Baatarismの溜息通信

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日銀は本当にインフレターゲットを導入したのか? (Ver 2.0)

パソコンでこのブログを読んでいる方はご存じだと思いますが、このブログには長い間「リフレ政策を発動せよ インフレ目標2.0%で日本は変わる」というバナーがついていました。
そしてついに1/21〜22の金融政策決定会合で、日銀は2%の「物価安定目標」を導入すると発表しました。

 日銀は21〜22日に開いた金融政策決定会合で、2%の物価安定目標を採用することを決めた。政府との間で「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」とする共同声明を作成。消費者物価の前年比上昇率で2%を目指すとともに、経済財政諮問会議で進捗状況を定期的に検証することなどを決めた。

 2%の物価安定目標の導入とともに、資産買入基金で「期限を定めない資産買い入れ方式」の導入も決めた。新方式では2014年初から期限を定めず毎月13兆円の資産買い入れを実施する。買い入れの内訳は長期国債が2兆円、短期国債が10兆円。その他の資産は残高を維持するように買い入れる。この結果、基金の残高は14年中に10兆円程度増え、それ以降も残高を維持する見込みだ。基金の新方式については全員一致で決めた。


日銀、2%の物価目標導入 無期限資産購入14年から  :日本経済新聞 日銀、2%の物価目標導入 無期限資産購入14年から  :日本経済新聞 日銀、2%の物価目標導入 無期限資産購入14年から  :日本経済新聞



一見すると、長年のリフレ派の願いが叶ったように見える話ですが、実はこの決定では、日銀が責任を持ってインフレ率2%を達成するという意図が感じられませんでした。
この発表の直後に、常夏島日記さんで日銀のプレスリリースを分析していますが、確かに言い訳や責任転嫁を感じさせる表現が多く、日銀が責任を持って実施するという意気込みは見えてきません。

日銀は何も変わっちゃいない - 常夏島日記 日銀は何も変わっちゃいない - 常夏島日記 日銀は何も変わっちゃいない - 常夏島日記



この日銀の決定を「面従腹背」と表現した記事もありました。金融緩和が来年からであり、その規模も過去と同じですから、具体策を伴わない物価目標だと批判されるのは当然でしょう。

  1月23日(ブルームバーグ):日本銀行は2%の物価目標を掲げるとともに、期限を定めない資産買い入れ方式を導入した。金融市場では決定直後に円安・株高に振れる場面もあったが、2%を実現させる上で実効性に乏しい追加緩和の内容に対し、失望感が台頭。23日の東京市場では円高・株安になっている。エコノミストの間からは、事実上、日銀のゼロ回答であり、政府に対する面従腹背との指摘も出ている。
日銀は22日の金融政策決定会合で、消費者物価指数 (CPI)前年比上昇率で2%の「物価安定の目標」を導入。併せて、資産買い入れ等基金について、2014年初から期限を定めず毎月一定額の金融資産を買い入れる方式を導入すると発表した。
日銀によると、資産買い入れ等基金は14年中に10兆円(長期国債国庫短期証券それぞれ5兆円)増加するという。白川方明総裁は会見で買い入れのペースについて「14年のフローの買い入れ金額は13年中の平均のフローの金額より大きくなる」と述べたが、10兆円という額は昨年9月以降3回行った追加緩和の規模と変わりはない。基金の増額を13年中でなく14年に先送りしたことも失望につながっている。


日銀は2%目標掲げるも、事実上ゼロ回答−「面従腹背」で市場は失望 - Bloomberg 日銀は2%目標掲げるも、事実上ゼロ回答−「面従腹背」で市場は失望 - Bloomberg 日銀は2%目標掲げるも、事実上ゼロ回答−「面従腹背」で市場は失望 - Bloomberg



同じように感じた人は多かったようで、決定会合後、一度は円はドルやユーロに対して値上がりしました。




ただ、その後は安倍政権が金融緩和姿勢を変えなかったことで、再び円安が進んでいます。


昨年2月の日銀が「中長期的な物価安定の目途」1%を導入した「バレンタイン緩和」の時、僕は日銀がその達成に責任を持とうとしていないので、これはインフレターゲットではないと言いました。

日銀は本当にインフレターゲットを導入したのか? - Baatarismの溜息通信 日銀は本当にインフレターゲットを導入したのか? - Baatarismの溜息通信 日銀は本当にインフレターゲットを導入したのか? - Baatarismの溜息通信



今回の決定でも、その点は変わっていないと思います。1%の「目途」が2%の「目標」になったとは言え、日銀は相変わらずその達成に責任を持とうとはしていません。インフレターゲットというのは単にインフレ率の目標を定めるだけでは不十分で、中央銀行がその達成に責任を持つことが必要ですから、これはまだインフレターゲットとは言えないと思います。
白川日銀総裁は、何が何でもその責任だけは逃れようとして、面従腹背を続けているのでしょう。


ただ、今の日銀総裁、副総裁の任期はもうすぐ終わりですし、安倍政権では再任の可能性もありませんから、白川総裁はレームダックになっています。実際に2%のインフレ目標を目指すことになるのは次期日銀執行部ですから、安倍政権が日銀総裁・副総裁に、目標を達成することに本気で責任を持つ人を選べば、この目標はインフレターゲットと言えるものになるでしょう。ただし、これだけでは金融政策が日銀総裁の考え方に左右されるので、まだ不十分です。
だから、最終的には日銀法を改正して、日銀がインフレターゲットを達成する責任を負うことを明記すべきです。そうなれば、日本も本当の意味でインフレターゲットを導入したと言えるようになり、市場もそれを疑うことはなくなるでしょう。