福田政権崩壊に関する一考察
福田首相が辞任したというニュースを聞いて、以前に自分が福田首相について語った記事を探してみたところ、こんな記事が見つかりました。
この結論に至るまでに、3エントリー(見方によっては6エントリー)に及ぶ分析があるので是非読んでいただきたいのですが、僕がこのブログ記事を読んで思ったのは、次のようなことです。
福田氏の長所と短所 - Baatarismの溜息通信
* 福田氏は一文字で言えば「冷」です。それが良い方向に出れば「冷静」、悪い方向に出れば「冷酷」となるのでしょう。雪斎さんやJSFさんが福田氏を評価していることや、アメリカや中国(北朝鮮もそうかも)で彼が評価されているのは、その冷静さや現実主義故でしょう。一方、1回目の小泉・金正日会談で拉致被害者家族を憤慨させたような対応は、彼の冷酷さ故なのでしょう。ただ、全体としてみれば、これは政治家として悪い側面ではないと思います。
* しかしその冷静さの裏側として、福田氏は喧嘩や博打を好まない傾向があります。経験した主なポストも官房長官のみですし、これまで総裁選に出た経験もありません。彼は負ける戦をしようとしない人物なのでしょう。そのため、これまで逆境を経験したことがほとんどありません。これは政治家として非常に心配な側面です。
福田氏は冷静で現実的な人ですから、状況が与党に都合の良い時や、都合が悪くても想定の範囲内ならば、正しい対処ができると思います。しかし、(例えば安倍内閣の年金問題や閣僚不祥事のように)想定していない問題が吹き出したり、野党に追い詰められてしまったときは、逆境の経験がないことがマイナスに働く可能性が大きいと思います。その場合、福田氏が正しい決断をできるのか、それとも安倍首相のように間違った決断をしてしまうのかは、そのときになってみないと分からないのでしょう。
これを読み直して改めて考えてみたのですが、やはり福田首相は逆境の経験がないことがマイナスになってしまったのだなあと思います。
おそらく首相就任当時には、民主党を「大連立」で取り込んで政権を安定させることを考えていたのでしょう。しかし「大連立」が民主党内の反発で頓挫し、福田首相はねじれ国会に真っ向から向き合う羽目になりました。
そのような逆境は福田首相にとって初めての経験であり、苦しいものだったのでしょう。辞任発表後に首相のこのような発言も報道されてますが、やはり逆境がよほど苦しかったのでしょうね。
退陣会見は突然のものだったが、首相にはすでに今年4月から退陣の2文字が頭をよぎっていた。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080903ddm001010020000c.html
首相が後見人でもある森喜朗元首相に辞意を漏らしたのは、改正租税特別措置法の衆院再可決を前にした今年4月だった。
大連立構想の破綻(はたん)に始まり、日銀総裁の空席、ガソリン税の暫定税率失効と「ねじれ国会」にくたびれ果て、「辞めたいなあ。もう外遊もしたくないよ」と、森氏に赤裸々に語っていた。
それでも与党が福田首相を支えているうちはなんとか頑張れたのでしょうが、内閣改造後に公明党の圧力が強まり、麻生幹事長が公明党と連携して定額減税や衆院選の早期実施が取りざたされるに至って、福田首相は与党内でも逆境に陥ってしまい、政権を投げ出してしまったのだと思います。
政治家人生の中で負け戦を避けてきたため胆力を鍛える機会がなかった、そのことが福田首相の失敗の原因だったと思います。