Baatarismの溜息通信

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政府が「復興債」に復興と関係ない項目を入れる理由

 政府は9日、2011年度第3次補正予算案に盛る円高対策の財源を、東日本大震災の復興費用を調達するため発行する復興債で賄う方針を固めた。


 復興債は臨時増税などで償還財源をあらかじめ明確にすることになっている。今後5年間で13兆円を見込む復興費用に円高対策も含むことで、将来に借金を残さずに対策を打つ狙いがある。

 政府が7月に決定した復興の基本方針には、復興策の一環として、全国の中小企業支援、国内産業の空洞化対策などの必要性が盛り込まれており、復興債の活用が可能と判断した。3次補正では円高対策として、企業の海外移転を防ぐための企業立地支援や輸出が減少した中小企業に対する資金繰り支援、雇用対策などを計上する方針だ。

 政府は今後5年間の復興対策費を13兆円と見込んでいる。これに、B型肝炎訴訟の和解金(0・7兆円)と、1次補正予算で11年度当初予算から流用した基礎年金の国庫負担の穴埋め分(2・5兆円)を加えた16・2兆円が必要だ。復興債の償還財源は臨時増税や政府保有株の売却益で捻出する。


(2011年9月10日02時02分 読売新聞)


復興債活用で円高対策も…3次補正 : 経済ニュース : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) 復興債活用で円高対策も…3次補正 : 経済ニュース : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) 復興債活用で円高対策も…3次補正 : 経済ニュース : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 政府税制調査会(税調)は九日、野田政権の発足後初めて、東日本大震災の復興財源について検討する「復興・B型肝炎対策財源作業チーム」の会合を開いた。同チームは、増税する税目や年度ごとの増税規模などを盛り込んだ複数の具体案を来週中に政府税調の全体会合に提示する予定だったが、与党側との調整などが遅れており、先送りが確実な情勢となっている。
 九日の会合は政府の復興基本方針に基づいて所得税法人税を中心に増税を検討することなどを確認。会合後の記者会見で五十嵐文彦財務副大臣は「民主党の税外収入の発掘作業が遅れている。野党側の体制整備や与党との調整もこれからで作業は少し遅れ気味だ」と述べた。一方、民主党は九日、復興増税の議論に、党側の意見を反映させるために新設した党税調(藤井裕久会長)の役員会を十三日に開くことを決めた。


(2011年9月10日 朝刊)


東京新聞:増税案提示を先送り 政府税調作業チーム:経済(TOKYO Web) 東京新聞:増税案提示を先送り 政府税調作業チーム:経済(TOKYO Web) 東京新聞:増税案提示を先送り 政府税調作業チーム:経済(TOKYO Web)



「復興債」というのは、そもそも東日本大震災福島第一原発事故の復興資金を捻出するために発行するはずのものなのですが、これらの記事によると、何故か政府はそれとは関係の無い円高対策やB型肝炎訴訟和解金まで、復興債の範囲に含めようとしているようです。B型肝炎訴訟和解金については、すでに「復興・B型肝炎対策財源作業チーム」として財源作業の一体化まで進めています。

何故、政府はこのようなことをするのでしょうか?その理由は、次の記事にあります。

政府は(7月)26日夕、東日本大震災復興対策本部(本部長・菅直人首相)を開き、東日本大震災からの復興財源として10兆円程度を臨時増税で調達する方針を確認した。復興債の償還期間は5年を基本に最長10年とする。

 与党との調整を控え正式な公表は見送られたが、平野達男復興担当相は対策本部終了後の会見で、償還期間や規模などについて対策本部で異論がなかったことを明らかにした。


復興増税10兆円程度、償還期間「5年基本に最長10年」 | Reuters 復興増税10兆円程度、償還期間「5年基本に最長10年」 | Reuters 復興増税10兆円程度、償還期間「5年基本に最長10年」 | Reuters

 三谷光男財務政務官は(9月)7日の就任会見で、東日本大震災の復興費用に充てる復興債の償還期間について「現役世代で負担する。後の世代に先送りはしない」と述べ、60年など長期にわたる償還期間を主張する与党内の一部意見をけん制した。

 一方で、三谷氏は復興財源の税目については「それぞれの長所短所があるので、税調で議論する」と述べるにとどめた。


財務政務官、復興債償還「現役世代で負担」  :日本経済新聞 財務政務官、復興債償還「現役世代で負担」  :日本経済新聞 財務政務官、復興債償還「現役世代で負担」  :日本経済新聞

この記事にあるように、政府・財務省は復興債の償還期間を、一般の建設国債赤字国債の償還期間である60年間よりも短い期間5〜10年間にしようとしています。期間が短ければ当然1年当たりの償還金額は大きくなりますので、歳出削減や政府資産の売却だけでは賄いきれず、増税が必要となるという論法です。
そして、復興とは関係が無い費用まで復興債で賄うと言うことは、本来建設国債赤字国債として60年間で償還すべき費用まで、5〜10年間で償還するということです。このようなことをすれば、増税額はさらに膨れあがります。
つまり、政府・財務省増税の規模をできるだけ大きくするために、震災復興とは関係が無い費用まで復興債に入れようとしているわけです。
おそらく、次は紀伊半島を襲った台風の水害対策費用も、復興債で賄おうと言い出すのではないでしょうか?


野田政権発足直後にこのような動きが出てきたことは、この政権がやはり増税を狙う財務省の影響下にあることをはっきりと示していると思います。
しかも、国会が閉会中で追求を受けにくいこの時期にできるだけ既成事実を積み上げようというやり方は、姑息としか言いようがないでしょう。
今、政界は鉢呂経産相の「失言」による辞任で大騒ぎですが、その背後でこのような被災地を愚弄するかのような施策がこっそり進んでいることも知っておくべきでしょう。
被災地をうっかり「死の街」と言ってしまっただけの大臣と、復興債を全然関係の無い目的に流用しようとしている政府・財務省、本当に復興への努力を侮辱しているのはどっちなのでしょうか。