Baatarismの溜息通信

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消費税率を5%に戻せ

政府は来年2017年4月から消費税率を10%にあげる予定ですが、最近、それに対する障害が強まってきたと思います。

一つは2月末に行われたG20財務相中央銀行総裁会議で、各国に財政政策の実施が求められたことです。消費税増税は「逆財政政策」というべき政策ですから、その実施は国際的に見ても困難になったと言えるでしょう。日本は5月に伊勢志摩で行われるG7サミットの議長国となりますから、その国がG20の決定をに反する政策をしていては、各国の批判を浴びるでしょう。

中国・上海で開いた主要20カ国・地域(G20)財務相中央銀行総裁会議は27日夕、市場の安定のために金融政策、財政政策、構造改革の「すべての政策手段を用いる」とする共同声明を採択し、終了した。中国経済の減速や原油安を起点とする市場の動揺に対し、G20が断固とした態度で臨むことを示すことで不安の沈静化を狙う。


G20が閉幕、市場安定へ「すべての政策」 共同声明  :日本経済新聞 G20が閉幕、市場安定へ「すべての政策」 共同声明  :日本経済新聞 G20が閉幕、市場安定へ「すべての政策」 共同声明  :日本経済新聞



また、国内でも消費税増税に対する反対は高まっています。日経新聞世論調査では、消費増税反対が58%と急上昇しています。

日本経済新聞社世論調査で、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の評価がこれまでで最も低くなった。急激な円高・株安の進行などが背景にあるとみられ、追加の財政出動を伴う景気対策や2017年4月の消費増税の中止を求める声が多い。世界経済の不透明感が増すなか、安倍政権は経済成長と財政再建を両にらみしながら難しい経済運営を迫られている。


(中略)


 「新たな予算を追加して経済対策を行う必要がある」は47%に達し「必要でない」の35%を上回った。内閣支持層では58%、不支持層でも40%が「必要だ」と答えた。
 17年4月に消費税率を8%から10%に引き上げることに「賛成だ」が33%と、昨年12月の調査から9ポイント低下。「反対だ」は58%と11ポイント上昇した。


経済運営 一層難しく 本社世論調査、「消費増税反対」58%  :日本経済新聞 経済運営 一層難しく 本社世論調査、「消費増税反対」58%  :日本経済新聞 経済運営 一層難しく 本社世論調査、「消費増税反対」58%  :日本経済新聞



このような背景もあって、野党からの批判も強まっています。ただ、民主党は野田政権が消費税増税を決めたという事情もあって、はっきりと増税反対を打ち出すまでには至っていないようです。

 参院予算委員会は3日、安倍晋三首相と全閣僚が出席する2016年度予算案の基本的質疑を終えた。注目を集めたのは17年4月に予定する消費税率10%への引き上げ。経済の先行きが不透明だとして増税先送りも取りざたされる中、首相は「現段階では引き上げていく」と改めて強調。野党は首相の姿勢を相次いで批判した。7月の参院選をにらみ、与野党の神経戦が続く。
 共産党小池晃氏は3日、パネルを手に「消費税率を8%に引き上げて以来、個人消費は冷え込んでいる」と訴えた。消費税率を3%から5%に引き上げた1997年より、14年の方が家計消費の落ち込みが大きかったとして「増税をすべきではない」と強調した。
 日本を元気にする会の松田公太氏や、日本のこころを大切にする党の中山恭子氏も「個人消費の喚起が必要だ」などと増税反対で足並みをそろえた。首相が改憲勢力として期待するおおさか維新の会の片山虎之助共同代表も「税率を上げて税収が落ちるばかなことになる」と断言した。


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このように内外で消費税増税への障害が強まる中、安倍総理や菅官房長官の発言にも変化が見られるようになりました。

 安倍晋三首相は15日、衆院予算委員会の経済と地方創生に関する集中審議で、2017年4月に予定する消費増税について「8%への引き上げで、予想よりもはるかに消費の落ち込みが大きく長く続いた。国民に納得していただき、消費への影響にも配慮しなければならない」と述べた。


