Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

安倍政権と日銀の今後は?

NIKKEI NETのコラム「NET EYE プロの視点」によると、安倍政権になってからの経済財政諮問会議は、経済成長を重視する委員ばかりとなり、それに異を唱える福井日銀総裁が孤立しているそうです。


NET EYE プロの視点 - 「アベノミクス」に待ったかけた福井俊彦の蛮勇(10/27)


これまでずっと利上げを焦っては景気回復の芽を摘んできた日銀の意見が経済財政諮問会議で力を失うのは誠に結構なのですが、だからと言って安倍政権がまともな経済政策を打ち出しているかというと、そういうわけでもないようです。


id:econ-economeさんによると、安倍政権は潜在成長率を政策目標とする経済政策を行うようです。


http://d.hatena.ne.jp/econ-econome/20061029/p1
http://d.hatena.ne.jp/econ-econome/20061030/p2
http://d.hatena.ne.jp/econ-econome/20061031/p1


ただ、id:econ-economeさんも指摘されているように、需要が伸びなければ潜在成長率は実際の成長率には繋がらず「潜在」のままで終わってしまいますから、実際に景気を回復させるためには需要を喚起するための政策も必要です。具体的には財政政策か金融政策ということになりますが、政府は歳出削減を行う方針ですから、財政政策については期待できないでしょう。
一方、金融政策ですが、日銀は常に利上げの機会をうかがっていますので、少しでも景気が回復したりインフレ率が上昇すれば、利上げを行おうとするでしょう。もちろん政府はそれに反対しますが、そのような反対が大きくなるほど日銀は「独立性を守るために政府の言うことを聞いてはならない」思うようになり、利上げに固執するでしょう。だから金融政策も期待できないことになります。
これを避けるためには、やはりid:econ-economeさんが指摘されているように、インフレターゲットの導入と、政府と日銀との適切なアコードが必要だと思いますが、残念ながら安倍首相はインフレターゲットには否定的のようです。

「デフレ脱却していない」=インフレ目標設定も否定−安倍首相

 安倍晋三首相は31日、英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューに応じ、安倍政権が公約に掲げる今年度中のデフレ脱却宣言について「まだデフレ脱却の目標には達していない」と指摘、同宣言の時期は慎重に判断する姿勢を示した。首相自身が就任後、デフレ脱却宣言は時期尚早との認識を示したのは初めて。
 首相はまた、日銀内に追加利上げを模索する動きがあることについて「金融政策の手段は日銀が判断すること」としながらも、「日銀には金融政策で経済を下支えしてもらいたい」と語った。
 一方、「日銀にインフレ目標設定を期待するか」に関して首相は「そうは考えていない」と否定的な考えを示した。 


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061101-00000011-jij-pol



しかし政府としては来年の参院選に勝利するために景気を回復させたいですから、参院選が近づくにつれて、景気回復を重視する政府と利上げを重視する日銀の対立は高まっていくでしょう。
もし参院選で与党が負ける事態となれば、日銀の財政政策が敗北を招いたとして、自民党からは大きな批判が寄せられるでしょう。その場合安倍内閣は退陣となりますが、自民党政権は存続しますから、2008年初めに行われる次期日銀総裁選出では、報復があるのかもしれません。w