Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

渡辺喜美氏のとってもリフレな国会答弁

渡辺喜美氏については、昨年、麻生内閣時代の定額給付金の対応を巡って批判したことがあるのですが*1、今回ばかりはべた褒めしなければならないですね。w

渡辺議員「本来、この国会はこうしたお金のスキャンダルの話ではなくて、如何にデフレギャップを解消するか、これを議論をする場だった筈であります。今、日本のデフレギャップ、40兆円、まぁ内閣府が認めておられるだけでも35兆円あると、言われています。デフレギャップを放っておけば、失業率は高くなります。日本の場合、今のデフレギャップでだいたい失業率が2〜3%程度、上に行きます。そして、失業者数で行くと、130万人から200万人程度増えます。労働者の正規・非正規で言ったら、非正規の方にしわ寄せが行きます。もっとしわ寄せが来るのは、新卒者の方です。来年春に卒業して、職の無い高校生が、どれだけいることか。こう言うデフレギャップを放置しておけば、雇用対策を延々とやらざるを得なくなる、まあ言ってみれば対症療法では駄目なんです。根本療法をやる必要があります。で、リーマンショック以降、各国では、財政出動と同時に金融政策を発動致しました。まあ、今回の補正によって、菅副総理のお話は、まぁ大体0.7%程度ぐらいですか?到底これでは、−7%のデフレギャップを解消するには至りませんね。そうすると各国ではどんな具合にこのデフレギャップを解消していったか、お手元の4ページ目にカラープリントでいってるかと思いますが、例えばリーマンショックの後、アメリカでは−140兆円のデフレギャップ、ドイツは−30兆円、日本が−45兆円、財政政策を発動した後は、アメリカでは半分になっています。日本では残念ながら、35兆円、まだ残っているんですね。金融政策を発動した後、アメリカ・イギリスではデフレギャップは解消しているんです。日本では相変わらず35兆円。次のページを見ますと、各国中央銀行のバランスシートが書いてあります。例えば、FRB、急激にバランスシートを膨らませております。ECB、ヨーロッパ中銀も、同じようにバランスシートを膨らませています。日本はどうか?バランスシートを萎ませたまま。これが日本の金融政策の現状なんですよ。では、日本の金融政策、6ページ目をお開き頂きますと、どうなってんのか?消費者物価指数(生鮮食品を除く)或いは、コアコアといわれるエネルギーも除く、赤い方ですね、どういう具合に消費者物価指数は推移してきたか、これを見れば明らかなように0%から−1%のゾーンにどんぴしゃり、ハマっているんです。如何に日本銀行がデフレターゲットとさえ言ってもおかしくないような金融政策をやってきたかが、これによってハッキリ分かります。0を超えると金融引き締めをやる、−1を下回ると、金融緩和をやる。こういう金融政策をやってきた結果、日本はデフレギャップから脱却出来ずに延々と格差が拡がり続けているんです。総裁、如何でしょうか?」


法皇「ゴホンッ、お答え致します。まず、日本銀行の基本的な政策運営のスタンスでありますけども、日本経済がデフレから脱却し、物価安定の下での持続的な経済成長経路に復帰することが、極めて重大である、重要である、というふうに認識しております。で、えー、先月開催しました決定会合でも日本銀行は消費者物価の、前年比で見て、0%以下のマイナスの値は許容しないということ、政策委員の大勢は1%程度を中心として考えている、ということを示し、えー、デフレ克服への決意を明確にしております。えー、こうした考え方の下で、えー、金融緩和措置を、さらに決定を致しました。で、今、先生がご質問に挙げられました、需給ギャップ、デフレギャップとの関係で申し上げます。えー、まずあの、デフレギャップの数字、これ自体は、これはあの、計算の仕方でずいぶん変わりますので、えー、ギャップの数字それ自体については、あー、どれほどかというと多少幅がございますけれども、しかし、今、経済の問題として、この需給ギャップを解消する必要があること、需要創出する必要があることについては、全く認識が同じでございます。その上で、金融政策でございますけれども、先生のお配りになりました表の中で、金融政策の果たした役割のその数字について、どういう根拠で計算されたのか、必ずしも定かでございませんので、答えにくいんですけれども、ただ、先生がご指摘になった、中央銀行のバランスシートという点について、一言だけ、えー、私の考え方を述べさせて頂きます。えー、先生ご案内のとおり、アメリカの場合は、銀行借入ではなくて、CP、社債証券化商品といった、資本市場での調達が全体の80%を占めております。で、一昨年秋のリーマン破綻によって、アメリカの資本市場は、これは、大変に実は壊れてしまいました。もう発行が出来ないという状況になりまして。で、その結果、あー、FRBは不幸にして中央銀行がそこを肩代わりするしかないという状況になってしまいました。で、この点、日本の金融システムは、これはあの渡辺先生がご努力された90年代後半以降の金融危機対策も含めて、日本は散々いろんな努力をやってまいりました。その結果、今回、日本の金融システムは、もちろん世界の影響は受けましたけれども、しかし、欧米に比べて、金融システムは、これは、相対的には安定性を保ちえました。その結果、あー、FRBで起きた、不幸にしてFRBがそこまで中央銀行のバランスシートを拡大しないといけないという状態には日本はならずに済んだ、ということでございます。その代わり、日本銀行は、えー、金利を今、世界で一番低い金利にして、この金融緩和を続けるという覚悟をこれ示しております。それから、流動性につきましても、これは、日本銀行は、必要な流動性はしっかり供給するという体制を組んでおります。最後に、中央銀行のバランスシートの大きさでございますけれども、これはあのー、もちろん経済規模の差を勘案する必要がございます。で、アメリカ、或いは欧州は大体日本の3倍弱ございますので、GDPの比率で見てみますと、日本銀行は26.0%、FRBは16.0%、ECBは20.6%でございまして、大きさという面で見れば、もちろん大きさが大きければいいというわけではございませんけれども、日本銀行は世界で一番大きな中央銀行になっております。」


