Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

GDP速報と中川(酒)大臣辞任による雑感

2月16日に発表された2008年10〜12月期のGDP国内総生産)速報値は、実質で前期比3.3%減、年率換算で12.7%減となり、日本経済の落ち込み振りをまざまざと見せつけました。
そして同日に行われたG7財務省中央銀行総裁会議の後の記者会見では、中川昭一財務金融相*1のろれつの回らない姿が世界中に報道され、与野党、世論、マスコミから批判の集中を浴びた中川大臣は翌日辞任に追い込まれました。これは日本の政治の混乱振りをまざまざと見せつけた出来事でした。
ここまで来ると、「もはや自民党ではダメだ、政権交代だ」との声が普通なら出てくると思うのですが、政権交代を担うべき民主党は未だに独自の大規模景気対策もまとめられない有様で、政権交代そのものが「ダメ元で任せてみよう」というやけっぱちな選択肢になってしまっています。*2


そんな状況で、中川昭一氏に代わって財務金融相を任せられ、財務・金融。経済財政の三大臣を兼任することになったのが与謝野馨氏ですが、彼は財務省の代弁者で、どんな経済情勢でも消費税増税を主張する人です。まあ、さすがにこの大不況では今すぐ増税に走ることは出来ず、当面は補正予算や本予算の成立に尽力することになるでしょうが、政府通貨や日銀の国債引き受け・買いオペ増額要請などのマネー増発*3に繋がる政策は「通貨価値を毀損する」*4として絶対に反対している人物ですから、例え我慢して大規模財政政策を実施したとしてもマンデル・フレミング効果による円高でかなり相殺されてしまい、景気回復は期待できない人だと思います。*5


ただ、麻生政権の財政政策を一手に引き受けることになった与謝野氏も、ここまで麻生政権の弱体化が進んでしまうと、この先の展望が見えにくいのではないかと思います。
麻生総理で衆院選を行えば惨敗必至で民主党政権誕生となり、その後の自民党では中川秀直氏の「上げ潮派」が力を得て、与謝野氏が拒むマネー増発政策が注目されるでしょう。また、頼りの財務省民主党に取り入って消費税増税を目指す路線に転換するでしょうから、与謝野氏は麻生政権と一緒に沈んでしまうという事態になりかねません。
また、総裁を交代させて自分が総理になったとしても、やはり消費税増税を掲げる限り衆院選では勝利できず、その後は同じ展開となってしまいます。
とは言え、「上げ潮派」に繋がる小池百合子総裁を支持するというのも認めがたいでしょう。
衆院選での自民党敗退後に、自民党を割って民主党と連立するという選択もあるでしょうが、ここまで評判が落ちた麻生政権に深く関わってしまった与謝野氏を、民主党が受け入れるかという問題があります。そんなことするくらいなら、小沢氏も公明党との協力を選びそうな気がします。
無派閥でありながら、財務省の後ろ盾と政界遊泳術で巧みに権力を拡大してきた与謝野氏ですが、さすがにここは手詰まりを感じているのではないでしょうか?


アメリカでも中国でも相次いで大規模な財政政策や前例のない金融政策が採られているのに、日本は政府は与野党対立や麻生政権の支持率低下で身動きが取れないし、日銀もマネー増発政策を断固として拒否するという状況です。このように景気対策を断固として拒み続ける政治の状況は、いつまで続くのでしょうか?政権交代を1回行ったくらいでは、まだまだ終わらなさそうですね。orz

*1:以前から「中川(酒)」氏と揶揄されてましたね。w

*2:http://diamond.jp/series/yamazaki/10068/で、山崎元氏が民主党の状況について解説していますね。

*3:この言葉は竹中正治氏の記事から取ってみました。http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090216/186179/

*4:「通貨価値の毀損」とはインフレのことですから、長期のデフレ下にある日本にとっては良い政策なんですけどね。マネー増発に反対する人は、なぜかインフレとは言わず「通貨価値の毀損」という言い方を好みますね。w

*5:麻生内閣でマネー増発を主張しているのは菅義偉氏ですが、与謝野馨氏の兼任が一時的だったとしても財務省の反対もあるので、この人が財務・金融相になるという人事は期待できないのでしょうね。orz