交問題に発展するという本末転倒な事態になってしまったのでしょう。
長野ではソウルのようなことはありませんでしたが、これは在日中国大使館には反日暴動の時のトラウマがあり、それを繰り返さないことを至上命題としていたからなのでしょうね。
そうなると、長野が比較的平穏だったのは、かつて反日暴動に発展するほど、小泉首相靖国問題で中国の反感を買ったからということになるわけですが、これも国際関係に時折見られる皮肉なのでしょうか?

5/5追加

この産経新聞の記事のようなことがあったということは、「長野ではソウルのようなことはありませんでしたが、これは在日中国大使館には反日暴動の時のトラウマがあり、それを繰り返さないことを至上命題としていたからなのでしょうね。」という推測は間違っていたのかもしれません。
ソウルとは言わないまでも、クアラルンプールのような状況は発生していたようですね。

 長野市で4月26日に行われた北京五輪聖火リレーで、沿道を埋め尽くした中国人による日本人らへの暴行事件が起きていたことが分かった。中国の胡錦濤国家主席が6日に来日するが、ただでさえチベット騒乱やギョーザ中毒事件で中国への厳しい視線が注がれる中、暴行事件の発生で日本国内の対中感情はさらに悪化しかねず、主席歓迎ムードは高まりそうにない。事件があった長野市の現場の証言を追った。





 【東京都西東京市の自営業、中川章さん(57)の証言−中国国旗の旗で殴られ全治3週間】 


 私は知人の地方議員たちとともに日の丸とチベットの小旗を振りながら善光寺の境内から聖火リレーの沿道に向かっていたんです。

 市役所近くの交差点で中国人の集団にいきなり、巨大な中国国旗で通せんぼされましてね。若い中国人の男に旗ざおで左手の甲をたたかれ、小旗をもぎ取られ、後頭部に旗ざおでズコンですよ。旗ざおといっても長さ2メートル以上、直径3センチ以上もあるアルミ製。旗が付いていなければ間違いなく凶器準備集合罪ですよ!

 70歳すぎの知人も若い女に腹をけられ、「フリーチベット」のプラカードはビリビリに破られました。警察官が3人ほど駆けつけてくれましたが、彼らも旗ざおで殴られていました。「あの男を逮捕してくれ!」と叫んだのですが、警察官は私たちと中国人グループを引き離して「あっちに行かないでくれ」と叫ぶばかり。目の前に犯人がいるのに取り押さえようとしないんです。

 結局、私は後頭部に大きなコブが残り、おまけに頸椎(けいつい)ねんざで全治3週間。20人近くの仲間が暴行を受け、頭や背中にけがをしました。女性も老人もお構いなしです。一体ここはどこの国なんですか!

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080504/plc0805042153007-n1.htm

 警察官3000人を動員する厳戒態勢の中で行われた長野市聖火リレーは大きな混乱を避けることはできたが、組織化されていたとみられる中国人応援団が約4000人も集結したことは警察当局にとっても想定外だった。巨大な国旗は凶器へと変わりかねず「一歩間違えれば暴動が起きかねなかった」(政府高官)との声も上がる。

 複数の政府筋によると、7日に中国の胡錦濤国家主席との首脳会談を控える福田康夫首相にとって聖火リレーの成功は必須条件だった。長野県や県警には、官邸サイドから「万全を期すように」と強い意向が伝えられていたという。

 公安筋では、留学生組織「学友会」の呼びかけなどにより中国人留学生約2000人が長野に押しかけるという情報をつかみ、これを元に警備計画を練った。

 ところが、実際に集まった中国人留学生は予想を超える約4000人。学友会が用意したTシャツは2000枚不足したという。巨大な五星紅旗が沿道を埋め尽くした。

 現地では、チベット人支援者や警察官が中国人から暴行を受けていたという証言が多数出ているが、威力業務妨害容疑などで逮捕されたのは日本人5人、台湾籍のチベット人1人で中国人はゼロ。多くの暴行に使用された中国国旗のアルミ製旗ざおは一本も押収されていない。

 中国人による暴行が事実上黙認されたことについて、警察関係筋は「聖火リレーを無事にゴールさせることに警備の主眼を置いたため、小競り合いを許してしまったことは否めない。中国人を刺激して暴徒化することだけは避けなければならなかった」と打ち明ける。警察官への暴行については、「うわさはあるが、公傷を申請した警察官は1人もいない」(長野県警幹部)としている。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080504/plc0805042202008-n1.htm