Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

政治的テロが起こったときに大切なこと

これまで、いくら不況が続いても、現代の日本では政治的テロが起こっていないだけ戦前よりはマシだと思っていたのですが、昨日、元厚生次官宅が相次いで襲撃された事件が本当にテロならば、この考えは変えなければならないようです。

 18日午後6時半ごろ、東京都中野区上鷺宮2丁目、元厚生事務次官社会保険庁長官も歴任した吉原健二さん(76)宅に宅配便配達を装った男が侵入、妻靖子さん(72)を刺して逃走した。靖子さんは胸など数カ所を刺され重傷。同日午前、さいたま市内で元厚生事務次官山口剛彦さん(66)と妻の美知子さん(61)が他殺体で見つかった事件と合わせ、警察庁は連続テロとの見方を強め、警視庁と埼玉県警に徹底した捜査を指示した。

 警察庁幹部は、2人の経歴が似ている▽凶器が刃物▽襲撃場所が自宅玄関など、共通点が複数あるとして「連続テロの可能性がある」と語った。2人は、基礎年金制度や、サラリーマンの妻も年金の被保険者となる仕組みを導入した年金改革に取り組んだという共通点もある。19日に埼玉県警と警視庁の幹部を集め情報交換し、捜査方針を話し合う。また厚労省からの要請を受け、歴代事務次官経験者などの身辺警戒を強化するよう全国の警察本部に通達を出した。

asahi.com(朝日新聞社):元厚生次官宅を連続襲撃 計3人死傷、連続テロか - 元厚生次官宅連続襲撃



戦前のテロやクーデターが相次いだ時代は、世間では犠牲になった政治家、高級軍人、官僚、財閥幹部への反発から、テロやクーデターの犯人に同情する空気が強かったです。そのようなテロやクーデターを支持する雰囲気が軍を勢いづかせ、それを押さえるべき指導者層を萎縮させた側面があったのでしょう。
そこから得られる教訓としては、テロやクーデターの犯人に喝采を叫んだり、共感したりしないことでしょう。すでに2ちゃんねるやYahooニュースのコメント欄などではそのような意見も見られるようですが、そのような空気を社会全体に広めてはいけません。
その意味で、マスコミや知識人、それに公共の立場に立つ人が、安易に犯人への喝采や共感を表明しないことは、非常に大切だと思います。ネットで日頃から意見を表明している人も、やはり同じだと思います。


あと、僕もこれまでこのブログで様々な人を批判していますが、こういう状況になると、ひょっとしたら僕の書いた批判に煽られてテロに走る奴が出るのではないかという懸念も出てきますね。もしそんな状況になったとしても、僕はその犯人を批判しなければならないと、今から肝に銘じたいと思います。少なくとも「気持ちは判る」なんて言ってはいけませんね。

11/25追記

自首した犯人の言い分によると、犯行の理由は「ペットを保健所で処分されたから」だとか。少なくとも犯人は自分ではそう考えているのでしょうね。そういう考えや犯行に至った背景には、本人の人生がうまくいっていないことや、何かにつけて他人を批判する性格、日本社会における長年の厚生省・厚労省や官僚に対する批判などがあるのでしょうが。
犯人に関する報道を見た限りでは、今回の事件はテロというよりは、id:plummetさんも言っているように、「常日頃の不平不満(私憤)の矛先を、社会的諸問題(公憤)にすり替えて爆発させたものかなぁ」という気がします。
これまでなら政治的テロのターゲットになっていたような人たちが、そのような個人的な不平不満が原因で攻撃されてしまうようになったのが、現代という時代なのでしょうか。

 ちなみにこの件、政治テロ、という意見も多かったんですが、個人的には保留でした。声明なかったし。常日頃の不平不満(私憤)の矛先を、社会的諸問題(公憤)にすり替えて爆発させたものかなぁ、と。そんなことを漠然と思ってたんですが、今のところ容疑者の言い分では「ペットを保健所で処分されたから」というところが動機だとか。


 んー。


 まぁ、爆薬は日頃の生活の中で溜め込んでいたものなんでしょう。その導火線というか、着火するための火種が、過去の苦い記憶だったというところでしょうか。

http://d.hatena.ne.jp/plummet/20081125/p1