Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

四川大地震で報道される地域と報道されない地域

四川大地震の報道をずっと見ていて気づいたのですが、震源地の汶川(ブンセン)から南東側の平野部については様々な報道が流れているのに対し、北西側の山岳部についてはほとんど報道が行われていません。南東側の平野部は漢族が多く、北西側の山岳部はチベット人が多い地域です。
その理由を説明してくれそうなニュースが、昨日報じられていました。

 【九寨溝(中国四川省)=加藤隆則】大地震の発生した四川省アバチベット族・チャン族自治州で、外国人記者の取材規制通達が出されていることが20日、明らかになった。

 同州当局によると、通達は17日、同省外事弁公室から「3月14日のチベット暴動以降、治安が悪化しているため、外国メディアの取材には申請が必要」と同州に伝達。同州九寨溝県に19日入った記者(加藤)は通達違反を指摘された。震災による混乱に乗じ、反政府デモが再燃することに神経をとがらせる当局の危機感を反映している。

 また、3月にチベット族の反政府デモが起きた同州のアバ、紅原、ゾルゲ各県では、県境に検問が設置され、「安全のため」として立ち入りが認められていない。

 外国メディアの取材については昨年1月1日以降、北京五輪に向けた中央政府の対外開放策として、従来必要だった地元政府への申請や事前許可が不要となっていた。
(2008年5月20日20時51分 読売新聞)

四川省のチャン族自治州、外国人に取材規制…デモ再燃恐れ

この取材規制が行われている四川省アバチベット族・チャン族自治州は、正に汶川(ブンセン)から北西側の地域に当たります。*1
外国メディアの取材が規制されていると言うことは、国内メディアについても当局による何らかの規制が行われていると考えて良いですから、震源の北西側の報道がないのは、中国政府の規制によるものだということになります。
メディアの目が届かない地域で、救援活動のために大量に動員された軍や武装警察が、チベット人に対して何をしているのか、非常に気になるところです。
アバチベット族・チャン族自治州の西に隣接する甘孜(かんし)チベット族自治州では、地震発生後にもかかわらずチベット人デモの鎮圧が行われたという情報も、チベット亡命政府側から入ってますしねえ。(地震発生は12日ですから)

 【香港支局】米政府系放送局「ラジオ自由アジア」がチベット亡命政府関係者の話として13日伝えたところによると、中国四川省の甘孜(かんし)チベット族自治州甘孜県で11日から13日にかけて、チベット族住民が信教の自由などを求めるデモを行い、少なくとも27人が公安当局に拘束された。

 中国政府は3月のチベット自治区での暴動鎮圧後、チベット族住民による抗議行動の防止に躍起になっているが、依然として封じ込められていない模様だ。

 同放送局によると、デモにはチベット仏教の僧侶や尼僧も参加。街頭で中国政府による宗教弾圧を批判するビラをまいたり、シュプレヒコールを上げながら行進したりしたという。
(2008年5月15日01時01分 読売新聞)

四川省の自治州でチベット族がデモ、27人拘束か


5/24追加

【四川大震災】Aさんの現地報告04・下 - 日々是チナヲチ。」で知ったのですが、rengeさんという方が御手製の被災地マップを作成しておられます。これは非常に分かりやすいですね。震源地より北西側の情報がほとんどないことがよく分かります。


http://www-2ch.net:8080/up/download/1211515718224883.nN7n7W

5/26追加

rengeさんの被災地マップが更新されてました。アバチベット族自治州の死者数が約13000人増えて、17000人になったそうです。ここまで急に数字が増えると、当局の数字操作を疑ってしまいますね。


http://www-2ch.net:8080/up/download/1211700712739084.19xPi3

*1:四川省の地理については「http://www.allchinainfo.com/archives/97」が参考になります。