来年4月の消費再増税、首相「消費への影響配慮」 日本経済は堅調の見方 :日本経済新聞 来年4月の消費再増税、首相「消費への影響配慮」 日本経済は堅調の見方 :日本経済新聞 来年4月の消費再増税、首相「消費への影響配慮」 日本経済は堅調の見方 :日本経済新聞

 2017年4月に予定する消費税率10%への引き上げを巡り、安倍晋三首相の発言が注目を浴びている。首相は増税を先送りする状況として「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」と述べてきたが、年明けから「世界経済の大幅な収縮」とも言い始めた。財務省内閣府は「増税の判断は変わらない」とするが、与党内では増税先送りや、夏の参院選と合わせた衆参同日選の臆測もくすぶる。


消費増税、首相発言で臆測 予定通りか再び延期か  :日本経済新聞 消費増税、首相発言で臆測 予定通りか再び延期か  :日本経済新聞 消費増税、首相発言で臆測 予定通りか再び延期か  :日本経済新聞

 菅義偉官房長官は26日午後の記者会見で、来年4月に予定される消費税率10%への再引き上げについて「税率を上げて税収が上がらないようでは、消費税を引き上げることはあり得ない」と述べ、増税による買い控えなどで税収減が予想される場合、見送りもあり得るとの認識を示した。


税収減なら消費増税見送りも=菅官房長官 (時事通信) - Yahoo!ニュース 税収減なら消費増税見送りも=菅官房長官 (時事通信) - Yahoo!ニュース 税収減なら消費増税見送りも=菅官房長官 (時事通信) - Yahoo!ニュース

 安倍晋三首相は3日の参院予算委員会で、2014年4月に消費税率を5%から8%へ引き上げた後の経済動向について「予想以上に消費が落ち込み、それが現在まで続いている。予想以上に長引いている」との見解を示した。


8%増税「落ち込み予想以上」=安倍首相 (時事通信) - Yahoo!ニュース 8%増税「落ち込み予想以上」=安倍首相 (時事通信) - Yahoo!ニュース 8%増税「落ち込み予想以上」=安倍首相 (時事通信) - Yahoo!ニュース

 安倍首相が、2017年4月の消費税率10%への引き上げを先送りする場合の状況について、「世界経済の収縮」を条件に掲げ始めた。
 これまでは「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」が起きない限り、予定通り実施する考えを強調してきた。与党内では「首相は軌道修正を図っている。再増税を見送る可能性が高まっているのではないか」(自民党中堅)との見方も出ている。
 首相は最近の国会審議で、予定通り税率を引き上げる方針を明言する一方、「世界経済の大幅な収縮が実際に起きているかなど、専門的見地からの分析を踏まえ、その時の政治判断で決める」(24日の衆院財務金融委員会)などと強調している。26日の衆院総務委員会でも、「株価、市場変動のみでなく、実体経済にどういう影響が出ているかも含め考えないといけない」と語った。年初から急激な円高、株安が進み、世界経済が不安定になる中、再増税を既定路線にしたくないとの思いが強まっているようだ。周辺には「消費税を8%に引き上げたら景気が冷え込んだ。上げなければ、税収は今頃もっと増えていただろう」と、半ば悔やむように語っている。


消費増税、先送りの兆候?…首相の発言に変化 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 消費増税、先送りの兆候?…首相の発言に変化 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 消費増税、先送りの兆候?…首相の発言に変化 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)



特に最後の記事では、安倍総理が消費税を8%に引き上げたことが景気悪化の原因で、引き上げなければ税収がもっと増えていた、つまり引き上げたために税収が減ったと語っています。国会審議では野党の追及を避けるために言えないことですが、内心ではそう考えているのでしょう。
消費税増税が決定される時、リフレ派は1997年の消費税増税で税収が減少したことを反対の根拠の一つにしていましたが、やはり今回も同じことが起こっているのかもしれません。