渡辺議員「まあ、相変わらず昔の理屈を述べ立てておられるばかりでございますが、まあ、結局ですねぇ、世界の金融政策の標準と言われるテイラールールをもってしても、今の日銀の資金供給は、非常に少ないと、まあ、−3%くらいの水準になっているんですね。従って、えー、デフレ脱却の為には、なんといってもGDPギャップを埋める必要がある。これには、財政政策だけでは到底無理、となったら、日本銀行があと30兆円くらいは国債を買ったり、或いは、我々が主張している、信用緩和政策を打ち出したりする必要があるんですよ。まあ、みんなの党はですね、昨年の臨時国会において、日銀法改正案を準備を致しました。まず、政府と日銀が協定を結ぶ、アコードですね、でその上で、政府が日本銀行に、例えば、中小企業のローン債権を20兆円買い取って欲しい、お手元の資料の7ページ目に出ておりますが、こういう事を要請することができる、ま、日銀は独立性がありますから、断ることもできる、一方、日銀が政府の要請に応じて、20兆円のローン債権を引きとって損を出した場合、政府が補填をする、まあ、日銀と政府の財布は繋がっていますので、そういうところのやりくりで補填をする、ということになるでしょうね。そういうことをやれば、20兆円のお金が金融機関に出回る、金融機関は新たな貸出、或いは、資本提供金融というものに回すことが可能になるんです。財政政策を使わずして20兆円の有効需要を作ることができるようになるじゃありませんか。なぜこういう財政金融一体政策をとらないんですか?菅副総理はスーパー大蔵大臣ですよ。財務大臣兼経済財政担当大臣、日銀の金融政策、来週25・26と二日間あります。そこへ行って、財政金融一体政策をやるべきだと、そういう事をおっしゃられたら如何ですか?」


菅副総理・財務・経済財政担当大臣「まあこのデフレギャップ、デフレ状態について、私も昨年、ある段階で、えー、日本の状況がデフレ状況にある、ということを宣言を致しました。また、それ以降日銀の方でも、今白川総裁からも話がありましたように、えー、0.1%の3ヶ月という長期の、えー、金利政策を含めてですね、いくつかの手を打って頂きました。まあ、そういう意味では、あのー、現在政府と日銀、もちろん独立性とか、コミュニケーションを良くするとか、色々ありますけれども、基本的には、あー、連携をしながら対応をしていると、このように思っております。まあ今、渡辺議員の方からですね、えー、日本銀行に色々な債権買取等をー、ゆったらどうかと、まあ、これは私の認識ではですね、あの、大きい方向としては、あのおー、日銀・政府、方向性は同じ方向を向いてると思いますが、そこでどういう政策を金融政策として打っていくのか、ま、具体的なあり方までですね、政府が、あの、こうしろああしろというのは、やや行き過ぎではないか、まあそういう意味では方向性を共通にしながら、それぞれ政策手法、日銀は金融政策として、そして、政府は財政政策を中心にして、考えていくと、こういう考え方で進めているところであります。」


渡辺議員「まあ、結局ですねぇ、日本だけが二番底懸念、まあ他の先進国は出口戦略というのを考えているわけですね。そうすると、じゃあ、またしても、4月以降補正を組まなきゃいけないということになるんじゃありませんか?だったら、今のうちから財政金融一体政策をきちっと政府と日銀で話し合って、決めておくべきなんですよ。まあ結局ですねぇ、まあ日銀の肩を持たれる方は、まあ、自民党政権時代もいらっしゃった。日銀が量的緩和を遅れ遅れにしてしまった、そして引き締めをやるべきでないときに引き締めをやってしまった。だから日本がデフレから脱却出来ずに、延々とデフレが続き、そしてリーマンショック以降の、需要が消えてなくなっていく中で、世界一デフレギャップが出てきてしまったんです。是非、これは鳩山内閣として真剣に取り組んで頂きたい。我々は野党ではありますが、こういう前向きの提案はどんどんさせて頂きます。総裁、もうあの、結構ですから、帰ってお仕事やって下さい。」
法皇ここで退席)

渡辺喜美議員V.S.法皇 - 天空の底、奇人の庭



日銀が金融危機以降バランスシートをほとんど膨らませていないことや、コアコアCPIで見ればデフレターゲットになっている話、テーラールールで見ても資金供給が少ない話、日銀法改正やアコードなど、リフレ派が長年主張してきたことがこれでもかと出てきています。日銀が民間債権を引き取って損失を出したときの対応も考えられてます。


渡辺議員は他にもいくつかのインタビューで、日銀法改正について述べてますね。


http://diamond.jp/series/newsmaker/10023/
みんなの党 代表 渡辺 喜美 氏 | FNホールディング


日銀法改正案でインフレターゲットについて言及されていないなど、まだ気になる点は残っているのですが、ここまで明確にリフレ政策を主張している政党は他にないので、みんなの党渡辺喜美議員には、頑張って欲しいところです。