郵政社長人事雑感
すでに報じられているとおり、亀井静香金融・郵政担当相が、元大蔵事務次官の斎藤次郎氏を次期日本郵政社長に起用することを発表しました。
この人事については、斎藤氏が細川政権時代に小沢一郎幹事長と関係が深く、細川政権崩壊のきっかけとなった国民福祉税導入にも深く関わっていたことから、小沢氏の意向ではないかという声も聞かれます。*1
しかし僕は、斎藤氏が大蔵省出身で、かつては「10年に一度の逸材」と言われたほど能力のある人物であることを考えると、「財務省が郵政を握った」という見方の方が重要ではないかと思います。
1990年代まで、郵便貯金の莫大な資金は財政投融資制度を通じて、大蔵省資金運用部によって特殊法人に融資されていました。その際、融資に対する金利を国債金利よりも1%上乗せすることで、郵貯事業は収益を得ていました。この上乗せ分は税金から出ていたわけです。2001年に郵貯は自主運用に変わり、上乗せ金利も打ち切られたことから、郵貯が赤字にならないために民営化が行われたわけです。
しかし、どうも今回の人事はこのような歴史の流れを反転させて、「新財投」とでも言うべき制度への一里塚となるのではないかと疑っています。かつての財投では大蔵省資金運用部が運用を行っていたわけですが、「財務省が郵政を握った」となると、日本郵政がかつての資金運用部の役割を果たすことになるのはないかと思います。皮肉にも郵貯の「自主運用」が財務省の権限を強めてしまうわけです。
もっとも僕の予想が当たるかどうかは分かりませんが、今後「郵政改革見直し」の名の下に郵貯の資金を誰が握ることになるのか、注意して見た方が良いと思います。
*1:この話については、id:finalventさんの「元大蔵事務次官斎藤次郎・日本郵政社長: 極東ブログ」が詳しいです。