Baatarismの溜息通信

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藤井財務相の金融政策についての理解

そして、このようなアコードに関する考え方からすると、この藤井裕久財務相の発言も気になってしまいます。

 こうした企業金融支援措置延長の是非について藤井財務相は「政府の一員の立場でコメントは控える」としながらも、「民主党は日銀の独立性を強く考えている」とも語り、日銀の判断を尊重する考えを示した。

 さらに、日銀法では、金融政策については「日銀がよく考えろと書いてある」と指摘。「政府が命令しろとは書いてない」と述べ、政府が日銀の判断に介入すべきではないとの認識をあらためて強調した。

民主党は日銀の独立性を尊重、為替は経済実勢で決まるのが自然=藤井財務相 | Reuters



日銀法の条文を見ると、このように書いてあります。

第1章 総則


(目的)
第1条  日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
2   日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。


(通貨及び金融の調節の理念)
第2条  日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。


日本銀行の自主性の尊重及び透明性の確保)
第3条  日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。
2   日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない。


(政府との関係)
第4条  日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。


(業務の公共性及びその運営の自主性)
第5条  日本銀行は、その業務及び財産の公共性にかんがみ、適正かつ効率的に業務を運営するよう努めなければならない。
2   この法律の運用に当たっては、日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない。

http://www.boj.or.jp/type/law/bojlaws/bojlaw1.htm



日銀法の第4条には「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」とありますが、日銀の政策が政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるようにするためには、政府も日銀に求めることは言わなければなりませんし、日銀も必要な要求は取り入れなければなりません。藤井大臣のように「政府が日銀の判断に介入すべきではない」と言ってしまうと、政府が日銀に何も言えなくなってしまい、日銀の政策が政府の経済政策の基本方針と整合的なものにならない恐れがあります。


また、この発言にはつぎのような内容もあります。

 円高が進行している為替相場については「円レートの額について、政府が言うべきではない」としたうえで、「(為替は)経済の実勢に合わせて決まるのが自然な姿」と述べた。そのうえで「人為的に通貨安競争を行うことは世界経済にとって良くない」と述べ、為替介入に否定的な見方をあらためて強調した。ただ、「円高是認と書かれるのはつらい」と語った。

民主党は日銀の独立性を尊重、為替は経済実勢で決まるのが自然=藤井財務相 | Reuters

「(為替は)経済の実勢に合わせて決まるのが自然な姿」と言っていますが、実際には為替相場は各国の金融政策にも大きく左右されます。今は欧米諸国が金融危機対策のためマネー供給を大幅に増やしているのに対して、日銀はほとんどマネー供給を増やしていませんので、それが円相場に大きな影響を与えています。
このような藤井大臣の理解は、為替相場が金融政策に左右される実態を無視した理想論*1であり、このような実態を無視した考え方で経済政策を語って欲しくはありません。
このような発言も、藤井大臣が金融政策の重要性を軽視している表れであるように思います。だから「金融政策については『日銀がよく考えろと書いてある』」なんて他人事みたいな発言も出てくるのでしょうね。

*1:「自然な姿」という言葉も理想論であることを示しているのでしょう。