定額給付金と消費税減税
麻生政権が景気対策として打ち出している2兆円規模の定額給付金に対する批判が、与野党やマスコミ、世論で高まっているようです。
様々な報道を見ていると、主な批判としては、以下のようなものがあるようです。
- いわゆる「バラマキ」政策そのものに対する批判。
- 高所得者にも給付金を配布することに対する批判。
- 窓口となる市町村の事務負担や混乱に対する批判。
- 景気対策として実効性があるのか疑わしいという批判
- 住所が存在しない、もしくは現在いる地域と異なる人(ホームレスやネットカフェ難民、住民票を移していない非正規雇用者など)には支給できないという批判
これらのうち、いわゆる「バラマキ」政策そのものに対する批判はイデオロギー的な批判なので、麻生総理も無視するしかないでしょう。
しかし、それ以外の批判には一理あるので、これらは定額給付金という手法における問題点だと思います。(景気対策としての実効性は全くないとは言えませんが、どの程度消費に回るのかという疑問はあるでしょうね)
一方、何故今回の景気対策において、これまで行われてきた所得減税ではなく定額給付金が選択されたかというと、所得減税では所得税の課税制限以下の低所得者層には恩恵が及ばないからです。そのような層に恩恵が及ばすことができることは、定額給付金の利点でしょう。
ということは、もし上に挙げたような定額給付金の利点を持ち問題点を持たない方法があれば、そっちの政策の方が好ましかったことになります。
そのような政策として考えられるのが、消費税減税です。
まず、日本に住んでいて消費税を納めていない人はいませんから、所得税の課税制限以下の低所得者層にも恩恵が及びます。特に住所が存在しない、もしくは現在いる地域と異なる人にも恩恵が及ぶことは、定額給付金にはない利点でしょう。
また、消費税減税は高所得者層にも恩恵は及びますが、一般に消費性向は低所得者層のほうが高いですから、恩恵は低所得者層の方が大きく、これも利点となるでしょう。
また、単に既存の税金の税率を変更するだけですから、定額給付金よりは事務負担や混乱も少ないでしょう。
景気対策という意味でも、1997年の消費税増税が当時景気を悪化させる主要な要因の一つとなったことを考えれば、消費税減税の景気への実効性は疑いなくあるでしょう。最近の石油やその他資源、食糧の高騰が消費を冷え込ませたことを考えると、消費税減税でそれを相殺することは、景気にプラスだと思います。
そのように考えれば、麻生政権は定額給付金よりも消費税減税を選択すべきだったと思います。一般に消費税1%分は2兆円の税収に相当すると言われてますから、財源が2兆円なら消費税を1%減税して4%にすれば良かったことになります。
では、何故、消費税減税は政府だけでなく、与野党、マスコミ、世論でも全く取り上げられなかったのでしょうか?
それは、これまで長年、大蔵省・財務省が消費税を将来の税収の柱と位置づけ、事あるごとに消費税増税の必要性を言い続けていたためだと思います。消費税増税そのものは景気の悪化や国民の反発によって阻止されていても、日本全体に「消費税は増税が必要なもの」という考えが植え付けられ、一時的な減税であっても消費税減税など考えることすらできなくなってしまった、それが大蔵省・財務省の消費税増税キャンペーンが生み出した結果なのでしょう。
今回の定額給付金を批判する声は大きいですが、この定額給付金そのものが何が何でも消費税を守ろうとする財務省の意向に沿ったものではないのか、そんな観点からも今回の話は見た方が良いと思います。