このように消費税増税への反対はどんどん強まっていますが、ただ引き上げを延期や中止するだけで良いのでしょうか?
確かに景気は日銀のリフレ政策のために、白川総裁時代よりは良くなっています。雇用は大きく改善して、失業率も下がりましたし、最近は正規雇用も増えています。
ただ、消費はまだ低迷したままです。「景気が回復しても実感がない」という声も大きいですが、そのことは消費の低迷という形で表れていると思います。ここを改善しないと、国民に景気回復の恩恵が及んだとは言えないでしょう。そして、そのような形の景気回復は長くは続かないと思います。だから、今のうちに消費回復の手を打たないといけないでしょう。


リフレ派の代表的なエコノミストである片岡剛士氏によると、消費低迷の原因が消費税増税であることがデータにはっきり表れています。

2016年1月の家計調査の結果が総務省から公表された。二人以上の世帯を対象とした結果をみると、実質消費支出は前年比3.1%減、前月比0.6%減とさえない動きが続いている。実質消費支出から世帯規模(人員)の変動の影響や、人口の高齢化の影響を除いて推計される消費水準指数(季節調整済)の動きをみても、2016年1月の結果は前月比1%弱の増加であって、水準は2015年10〜12月期の平均値にも届いていない(図表1)。2014年4月以降家計消費は停滞したままL字型のような形で推移し、2015年9月以降さらに減少傾向にある。2016年1月の持ち直しの動きも鈍いと言えるだろう。


[http://www.murc.jp/uploads/2016/03/kataoka160304_1.jpg:image]


以上は商品を購入する家計側から見た消費の動きだが、売り手側からみた消費もさえない動きを続けている。図表2は経済産業省「商業販売統計」と総務省消費者物価指数」から実質小売業販売額の動きを試算した結果だが、2016年1月は前月比0.8%の減少となり、2015年10〜12月の平均を1.8%下回る。


[http://www.murc.jp/uploads/2016/03/kataoka160304_2.jpg:image]


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消費の底割れ、リーマン・ショック以来


 前回のコラムで指摘したとおり、2015年10〜12月期のGDP統計から得られる民間最終消費の動きは、統計的に見て2002年1〜3月期から2012年10〜12月期における前期比0.2%増のトレンドから有意に下ぶれたことを確認させる結果となった。図表で見るとわかりやすい。青い実線は家計最終消費支出の実績値、黒い点線は2002年1〜3月期から2012年10〜12月期のデータから計算した傾向線(トレンド)、二つの赤い点線で囲まれた部分は、家計最終消費のトレンドが統計的に成り立ちうる範囲(95%信頼区間)を示したものである。


[http://www.newsweekjapan.jp/kataoka/kataoka160302-graph01.jpg:image]


 アベノミクスが開始された2013年以降の消費の動きをみていくと、家計最終消費支出はトレンドを示す黒い点線から上ぶれる形で推移して、2013年4〜6月期以降はほぼ赤い点線上限近辺で推移していた。これは、アベノミクスにより家計最終消費支出の拡大が生じ、それが2002年から2012年までの家計最終消費支出のトレンドから統計的に有意な形で上ぶれつつあったことを意味する。

 そして消費税増税の駆け込み需要が生じた2014年1〜3月期には一時的に上限を上回った。しかし消費税増税後には動きが一変する。今度はトレンドを示す黒い点線から実績値が下ぶれて推移して、ついに2015年10〜12月期に家計最終消費支出は下限を下回ってしまったのである。これは統計的にみて「消費の底割れ」が生じたということだ。

 図表にはリーマン・ショック直後と東日本大震災の家計最終消費の値を明示している。東日本大震災が生じた2011年1〜3月期の値は大きく落ち込んだものの、赤い点線の下限を超えて落ち込むという「消費の底割れ」はかろうじて避けられた。統計的にみて、家計最終消費支出の底割れが生じたのはリーマン・ショックから1四半期程度経過した2009年1〜3月期である。2015年10〜12月期の家計最終消費は2002年以降のトレンドで見て、リーマン・ショック直後以来2度目の「消費の底割れ」が生じていることを示しているのである。

