Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

岩田規久男日銀副総裁、黒田東彦日銀総裁誕生

タイトルの順番が違うって?まあ、それは思い入れの差ですからw

[東京 15日 ロイター] 参院は15日午前の本会議で、次期日銀総裁黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁、副総裁に岩田規久男学習院大教授、中曽宏日銀理事を充てる人事案を与党などの賛成多数で可決した。衆院では14日に同意されており、3人の正副総裁候補が国会で正式に承認された。

現在の白川方明総裁と2人の副総裁が19日付で退任するため、黒田新体制は内閣の任命を経て20日に発足する。


国会承認で黒田日銀が20日発足、デフレ脱却へ大胆緩和 | 国内 | 特集 政局の行方 | Reuters 国会承認で黒田日銀が20日発足、デフレ脱却へ大胆緩和 | 国内 | 特集 政局の行方 | Reuters 国会承認で黒田日銀が20日発足、デフレ脱却へ大胆緩和 | 国内 | 特集 政局の行方 | Reuters



すでに報道されているように、次期日銀総裁黒田東彦氏、副総裁に岩田規久男氏、中曽宏氏を充てる人事案が衆参両院で承認され、3/20から黒田新体制が発足することになりました。
3人のうち、黒田氏と岩田氏は昔からのリフレ派で、これで史上初めてリフレ派主導の日銀執行部が誕生することになりました。これまで金融緩和に消極的でデフレ・円高を続けてきた白川時代とは異なり、2年以内のインフレターゲット2%達成をコミットしている黒田新体制は、徹底的な金融緩和でデフレ脱却を目指すことになるでしょう。まさに日本の金融政策の「政権交代」が起こったと言って良い出来事です。
これからは、黒田新体制の行動を期待を持って見ていきたいと思います。


この件について、いくつかブログ記事が出ています。


田中秀臣さん:岩田規久男日本銀行副総裁誕生 - Economics Lovers Live Z
walwalさん:黒田総裁、岩田規久男副総裁誕生 - くじらのねむる場所@はてな
arnさん:日本の『復活の日』 - A.R.N [日記]


さて、参院ではボタン式投票を導入していて、各議員の投票が公開されています。今回の日銀人事の投票結果も出ています。


黒田総裁:http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/vote/183/183-0315-v001.htm
岩田副総裁:http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/vote/183/183-0315-v002.htm
中曽副総裁:http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/vote/183/183-0315-v003.htm


ここで興味深いのは、民主、社民、生活、みどり、共産といった左派政党の投票です。リフレ派の岩田副総裁にはこれらの政党はすべて反対しており、日銀出身の中曽副総裁には共産を除き全て賛成しています。黒田総裁については民主が賛成、それ以外が反対ですが、前回の記事で紹介したように、民主党も4月の2回目の同意の時は不同意もあり得ると言っています。*1
つまり、これらの左派政党は全て反リフレの立場を取っていると考えられます。そして共産以外は日銀理論を支持していると思われます。
生活は消費税問題で民主と袂を分かった政党であり、その時は民主党内のリフレ派議員と共闘している人もいたのですが、今回の採決では反リフレになってしまいました。


この投票の偏りについては、id:shavetail1さんが分かりやすくまとめてくれています。


図1 参議院(3/15)での日銀正副総裁人事投票結果
表は、黒田・岩田・中曽各氏に対する各党の賛成投票結果(%)。
賛成は1票、棄権は1/2票としてカウントした。
なお既に民主党を離党している川崎・植松両氏は無所属とした。
得票実数は参議院第183回国会本会議投票結果を参照のこと。


覚えておいて損はない今日の各党の投票行動 - シェイブテイル日記 覚えておいて損はない今日の各党の投票行動 - シェイブテイル日記 覚えておいて損はない今日の各党の投票行動 - シェイブテイル日記



ここまで投票行動が揃うと、やはり日本の左派・リベラル派には共通して金融緩和への反発があると考えるしかないでしょう。昨年12/31の記事でも書いたように、金融政策による需要管理政策は本来はリベラルな政策であり、欧米では左派・リベラル派が主張する政策です。


経済学者の松尾匡さんは、欧米では金融緩和が左派側の主張で、中央銀行の独立が保守側の主張であるとはっきり言っています。

欧米では金融緩和は左派側の主張です
 このエッセーでは、何度も書いてきたことです。詳しくは、次のエッセーをご覧下さい。
日欧左派政党の金融政策論
欧州左翼はこんなに「金融右翼」だぞ〜(笑)
前回の続き──豪州・NZも労働党は景気刺激LOVE


 欧米でもオーストラリアやニュージーランドでも、保守派側が緊縮財政と金融引締めを志向して、なるべくインフレを抑えようとするのに対して、左派側や労働組合は、雇用の維持拡大のために、多少のインフレを認めて積極財政と金融緩和を求める傾向にあります。社会党系も共産党系もどちらもです。金融緩和反対などと言ったら新自由主義者と見られます。
 上記、11月24日エッセーではスウェーデン、11月30日エッセーについてはオーストラリアについて、リーマンショックのときに、インフレ目標政策のもと、大胆な金融緩和と積極財政で、危機を乗り切った例を書きましたが、このときスウェーデン社民党政権、オーストラリアは労働党政権です。


 ちなみに、インフレ目標政策はすべての先進国で採用されている標準的な金融政策です。


中央銀行の独立」は保守派側の主張です
 ヨーロッパの共産党の集まりである「欧州左翼党」は、欧州中央銀行の独立的性格を改め、欧州議会の民主的コントロールのもとに置くことを主張しています。欧州社会党は、ユーロ圏の財務大臣の会合をユーロ貨についての決定機関にすべきだと言っています。みんな欧州中央銀行の引締め的な金融運営のせいで労働者大衆が苦しんでいると判断して、その独立性を批判しているのです。
 新自由主義IMFを批判してきたことで知られる、ノーベル賞経済学者のスティグリッツさんは、中央銀行の独立性を批判しています。himaginaryさんの次の記事をお読み下さい。
himaginaryの日記(2013-01-10):スティグリッツ「中央銀行の独立なんかいらない」


「市民社会フォーラム」でインフレ目標政策を説いた件 「市民社会フォーラム」でインフレ目標政策を説いた件 「市民社会フォーラム」でインフレ目標政策を説いた件



何故日本の左派・リベラル派は、本来左派的な政策である金融緩和にここまで拒否感を示すのでしょうか。
そこに日本の左派・リベラル派の特殊性があり、昨年の民主党政権崩壊のように日本で左派政権が長続きしない理由もあるように思います。デフレを長引かせる政権は国民の不満を押さえることが出来ず、やがては支持を失うわけですから。
この疑問には僕もまだ答えを出せていませんが、かつて世界大恐慌時に旧平価での金解禁を強行して、昭和恐慌を招いてしまったかつての民政党から、ずっと続いている流れがあるような気がしています。

*1:ただし、民主からは11人欠席者が出ており、その中には党の方針に反対するリフレ派議員もいるでしょう。例えば台湾訪問を理由に欠席した金子洋一議員もその一人です。 (参考記事)http://www.jiji.com/jc/zc?k=201303/2013031500568