Baatarismの溜息通信

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政府、電力不足に対する抜本的対策発表へ

政府は4月1日、夏の関東圏の電力不足に対する、抜本的な対策を発表した。


東京電力による電力設備の復旧が予定通り進んだとしても、この夏は約1500万kwの電力が不足すると見込まれている。しかし、現在行われている計画停電は、工場などの安定操業に支障を来すため、日本経済に大きな打撃を与えている。そのため、政府は電力料金の変更によって価格メカニズムを活用する対策を検討してきた。


今回の対策は、経済学者の野口悠紀雄氏が提言した案が元になっている。*1この野口氏の提案は、電気料金の基本料金のうち、契約アンペア数が40A以上の家庭の料金を5倍程度に値上げすることで、契約アンペア数が低い家庭を増やそうというものであった。家庭が契約アンペア数以上の電気を使おうとすると、ブレーカーが落ちて電気が遮断されるので、電力消費は自動的に抑えられる。
しかしこの案では東京電力は多大な収益が得られるので、東京電力に対する世論の批判を考えると、政治的に実現が難しいという難点があった。
そこで、政府は契約アンペア数が40A以上の家庭の基本料金を2倍程度値上げする代わりに、30A以下の家庭の基本料金を半分以下に値下げすることにした。この方法では基本料金の格差を大きくすることで契約アンペア数が低い家庭を増やすことができると同時に、東京電力が収益を得られるのを抑えることができるため、世論の批判も少ないと判断した。
契約アンペア数を下げる家庭が増えるほど東京電力の収益が減少することが一時政府内で問題となったが、参院で問責決議を受けたはずなのにいつのまにか政府に戻っていた政府高官が、「この収益減少を東京電力に対する利用者の『懲罰』であると考え、東京電力に対する反感を煽ることで契約アンペア数の低下を進めれば良い」と発言したことで、今回の方針が固まった。


今回の発表の席には、なかなか表に姿を表さなかった東京電力清水正孝社長も横縞の囚人服を着て同席し、「どうかこの罪深い東京電力に、利用者の皆様の罰をお与えください。大きな損害を与えて、皆様の怒りを私どもに見せて下さい」と言いながら土下座して、契約アンペア数の変更を訴えるパフォーマンスも行った。インターネットでは、このパフォーマンスを見たユーザーが、「これまでの節電は『ヤシマ作戦』だったが、今度は『シマシマ作戦』だ」と盛り上がりを見せている。
今回の対策に対して、せっかくよその政党から来たのに震災で仕事をなくしてしまった大臣は、「これで東京電力の国有化は間違いない。莫大な赤字の対策として消費税増税を進めなければならない」と語り、早速与党内からの反発を受けている。


政府、電力不足に対する抜本的対策発表へ : ダイナモンド・オンライン


震災後、計画停電が首都圏の経済活動に深刻な影響を与えていますが、ようやく政府が価格メカニズムを利用した対策をまとめました。このような危機的状況にあって、経済学が有効な対策を示せたことは、経済学を学ぶ者のひとりとして、うれしく思います。