「事業仕分け」の裏側は?
11/11から行政刷新会議による「事業仕分け」が始まりました。誰でも自由にその様子を見物できることから、マスコミ報道ばかりでなく、twitterによるリアルタイムの中継(いわゆる「tsudaる」)も行われ、世間の評判を集めています。僕も昨日twitterを見ていたところ、科学技術分野の事業が軒並み切られていく様子を嘆く発言が多く「つぶやかれて」いました。
ただ、「事業仕分け」も全ての事業を対象にしているわけではありません。事業仕分けによる予算削減の目標が3兆円ということですが、来年度の予算総額は90兆円を超えるとも言われていますから、3兆円はわずか30分の1に過ぎません。従って、「事業仕分け」で取り上げられるのは、全事業のほんの一部と言うことになります。それでは、誰が「事業仕分け」の対象となる事業を選別したのでしょうか?
また、1日に何十件もの事業を仕分けするわけですし、1件にかけられる時間はわずか1時間ですから、どうしてもあらかじめ論点を整理したり、問題点を指摘しておく必要があります。「事業仕分け」の結果はそのような作業に大きく左右されると考えられますが、その作業を行っているのは誰なのでしょうか?
そのような作業を行っている「裏方」が誰なのか、伺うことが出来る記事を見つけました。*1
旧大蔵省出身の加藤秀樹行政刷新会議事務局長は9日、都内の日本記者クラブで講演し、仕分け対象の447項目について「国の事業の1割にも満たない。材料がすべて出ているとは思えない。来年度以降、第2弾、第3弾をやる」と息巻いた。加藤氏のもと仕分け対象の選定は財務省主導で進んだ。
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091109/stt0911092101009-n1.htm
財務省主計局は10月中旬、財政健全化を目指して総額5・3兆円の候補リストを刷新会議に報告、事業別にランク付けするサービスまでしてみせた。民主党支持の有力団体、日本教職員組合(日教組)は、「義務教育費国庫負担金」の国の負担率アップを求めていたが、対象事業として俎上(そじょう)に載り、「削減を目指す財務省の意見の方が通った」(党中堅)とされている。
十一日に始まった行政刷新会議による「事業仕分け」は、対象となった事業の多くが「廃止」や「予算縮減」と結論づけられ、予算圧縮を進めたい鳩山内閣にとって上々の滑り出しとなった。しかし、この日、議論をリードしたのは財務省主計局。脱官僚を掲げるものの、時間的、人的な制約から主計局に頼らざるを得ない鳩山内閣と、予算圧縮を強力に進めたい主計局の思惑が一致した形となっている。 (清水俊介)
事業仕分けはまず、要求側の省庁が事業の必要性を説明。その後、財務省の主計官が査定担当として、削減の必要性を説明し、議論が始まる。「(厚生労働省の健康増進対策費は)国がする必要があるのか」
「(農林水産省の田園整備事業の)新規施設整備は不要ではないか」
主計官の説明は、膨張した予算の概算要求をとにかく削り込みたい行政刷新会議側にとって、心強い言葉のオンパレードだった。
この日の作業には、仕分け対象事業の目的や予算額が記載された「施策・事業シート」とは別に、主計局が作成した「論点等説明シート」も配布された。
ある主計官は「通常の査定にあたり、要求官庁に対して投げかける疑問点などをまとめた」と打ち明ける。このような論点ペーパーを同省が公表することは珍しく、効果は絶大だった。
仕分け人らから投げかけられる質問の多くは“主計官による視点”。論点ペーパーに挙げられた個別の施設名や数字を参考にして質問する仕分け人が多く、議論をリードしたのは実質的に論点ペーパーとも言えた。
財務省幹部は「こちら側が紙を出したから、議論がスムーズに進んだ」と振り返る。事業仕分けに参加した主計官は「ここで出た決定は当然、重い」と、財務省にとって、刷新会議の“お墨付き”を得たことに満足そうだった。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2009111202000066.html
これらの記事にあるように、「事業仕分け」の候補リストを作ったのは財務省主計局でした、そして議論も財務省主計局が作成した「論点等説明シート」に沿って進み、結果が出ているようです。そしてその結果は、財務省にとって刷新会議の「お墨付き」となるようです。
つまり「事業仕分け」を裏側で仕切っているのは財務省主計局ということになります。このような話を知ってしまうと、大々的に報道されている「事業仕分け」も、所詮財務省の掌の上かと思って、白けてしまいますね。
もちろん個々の事業については、予算削減や事業廃止となるのが納得できるものも、疑問が残るものもあるでしょう。しかし、いずれにせよ、誰がどのような意図でこの「事業仕分け」を行ったのか、知っておいた方が良いと思います。
こういう実態を見ていると、民主党が主張していた「脱官僚」は、単なるポーズでしかなかったと判断するしかないでしょうねえ。
*1:東京新聞の記事は、元々上野泰也氏の記事で知った話です。(「火種」を打ち消そうとする「キャッチャー」 藤井財務相発言 | JBpress(日本ビジネスプレス))