 こうした動きが常態化してしまうと、家計最終消費支出のトレンドは下ぶれし、それが家計最終消費支出のさらなる停滞につながってしまう。2016年1月も2015年に引き続き低調な結果に終わり、その後も十分な回復が見込めない状況が続けば、家計最終消費支出は前期比0.2%増のトレンドから更に下ぶれる可能性が強まる。早期に対策を行うことが今求められているのである。


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このようにグラフを見れば一目瞭然で、消費税率を8%に引き上げたと同時に消費低迷が始まり、それが今までずっと続いていることがわかります。最後のグラフによると、現在の消費の低迷は東日本大震災の時よりもひどく、リーマンショック以来の水準であることがわかります。
安倍総理は「リーマンショックや大震災のような事態が起きない限り、消費税の再増税を延期しない」*1と言っていますが、消費の面から見れば、消費税増税自体がこれらの事態に匹敵する問題を引き起こしていると言えるでしょう。


そして片岡氏は、消費拡大のための政策として、消費税率を5%に戻すことを提唱しています。

消費拡大のための財政政策とは


 さて、先程述べた金融政策・財政政策のシナリオを考慮しつつ、家計消費を再拡大させるための財政政策はどうあるべきか。財政政策のメニューは、定額給付金社会保険料の一時的減免、低所得労働者を対象とする給付付き税額控除など様々なものが考えられるが、最も効果が大きいと考えられるのは「消費税減税」だろう。消費税減税のメリットは、簡明かつ現下の家計消費の落ち込みに直接影響を及ぼせることだ。わが国の総需要(実質GDP)と総供給(潜在GDP)の差であるGDPギャップは、内閣府の試算によれば7兆円弱のデフレギャップ(総需要不足)の状況にある。
 また図表における家計最終消費の2015年10〜12月期実績値と、2015年10〜12月期のトレンドとの差を計算すると、現状の消費をトレンドの水準まで復帰させるために必要な金額は8.1兆円だ。消費税率1%に相当する税収を2.7兆円とすれば、8%から5%への消費税減税の規模は8.1兆円(2.7兆円×3=8.1兆円)となる。以上からはデフレギャップを埋め、かつ「消費の底割れ」が生じている家計最終消費支出をトレンドに引き戻すためには8%から5%への消費税減税を行う必要があることがわかる。


 そして金融政策・財政政策のシナリオ、ポリシーミックスを考慮すれば、次のような政策を実行することが必要ではないか。


・日銀が2%インフレ目標を達成・安定化するまでの期間(具体的には2016年度、2017年度)の時限措置として政府は8%から5%への消費税減税(財政政策)を行う。
・日銀は展望レポートで示しているとおり2%のインフレ目標を2017年度前半中に達成することに全力を尽くす。なおインフレ率の基調判断は、消費税減税による物価押し下げ効果や原油価格の影響を差し引いた上で行う。
・2%インフレ目標達成から半年間の経過期間を置いてデフレからの完全脱却がなされたことが確認された場合、改めて毎年1%ずつのペースで消費税増税を行う。
・最終的に8%まで消費税率を戻しつつ、物価や経済動向を勘案しながら、日銀は段階的に出口政策に踏み込む。


