Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

海洋調査問題で勝ったのはどちらか。

日韓の間の懸案であった、竹島周辺の排他的経済水域EEZ)での海洋調査問題は、ソウルでの外務次官協議で当面の危機を回避する合意が成立し、日韓が日本海で衝突するという最悪の事態は避けられました。


この件について、勝ったのは日本か韓国かという議論が、ネットのあちこちで行われています。


僕は今回の件で勝ったのは日本であり、それは孫子の言葉「戦わずして勝つ」を地でいくものだったと思います。
何故そう思うかというと、今回の件において、韓国側の目的は「海底地名に自国名をつけること」であり、日本側の目的は「韓国の目的を阻止すること」でした。そしてこの合意の結果、韓国は目的を果たすことが出来ず、日本は阻止に成功したからです。
もちろん、今回の合意は6月の国際会議だけに関するものであり、それ以降の行動を拘束するものではありません。しかし、韓国がそれ以降の国際会議に提案しようとした場合、日本側は今回と同様の戦術を取って阻止することが可能なので、日本側を不利にする合意ではないでしょう。


何よりも良かったのは、調査船の乗組員を危険に晒すことなく、韓国側の目的を阻止できたことでしょう。ネットには調査船が拿捕されれば日本側に有利となるという意見がありますが、僕はそれほど単純なことではないと思います。
確かに韓国側が調査船を拿捕すれば、韓国は国際的に孤立するでしょう。しかし、拿捕された乗組員が人質にされる可能性も考えなければなりません。孤立した韓国が瀬戸際戦術に転じ、乗組員返還を条件に日本に妥協を迫り、交渉が膠着するということも考えられるでしょう。韓国は李承晩大統領時代に李承晩ラインを超えた日本漁船を拿捕して、拉致した乗組員の生命と自由を日韓交渉の条件に使った国です。*1日本に反感を持つ盧武鉉大統領が、同様の戦術に出る可能性は考慮しておくべきでしょう。


今後、もし韓国が再び国際会議への提案を試みた場合、日本側も再び調査で応じることになるでしょう。しかしその時は調査船だけで送り出すのではなく、少なくとも巡視船、それでも不十分ならば自衛隊も動員して、拿捕を防ぐための対策を十分取って欲しいと思います。例えそれで韓国側が硬化して外交交渉が不利になっても、自国民の生命と安全を守ることを優先すべきだと思います。
ただし、これを利用して戦いを起こすことが目的ではありません。だから衝突が避けられないという状況になれば日本側が引くべきだと思います。その上で韓国側の横暴を証明するための証拠を取っておくべきでしょう。例えば内外の報道記者を同乗させれば、その報道が大きな証拠になってくれるでしょう。


ただ、このようなことは日本にとっても大きなリスクです。調査を強行することはこのような大きなリスクを伴うことなので、外交交渉で解決できたことは良かったことだと思います。


今回の妥結において米国から日本に圧力があったという報道*2もありますが、同様の圧力は韓国にもかかっていたはずですから、日本が米国の圧力をうまく利用したと言えるでしょう。これも戦わずして勝てた要因の一つだと思います。


一つ気になるのは韓国側がこの結果を国内にどう説明するかですが、「日本の調査船を拒否した。侵略は阻止された。マンセー!」という言い方で、本来の目的をうやむやにしてしまうのかもしれませんね。向こうのマスコミも左右問わずそれに協力するでしょうから。(笑)