Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

INFが日本経済に関する2014年の年次審査報告書を公表

INFは1日に公表した日本経済に関する2014年の年次審査報告書で、日本は政府総債務残高が1100兆円を超え、対GDP比でも240%に達している危機的状況であり、一刻も早い財政赤字の削減が必要であると指摘した。
そのための方法として、まず日本政府が600兆円を超える資産を保有していることを指摘し、その中でもまず政府が保有する金融資産を全て売却し、国債の返済に充てることを求めている。政府が保有する年金運用預託金を除く金融資産は民間に売却し、出資金や貸付金については出資先、融資先である特殊法人を民営化して株式や債権を売却し、外為資金についても日銀に売却することで、300兆円以上の資産を現金化でき、財政赤字の圧縮が可能であるとしている。また、政府が保有する土地などの実物資産についても、公務員宿舎など売却可能なものは売却することを求めている。
また、社会保険料と税金の徴収を一元化するため、年金機構と酷税庁を統合して歳入庁を設立し、社会保険料の徴収率を上げることを求めている。これによって年間数兆円の収入が見込めるとしている。
さらに、これらの改革を阻害する最大の要因として、日本の債務省の反対があると指摘している。債務省は政府資産を使って多数の特殊法人を作ることで役人の天下り先を確保し、保有資産の運用先選定で金融機関に利益を与えることでやはり天下り先を確保するなど、国家予算を私物化していると指摘している。さらに酷税庁の人事を左右して支配下に置くことで、脱税摘発を政治家やマスコミの反対派を押さえ込むための脅しに利用しているとして、このような権力の行使は典型的なレントシーキングであると批判している。
消費税増税についても、「債務省が予算規模を大きくして財政支出を差配する「歳出権」を拡大することが目的であり、増税分は財政支出を増やしたり、特殊法人を設立することに使われるだろう。そのため財政赤字削減に役立つとは思えない」と批判している。
最後に、日本の債務省はINF自体にも多数の官僚を送り込んでいて、これまで債務省を批判する報告書の作成を阻止してきたと指摘している。そのため、「この報告書も日本に知られないように、例年とは別の時期に秘密裏に作成された」と書かれている。
このように、今回の報告書は債務省を日本の財政赤字削減を阻害する最大の要因であると名指しで批判しており、これまでにない異例の内容となっている。
この報告書の記者会見には多数の記者が出席していたが、何故か日本のマスメディアの記者は一人もいなかった。


この報告書について、ある債務省高官は「よりによって消費税増税のめでたい日に、なぜこんな報告書が出たのだ!INFに送り込んでいる工作員は何をしていたのだ!何のためにINFに多額の出資金を出しているのか分かっているのか。何としてもこの報告書が日本で報道されることは避けなければならん。この報告書を報道したマスコミは全部税務調査して、脱税でしょっ引いてやる!………そうか、タハカシの仕業だな。あの忌々しい奴め。三度殺しても飽き足らぬ。今度こそ奴の尻尾を捕まえて、刑務所にぶち込んでやる!」と叫んでいた。


IMFが日本経済に関する2014年の年次審査報告書を公表、財政再建を要求 - Wallet Street Journal



この記事のタイトルを見たときは、INFがいつも言っている緊縮財政の要求かと思っていたのですが、中身を読んでびっくりしました。INFも日本の財政のおかしさには気づいていたんですね。財政赤字削減を最優先とすることには僕は賛同しませんが、個々の指摘は納得できるものばかりであり、日本にとって非常に重要な報告書だと思いました。

消費税増税直前に思うこと

前回の記事から、ずいぶん長い間更新していませんでした。
気がつけば、消費税が8%に増税される日はもうすぐそこです。


安倍政権が増税を決定した頃に分かっていた昨年前半の経済成長率は高かったのですが、増税決定後に判明した昨年後半の経済成長率は下がってしまいました。高成長を理由に増税を決定した安倍政権の判断は、間違っていたと思います。

 安倍政権の経済政策アベノミクスで、想定していなかった経済統計の「変調」が起きている。10日には昨年10〜12月期の実質経済成長率が年率0・7%に下方修正されたほか、今年1月の経常赤字額は過去最大を更新した。消費増税を控え、経済政策のかじ取りは一段と難しくなっている。

 10日に発表された2013年10〜12月期の国内総生産(GDP)の2次速報値では、物価の変動をのぞいた実質成長率(年率)が前期比0・7%増に下方修正され、1%台を割り込んだ。先月発表された1次速報よりも0・3ポイント下げた。4月の消費増税前の「駆け込み需要」が成長率を押し上げると見られていたが、想定外の急ブレーキがかかっている。

 昨年7〜9月期の実質成長率も1・1%から0・9%に下方修正された。1〜3月の4・5%、4〜6月の4・1%に比べると、昨年後半からの減速ぶりが際立っている。


アベノミクス、相次ぐ想定外 経済指標「変調」:朝日新聞デジタル アベノミクス、相次ぐ想定外 経済指標「変調」:朝日新聞デジタル アベノミクス、相次ぐ想定外 経済指標「変調」:朝日新聞デジタル



消費税増税後の景気については、リフレ派の中でも意見が分かれています。浜田政府参与や黒田日銀総裁のように政府・日銀に入った人達は強気の見方をしていますが、この片岡氏の記事のように、景気悪化を懸念している人も多いようです。片岡氏は2014年度の実質成長率が民間予測期間の平均値0.8%を下回る可能性もあると言っています。