 2年間の限定で消費税減税を行うために必要な財源は、8%から5%への引き下げの場合は累計16.2兆円となる。減税を行えば経済成長も高まり、デフレ脱却が進むことも相まって税収も増加することが見込まれる。合わせて外国為替特別会計に眠る内部留保(積立金)22.7兆円(2015年3月末時点)や、政府資産の売却を前倒しで実行していくこと、さらに長期金利がマイナス金利に突入する状況下ならば国債を増発して財源に充てることも検討に値するだろう。
 消費税増税社会保障の財源を確保することが目的だが、消費税そのものには、低所得者ほど負担率が高まる逆進性の問題や、消費税率を引き上げるたびに経済の落ち込みが深刻となる、税率を引き上げるほど益税に代表される税の不公平が助長されてしまう、といった様々な問題点を抱えている。社会保障の財源を消費税増税に頼るのではなく、経済成長による税収増や現行の相続税を廃止の上で新たに100兆円とも言われる相続対象資産に一律に20%の税率を課すといった対策を行えば、消費税率は5%据え置きでも問題ないと筆者は考える。こうなれば、消費税率を8%まで引き上げる必要もないため、日銀は財政政策の影響を考慮することなく、出口政策に集中することが可能となるだろう。


消費低迷の特効薬は消費税減税だ | 片岡剛士 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト 消費低迷の特効薬は消費税減税だ | 片岡剛士 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト 消費低迷の特効薬は消費税減税だ | 片岡剛士 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト



現状の消費をトレンドの水準まで復帰させるために必要な金額と、8%から5%への消費税減税の規模が同じ8.1兆円というのは、出来過ぎなくらいの一致ですが、規模の面から見ても、今の消費低迷が「消費税で家計からお金を奪われている」ために生じていることを、示していると思います。
片岡氏は消費税の5%への減税を時限措置としていますが、デフレからの完全脱却がなされたことが確認されるまでは消費税増税をしないこと、別の方法で社会保障の財源が得られるのであれば消費税増税にこだわる必要はないことも主張しています。
僕はよほど景気が過熱しない限りは、これ以上の消費税の引き上げは止めて、経済成長や相続税など、別の方法で財源を確保すべきだと思います。そしてもし消費税を上げる場合でも、片岡氏が言うように1%づつの引き上げとするべきでしょう。消費税増税にはそのくらいの慎重さが必要だというのが、今回の消費税増税の失敗から学ぶべき教訓だと思います。


以前は、僕も消費税率の引き下げは困難だと考えていて、それ以外の財政措置で増税ショックを和らげれば良いと考えていました。*2ただ、そのような方法は一時的な措置になりがちですし、実際に予算の細部を決める財務省が、こっそり予算の効果を弱める工作をすることも考えられます。*3
だから、財務省の工作が不可能で、永続的な措置とすることも可能な、消費税減税こそが最も良い方法だと考えるようになりました。


安倍政権にとっても、野党が消費税増税見送りを主張している今となっては、見送りだけでは選挙に勝つための十分な優位は得られないでしょう。それを上回る消費税減税という政策を出してこそ、有利な立場に立つことができます。また、消費税減税という最良の財政政策を行うことは、世界経済の回復に対して日本が積極的に貢献していることを示すことになるでしょう。

もちろん、野党が先手を打って消費税減税を主張しても良いです。それで安倍政権が選挙に負ければ、消費税減税を受け入れざるをえないでしょう。
民主党馬淵澄夫氏は、すでに消費税の5%への引き下げを主張しています。このような意見を民主党執行部が取り入れてくれれば良いと思います。もっとも、民主党では消費税増税を決定した野田政権時代の幹部が今も大きな力を持っていますから、この馬淵氏の提言が受け入れられる可能性は高くないと思いますが。

また、争点設定もそうなると、現今の景気回復への足踏み状況から、「消費税」となることはほぼ間違いないだろ。
 消費税の再凍結。
 そして、さらに、引き下げへ。
10%引き上げは、凍結。これは当然やってくるだろう。そしてさらに、現行8%から特例2年間の5%への引き下げ措置。14年に上げた3%はやはり消費に大きなインパクトを与えてしまった。正直少し早まったといえる。従って、景気回復のために2年間の特例措置で5%へ引き下げる。というものだ。
 財政当局や財政健全化路線で洗脳されてしまっている輩は、猛然と反論するだろうが、政策オプションがさりとてない状況では十分考えられる政策だ。うかうかしてられない。
ダブル選挙は、憲法でも何でもなく、いきなり、消費税をどうするかという景気対策ど真ん中路線を、争点化される。のんきに構えている場合ではない。いち早く、民主党が、凍結のみならず引き下げまで検討、言及すべきだ。


