Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

混迷するアコード論議

9/6の記事大塚耕平参院議員(今は内閣副大臣)の日銀と政府とのアコードに関する発言を紹介しましたが、その後この話は混迷しているようです。

 民主党の金融政策のキーマンと目される大塚耕平・政調副会長が、自ら主張した日銀との「アコード(政策協定)」の必要性について「火消し」に回っている。財源が不明確な民主党の財政政策について、「国債の増発につながる」との懸念があり、大塚氏のアコードが日銀による長期国債の買い取り増額などの「圧力」と受け取られた。発言後、金融界などから批判が続出したためだ。9月に入ってから大塚氏は自身のホームページなどで弁明している。

民主党は日銀の独立性を尊重、為替は経済実勢で決まるのが自然=藤井財務相 | Reuters

今日の大手紙及びその関連紙が、「アコード」に関連した動きについて興味深い報道をしていました。おもしろく読ませて頂きましたが、記事にあるような「批判続出」ということは全くありません。「火消しに奔走」という事実もありません。日銀からのクレームも一切ありません。記事を書いたと思われる記者からの取材もありません。驚くべきことです。マスコミの体質は社会にも大きな影響を与えますので、報道の質の向上に真面目に取り組んでいる記者、正当派のジャーナリストの取材にはできる限り応じていきたいと思います。

今日の大塚耕平: 9月11日、事実関係。



このように産経新聞の報道を大塚氏が真っ向から否定する状況になっているわけですが、こうなるとこの記事の出所が気になりますね。一番ありそうな可能性は、日銀が真っ向から大塚氏に反論するのではなく、親しい新聞記者にリークする形で圧力をかけようとしたということでしょう。これまでも日銀は重要決定をマスコミにリークしたのではないかという疑いを何度もかけられていますから。
これまでこのブログでは何度も大塚氏を批判してきましたが、今回はこのような怪しい記事に負けないよう、大塚氏に頑張って欲しいところです。
なにしろこの産経の記事は、用語説明という客観的な形を装って、アコードに関する一方的な考え方を押しつけるようなこともしていますから。

【用語解説】アコード

 政府と中央銀行が、協調して政策を協調して進める場合などに結ばれる協定。1951年に米財務省米連邦準備制度理事会FRB)で結んだものが最初とされ、当時はFRB国債の引き受けをやめ、政府から独立する内容だった。中央銀行国債を引き受ける趣旨のアコードを結べば、独立性が失われる可能性がある。

http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200909110006a.nwc

そもそもアコードというのは、政府と日銀が経済政策の目標を合わせるための取り決めであり、中央銀行国債を引き受けないから独立性が守られ、中央銀行国債を引き受けるから独立性が失われるといったものではないはずです。中央銀行国債を引き受けても、それが政府と日銀の合意(これがアコード)によるものであり、何らかの歯止め(インフレターゲットもその一つ)があるのであれば、独立性が失われることにはなりません。

藤井財務相の金融政策についての理解

そして、このようなアコードに関する考え方からすると、この藤井裕久財務相の発言も気になってしまいます。

 こうした企業金融支援措置延長の是非について藤井財務相は「政府の一員の立場でコメントは控える」としながらも、「民主党は日銀の独立性を強く考えている」とも語り、日銀の判断を尊重する考えを示した。

 さらに、日銀法では、金融政策については「日銀がよく考えろと書いてある」と指摘。「政府が命令しろとは書いてない」と述べ、政府が日銀の判断に介入すべきではないとの認識をあらためて強調した。

民主党は日銀の独立性を尊重、為替は経済実勢で決まるのが自然=藤井財務相 | Reuters



日銀法の条文を見ると、このように書いてあります。

第1章 総則


(目的)
第1条  日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
2   日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。


(通貨及び金融の調節の理念)
第2条  日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。


日本銀行の自主性の尊重及び透明性の確保)
第3条  日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。
2   日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない。


(政府との関係)
第4条  日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。


(業務の公共性及びその運営の自主性)
第5条  日本銀行は、その業務及び財産の公共性にかんがみ、適正かつ効率的に業務を運営するよう努めなければならない。
2   この法律の運用に当たっては、日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない。

http://www.boj.or.jp/type/law/bojlaws/bojlaw1.htm



日銀法の第4条には「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」とありますが、日銀の政策が政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるようにするためには、政府も日銀に求めることは言わなければなりませんし、日銀も必要な要求は取り入れなければなりません。藤井大臣のように「政府が日銀の判断に介入すべきではない」と言ってしまうと、政府が日銀に何も言えなくなってしまい、日銀の政策が政府の経済政策の基本方針と整合的なものにならない恐れがあります。


また、この発言にはつぎのような内容もあります。

 円高が進行している為替相場については「円レートの額について、政府が言うべきではない」としたうえで、「(為替は)経済の実勢に合わせて決まるのが自然な姿」と述べた。そのうえで「人為的に通貨安競争を行うことは世界経済にとって良くない」と述べ、為替介入に否定的な見方をあらためて強調した。ただ、「円高是認と書かれるのはつらい」と語った。

民主党は日銀の独立性を尊重、為替は経済実勢で決まるのが自然=藤井財務相 | Reuters

「(為替は)経済の実勢に合わせて決まるのが自然な姿」と言っていますが、実際には為替相場は各国の金融政策にも大きく左右されます。今は欧米諸国が金融危機対策のためマネー供給を大幅に増やしているのに対して、日銀はほとんどマネー供給を増やしていませんので、それが円相場に大きな影響を与えています。
このような藤井大臣の理解は、為替相場が金融政策に左右される実態を無視した理想論*1であり、このような実態を無視した考え方で経済政策を語って欲しくはありません。
このような発言も、藤井大臣が金融政策の重要性を軽視している表れであるように思います。だから「金融政策については『日銀がよく考えろと書いてある』」なんて他人事みたいな発言も出てくるのでしょうね。

*1:「自然な姿」という言葉も理想論であることを示しているのでしょう。

韓国当局が世界ウイグル会議事務局長を一時拘束

あまり日本では知られていないニュースですが、韓国でこんなことがあったそうです。


http://kok2.no-blog.jp/tengri/2009/09/rokdetaindolkun.html
http://kok2.no-blog.jp/tengri/2009/09/wsjdolkunleftro.html


アムネスティの働きかけもあって無事解放されたようですが、韓国はなぜこんなことを行ったんでしょうねえ。まだまだ人権問題への関心が薄いのでしょうか?