Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

民主党金融対策チームの金融危機対応追加策に突っ込んでみる

今回の経済危機で、麻生政権が打ち出す政策については、評価にせよ批判にせよ(批判の方が多いようですが)、様々な報道がなされています。
しかし、民主党が打ち出している政策については、ほとんど報道されることがありません。
しかし、参院を野党が押さえ、次の総選挙では政権交代の可能性も取りざたされている状況では、民主党の政策にも目を配る必要があるでしょう。
そこで、今回は昨日民主党金融対策チームが発表した金融危機対応追加策を取り上げてみます。

[東京 25日 ロイター] 民主党の金融対策チーム(座長:大塚耕平参院議員)は25日、金融危機対応策の追加策として「行動計画」の原案を発表した。原案によれば、年末の企業金融円滑化のため、資本不足に陥っている地域金融機関への日銀出資のほか、国内基準行の自己資本比率規制の一段の見直しを盛り込んだ。

 日銀の地域金融機関への出資は、2008年9月中間期に赤字になった地銀・第二地銀を中心に検討する。金融機能強化法改正案の参院での審議が難航して法案の年内成立・年内施行が不透明な情勢になっていることを背景に、過去に日銀が企業株式を買い取った実績があることから、金融システム安定の観点から日銀に検討を促す。

 また、国内基準行の自己資本比率規制については、自己資本が4%を割った場合でも早期是正措置を発動しないようにルールを見直すことを検討する。すでに金融庁は、2008年12月期―2012年3月期までの時限措置として、国内基準行の自己資本比率の算出には保有株の含み損を控除しないようルールを改正するが、一段の見直しを求める方針。

 民主党は10月15日に党としての金融危機対応策を決定しているが、今回の「行動計画」は追加対策として、今後の金融対策チームの会合に、財務省金融庁、日銀など関係当局を呼んで、正式にチームの案としてまとめる。議論がまとまれば、民主党の「次の内閣」で機関決定する考え。政府は10月30日に追加経済対策(生活対策)を打ち出したが「なんら実行に移されていない」(大塚座長)として、国内景気の深刻な悪化に対応するとしている。


 行動計画の概要は以下のとおり。


 1.金融機関対策(流動性不足・信用不足対策)
(1)日銀による地域金融機関などへの出資
(2)国内基準行の自己資本比率規制の見直し

 2.企業対策(信用収縮対策)
(1)信用保証枠拡大の具体化(信用保証協会の緊急保証枠14兆円の追加を行う法案作成)
(2)日本政策金融公庫などによる危機対応業務の発動を促す法案作成
(3)内閣府に公的金融ヘルプデスクの設置(信用保証・政府系金融機関の融資申し込みの審査手続き改善)

 3.経済運営・国際協調に関する麻生太郎首相への政策提言
(1)財政出動ではなく有効需要創出
 ・消費や投資の喚起
 ・社会保障充実
 ・企業の活動コスト軽減(規制や法律の改廃)

(2)ドルの「完全追随」ではなく多極化指向の為替政策
 ・IMF国際通貨基金)への資金支援だけでなく、特定国への個別支援
 ・円建て債の推奨
 ・民間金融機関の安易な海外出資は自粛

(3)緊急的な国内対策は「雇用」と「企業の資金繰り」に特化
 ・政策財源の余力を集中投下

民主党金融チームが金融危機対応の追加策、日銀による地銀出資など盛り込む | Reuters



この金融危機対応追加策について、ネットでは「IMF国際通貨基金)への資金支援だけでなく、特定国への個別支援」という項目が、経済危機に陥っている韓国への直接支援に道を開くのではないかという批判の声があります。
上の記事を取り上げたはてなブックマーク2chのスレッドでは、そのような声が大きいようです。


はてなブックマーク - 民主党金融チームが金融危機対応の追加策、日銀による地銀出資など盛り込む | マネーニュース | 最新経済ニュース | Reuters
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1194931.html


韓国については以下のブログ記事のように、1998年の通貨危機の時にアジア開発銀行から得た融資をまだ返済していないという指摘があるので、IMFのような国際機関による縛りがないと、今回も踏み倒されるのではないかという懸念があるのでしょう。


http://blog.livedoor.jp/greywizard/archives/540541.html
IMFへの出資枠拡大を批判してる奴って、IMF以外に方法が何かあると思っているのかな: やまもといちろうBLOG(ブログ)


だから、もし今回の経済危機で韓国への個別支援を行うならば、この未返済融資についても取り上げて、今回の融資と同時に返済させるようにする必要があるでしょう。


ただ、僕はこの件よりも「民間金融機関の安易な海外出資は自粛」という項目の方が問題だと思います。
この「安易な海外出資」というのは、誰が判断するのでしょうか?
もし政府が行うのであれば、民間が自分のリスクで行おうとした海外出資を、政府が無理矢理止めるということになります。「世界的な金融危機で融資を必死になって求めている海外の金融機関が、せっかく日本の金融機関から融資を得られることになったのに、それを日本政府によって止められた」なんてことになったら、その国の政府や世論は激怒しかねません。
また、判断を民間金融機関自身が行うのであれば、それは民主党も批判している麻生政権の定額給付金の所得制限と同じく、全く効果がないことになります。
あと、このような項目が入っていると言うことは、民間金融機関の海外出資、具体例を挙げれば、MUFGによるモルガン・スタンレーへの出資や、野村證券によるベアスターンズのアジア・欧州部門の買収を、民主党は問題視していることになります。この考え方に合理性があるとすれば、海外への出資が国内金融機関の自己資本を毀損し、国内の貸し渋りを招いたり、経営を傾かせたりすることを止めるということになるのでしょうが、現状で国が支援していない金融機関の行動を、「安易な」という曖昧な基準で政府が縛るというのは、問題が大きいと思います。


このように外交政策としても経済政策としても問題がある項目を、民主党が何故盛り込んだのか疑問です。政策の検討が足りなかったのか、それともそのような問題点に目をつぶってでも「民間金融機関の安易な海外出資」を止めたいのか、どっちなんでしょうね。