Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

民主党が政府と日銀のアコードを主張?

政権交代の可能性が高まっている中、民主党の経済政策についてチェックしているのですが、先日、大塚耕平・政調副会長が興味深い発言をしていました。

 [東京 7日 ロイター] 民主党大塚耕平・政調副会長は7日午前、市場関係者への衆院選マニフェスト政権公約)説明会で、金融政策に関連して、日銀の独立性を尊重する考えを示したうえで、厳しい経済状況を克服するために、マクロ経済運営で中央銀行当局と財政当局間で共通価値観、何らかのアコードはあり得ると述べ政策目標の共有を示唆した。

UPDATE2: マクロ経済運営で中銀と財政当局間でアコード設定も=大塚・民主党政調副会長 | Reuters



私はずっと大塚氏のことは批判してきたのですが、この発言にあるような、政府と日銀のアコードの間でアコードを結んで統一された経済政策の目標を設定することは、リフレ派の間でもずっと主張されていたことです。だから、民主党政権になってアコードが実現するのであれば、そのこと自体は歓迎したいと思います。
ただ、問題はアコードの中身でしょう。もしこれがインフレ率を消費者物価指数(CPI)で0%に抑えるような目標であれば、それは実質的にデフレを維持することになるので*1、そんな目標は有害と言うしかないでしょう。また、日銀のバランスシートに制限を加えるような内容も、経済危機が続いている現状を考えれば好ましくないでしょう。一方、インフレ率を2%以上のプラスの数字に設定するような目標や、2%以上の実質経済成長率を設定するような目標であれば、好ましいと言えるでしょう。
従って、このアコードを評価するかどうかはその中身次第ということになるのですが、これまで円高や利上げなどの引き締め政策を主張してきた民主党と、バランスシート拡大を全く行っていない日銀*2が結ぶアコードですから、景気回復に繋がる内容にならないのではないかと疑ってしまいます。


この大塚氏の発言には<中央銀行を財政当局の「打ち出の小づち」にはしない>、<国債依存度・国債発行額とも前年下回る方向で努力>というような財政や金融の引き締めを思わせるような部分がある一方で、<デフレ対策は必要>というような発言や、<外貨準備の運用、日米関係が外交の基本を踏まえ対応>というような米国債の買い控えを否定するような部分もあります。だからこれが民主党の経済政策が現実的になったことを意味するかどうかは、まだまだ慎重に(=生暖かい目で)見守っていく必要がありそうですね。

*1:CPIには1%程度の上方バイアスがあり、本来のインフレ率よりも高めに出る指標だと言われています。

*2:http://d.hatena.ne.jp/Yasuyuki-Iida/20090809#p1を参照のこと。

自民党の経済政策雑感

民主党ばかり取り上げるのも何なので、自民党も取り上げてみます。

 [東京 31日 ロイター] 麻生太郎首相は31日、党本部で会見し、8月30日の総選挙に向けた自民党マニフェスト政権公約)を発表した。

 今後2年間は経済対策に重点投資を続けることで「2010年度後半には年率2%の経済成長を実現する」ことを明記、3年間で40─60兆円の需要を創出して概ね200万人の雇用を確保する。消費税を含む税制抜本改革については、「経済状況の好転後、遅滞なく実施する」ことを盛り込んだ。

経済成長政策を継続、来年度に年率2%成長実現=自民・マニフェスト | Reuters



この記事にあるように、自民党マニフェストで2010年後半に経済成長率2%の達成を公約として掲げています。
ただ、この公約を達成するためには実質1年で景気を回復させなければならないわけですから、そのためには金融政策と財政政策の両方を徹底的に行う必要があるでしょう。そのような政策としてもっとも効果が大きいのは、(政府と日銀を合わせた)広義の政府が通貨を発行して、公共投資や給付金・減税を行うシニョレッジ政策だと思います。
しかし、シニョレッジ政策の具体的な方法である政府紙幣の発行や日銀の国債引き受けについて、これまで麻生政権は否定的でしたし、選挙公約でもそのような主張は打ち出していません。
だから、「2010年後半に経済成長率2%の達成」という目標についても、そのために最も効果的な政策を否定してしまっている以上、その実現性は疑問だと思います。