四川大地震とチベット問題
[成都(中国) 13日 ロイター] 中国南西部で起きた四川大地震で死者数は四川省だけで1万人に迫り、数百人が倒壊した建物の下敷きとなっている。国営メディアによると、四川省を震源とするマグニチュード7.8の地震により、同省では少なくとも学校8校、複数の化学工場、少なくとも1つの病院が倒壊、数百人が生き埋めになっているという。
中国にとって過去30年で最悪となるこの地震による死者数は、今後も増加する見通しで、四川省の省都・成都から約100キロにある震源地のブンセン県付近には、道路や鉄道の切断のために救援活動が届かない状態となっている。
同省の都江堰市では3階建ての学校が崩壊し、約900人の生徒が生き埋めになった。政府は救援活動のため軍隊や医療チームを派遣。温家宝首相も被災地入りした。
四川テレビによると、死者数の7000人以上は同省北川県に集中し、同県では建物の80%が崩壊した。
今回の地震は、死者30万人を出した1976年の唐山地震以来、中国を襲った最悪の地震となった。
中国大地震で四川省の死者約1万人、今後も増加の恐れ | Reuters
【北京=福島香織】中国民政省によると、四川省アバ・チベット族チャン族自治州●(=さんずいに文)川(ぶんせん)県を震源とする大地震は13日午前7時(日本時間同8時)現在、死者は、四川、甘粛、陝西、重慶、雲南、山西、貴州、湖北の8省で確認できるだけで9219人に達した。倒壊家屋は50万戸以上という。中国中央テレビ(CCTV)は四川省だけで死者1万人に達していると報じるなど、一夜明けて被害状況が徐々に明らかになってきており、新華社電によると、震源地である同州●(=さんずいに文)川県の約6万人と連絡が取れていないという。
死者の内訳は四川省8993人、甘粛省132人、重慶市8人、陝西省85人、雲南省1人。CCTVによれば、震源地●(=さんずいに文)川県への交通は断絶しており、陸の孤島状態。12日夕に偵察に飛ばした軍用ヘリも悪天候に阻まれて引き返しており、救援隊は徒歩で現地に向かっているという。新華社通信は、13日未明に通じた●(=さんずいに文)川県からの電話で、建物の3分の1が倒壊していると伝えた。
四川省では少なくとも8つの学校と化学工場、病院などが倒壊しており相当数ががれきの下で救援を待っている。什●(=方ヘンにおおざと)市では2つの化学工場が倒壊し数百人が生き埋めになっているほか、80トンの液化アンモニアが漏れ付近の住民6000人が避難した。また、陝西省宝鶏市から成都に向かう貨物列車が甘粛省徽県で地震のために脱線、貨物のガソリンに引火して火災が発生している。
被災地では人民解放軍2万人が展開し、武装警察が救援活動を行っている。さらに3万4000人の軍人が軍用機や列車で被災地に向かっている。だが最大でマグニチュード(M)6級の余震も続くなか、救出作業は難航しそうだ。
約6万人と連絡が途絶しているのは、観光地として名高い臥竜と映秀、●(=さんずいに旋)口など。市街地の3万人余りは自宅から離れ、避難場所に退避しているという。
一方、上海、深●(=土へんに川)で上場している四川省、重慶市の66企業がこの日から、取引を停止している。
6万人と連絡とれず 「四川省だけで死者1万人」 中国大地震 - MSN産経ニュース
昨日、中国四川省の成都近くで発生した大地震は、すでに死者一万人に迫る状況だと言うことです。ただ、これらの死者は綿陽市北川県や都江堰市が中心で、震源地のアバ・チベット族チャン族自治州汶川県(ブンセン県、汶はさんずいに文)とは工数や通信が寸断され、未だ被害状況も分からないようです。恐らく、被害はますます増大するでしょう。
さて、今回の震源地は「チベット族チャン族自治州」とあるように、チベット人も多数居住している地域で、漢族や羌族と混在しています。先日のチベット騒乱の際は、この自治州のアバ県でも暴動が発生していました。
そして、今回の震災では、中国政府は救援のために軍や武装警察の大部隊を投入していますが、彼らはチベット騒乱の際、チベット人を鎮圧した組織でもあります。
そうなると、被災者の中でも特にチベット人に対する救援がすんなり行われるのかという疑問が出てきます。軍や武装警察にとっては未だチベット人は警戒すべき対象でしょうし、チベット人から見れば彼らが本当に救援に来ているのか疑わしいでしょう。そのため、下手をすれば救援作業がいつの間にか暴動鎮圧に変わってしまうことにもなりかねません。
また、チベット騒乱や海外の聖火リレーを巡る騒ぎの結果、漢族とチベット人の間にはお互いに対する反目感情が強まっているでしょう。災害時にはデマが流れやすいですから、デマをきっかけにしてこの反目感情に火が付き、漢族とチベット人の間の騒乱に発展する可能性もあるでしょう。そうなると軍や武装警察も救援活動そっちのけで鎮圧に当たることになり、被災地は大混乱に陥るでしょう。
震源地はそのような危険性がある場所ですから、中国政府も外国からの救援部隊やメディアが震源地のブンセン県に入ることは好まないでしょう。もし、中国政府が外国からの救援部隊やメディアをブンセン県に入れなかった場合、ミャンマーのサイクロン被害と同様、中国政府に対して外国から批判が出てきて、中国と欧米の対立がさらに悪化することになりかねません。
また、被災地で暴動が発生したときに、中国側が「救援活動を妨害するダライ一派」などとダライ・ラマを批判すれば、もう目も当てられなくなるでしょうね。
全く大変なときに大変な場所で起こった地震だとは思いますが、今回ばかりは中国側もチベット人も自制することを望みたいです。被災地がこれ以上混乱せず、民族を問わず一人でも犠牲者の数が少なくて済むことを願っています。