消費税引き上げ凍結どころか引き下げへ: まぶちすみおの「不易塾」日記 消費税引き上げ凍結どころか引き下げへ: まぶちすみおの「不易塾」日記 消費税引き上げ凍結どころか引き下げへ: まぶちすみおの「不易塾」日記



この馬淵氏のような考え方が、与野党を問わず広がってくれることを望みます。
それが人々の生活を改善し、ひいては日本のため、世界のためとなる政策でしょう。

3/6 追記

今回の記事では消費税増税が消費に与える悪影響を中心に説明するため、片岡剛士氏の記事を紹介しましたが、以前からリフレ派は消費税減税が必要だという主張をしています。以下の2つの記事はどちらも2014年のものです。


田中秀臣氏(2014/11/17)

 さらに注目すべきは消費の弱さだ。第2四半期ほどの落ち込みではないが、それでもわずかにプラスになっただけだ。この背景には、消費増税によって実質所得が恒常的に減少している可能性がある。つまり多くの消費者は増税の効果が長期に続くと予想し、自らの財布のひもをきつく締め続けることを意味している。消費増税の悪影響が短期間のものではない可能性を示唆している。
 純輸出も弱く、政府最終消費支出も弱い。政府の財政政策は公共事業中心だが、その効果は乏しいものがある。むしろ消費増税の悪影響を取り除くためには、政府は実質的な減税政策(各種の所得補助金)を中心に行う必要があり、筆者の私見では消費再増税よりもむしろ消費減税が必要な局面とさえいえるだろう。
 雇用状況は堅調なようでいても、経済指標の性格から実体経済を遅れて反映する。このようなリセッションを放置していれば、やがて確実に雇用面にも深刻な影響を生じるだろう。


景気後退局面か GDP速報値大幅減が示唆 消費増税で深刻な経済悪化を招いた財務省の罪 | ビジネスジャーナル 景気後退局面か GDP速報値大幅減が示唆 消費増税で深刻な経済悪化を招いた財務省の罪 | ビジネスジャーナル 景気後退局面か GDP速報値大幅減が示唆 消費増税で深刻な経済悪化を招いた財務省の罪 | ビジネスジャーナル



高橋洋一氏(2014/9/18)

 ちなみに、筆者が潜在GDPを試算し、実際のGDPとのギャップを見ると図3の通りだ。


[http://dol.ismcdn.jp/mwimgs/f/7/600/img_f7a4496245b8a5b0b75828884bd90f4a33317.jpg:image]


 今のところギャップは12兆円ほどある。これは内閣府のものとほぼ同じはずだ。消費増税は駆け込み需要とその反動減、可処分所得の減少よる需要減を招いたが、上の図で、増税以前の傾向が続いていれば、いまごろは、需給ギャップがほとんどなくなっていただろうことも推測できる。

 昨年は、金融政策と財政政策を一体として発動したので、いい景気だったが、今年4月から、金融政策は同じだが、財政政策が一転して緊縮政策になったため、景気が低迷している。これをもう一度よくするためには、昨年と同じような政策が必要である。それは消費増税をなしとする政策である。

筆者はこれまでも言ってきたが、今となっては最善の手は、5%への消費減税。それができないときには、軽減税率を導入して、全品目5%の軽減税率の適用。それもダメなら、97年増税時には先行所得減税だったが、今回は事後所得税減税。それもできないなら、これまで増税した分をすべてはき出すような減税と財政支出だ。


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消費税減税という主張が消費税増税の直後から出ていたことを、これらの記事は示しています。将来を的確に予想した記事だったと思います。