安倍首相が提唱した経済政策「アベノミクス」によって、ここまで日本経済は回復軌道を歩んできた。最大の牽引車は民間消費支出だ。その点で4月からの消費税増税はこれからの日本経済が抱える最大のリスクである。本稿では、消費税増税の影響を考える際にポイントになるであろう5つの視点を定め、直近時点で把握できる動きからどのような事が言えるのかを、2回にわたって考えていくことにしたい。


5つの視点で考える消費税増税後の日本経済(上) 反動減と実質所得減のインパクトを読む――三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 片岡剛士 (マクロ経済編第3回)|消費税増 5つの視点で考える消費税増税後の日本経済(上) 反動減と実質所得減のインパクトを読む――三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 片岡剛士 (マクロ経済編第3回)|消費税増 5つの視点で考える消費税増税後の日本経済(上) 反動減と実質所得減のインパクトを読む――三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 片岡剛士 (マクロ経済編第3回)|消費税増

 昨年末に政府と民間予測機関の成長率見通しの違いが話題になったが、こうした可能性を考慮すると、2014年度の実質GDP成長率は民間予測機関の平均値0.8%をさらに下回る可能性も十分にあり得るのではないだろうか。


5つの視点で考える消費税増税後の日本経済(下) 政府の経済政策と日銀の金融政策の効果を読む――三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 片岡剛士 (マクロ経済編第4回)|消 5つの視点で考える消費税増税後の日本経済(下) 政府の経済政策と日銀の金融政策の効果を読む――三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 片岡剛士 (マクロ経済編第4回)|消 5つの視点で考える消費税増税後の日本経済(下) 政府の経済政策と日銀の金融政策の効果を読む――三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 片岡剛士 (マクロ経済編第4回)|消



僕も昨年10月の消費税増税決定後にこのような記事を書いていますが、やはり来年度の実質成長率は1%を切るとみた方が良いでしょう。

この時(補足:2012年7月)の記事では消費税増税の2014年のGDPへの影響がマイナス2.1%だという記事を紹介しました。今でもこの数字の前提は大きく変わってないでしょう。
また、先ほど述べたように、補正予算もせいぜい2013年度と同程度なので、成長率に与える影響はゼロと考えて良いでしょう。マイナスでないだけマシかもしれません。
その一方で、黒田日銀の大規模緩和やインフレ2%目標による成長率への影響はかなり大きいでしょう。その結果、最近の成長率は年率換算で2〜3%くらいにはなっていると思われます。
従って、これらを差し引いた来年の成長率は、マイナスにはならないものの、1%には届かず、0.x%というオーダーになると思われます。
ここで、欧州や中国などの金融危機、あるいは最近噂されている米国の債務上限問題によるデフォルトが発生すれば、日本経済はマイナス成長に沈むでしょう。そんな事態が起こらないことを祈りますが。


消費税増税決定について - Baatarismの溜息通信 消費税増税決定について - Baatarismの溜息通信 消費税増税決定について - Baatarismの溜息通信



昨年の時点では「欧州や中国などの金融危機、米国の債務上限問題によるデフォルト」を心配していましたが、今はウクライナの政変をきっかけとなって、ロシアがウクライナ領である(「であった」と言うべきかもしれませんが)クリミアを併合し、新たなる冷戦の勃発も懸念されています。また、ウクライナ問題でアメリカがロシアに対して効果的な対抗を取れないという状況を見て、中国がアメリカを見くびって日本や台湾、東南アジアに対して何か行動を起こすことも考えられます。日本と韓国は歴史問題で相互不信に陥ってしまい、囚人のジレンマにも例えられる状況で、アメリカはそんな両国をもてあましていると言えるでしょう。北朝鮮も昨年末に張成沢氏が処刑されてから中国との関係が悪化し、もはや金正恩体制がどうなるのか誰にも予測できません。今や経済危機の要因は、世界のあちこちに存在していると言っても良いでしょう。

この中の一つでも経済危機に発展すれば、日本は間違いなくマイナス成長に陥るでしょう。
つくづく消費税増税は悪い時期に行うことになってしまったと思います。*1


昨年後半から失業率は改善してきて、最新のデータである今年1月は3.7%まで改善しました。*2様々な分野で人手不足が起こっているという話も聞きます。リフレ政策は明らかに雇用状況を改善しつつあるのは間違いないでしょう。
そのような時期に景気悪化を余儀なくされるのは、非常に残念です。もしアベノミクスが失敗するとすれば、その最大の原因がこの消費税増税であることは、間違いないでしょう。

今回消費税増税についての記事を書いて思ったのは、2年前に消費税増税が議論された時に予測されていたことが、今でもそのまま通用するということです。このようにはっきり結果が予測されていたにも関わらず、誰も消費税増税に突き進む財務省を止めることができなかったということが、日本の抱える大きな問題点だと思います。

*1:ただ、景気悪化を国際要因のせいにできるという意味では、財務省にとっては好都合かもしれませんが。

*2:参考:「統計局ホームページ/労働力調査(基本集計) 平成29年(2017年)11月分結果

「リフレの年」だった2013年

2013年の金融・証券市場は歴史的な株高・円安となった。日経平均株価は年間で57%上げ、41年ぶりの上昇率を記録。円は対ドルで34年ぶりの下落率になった。世界の投資マネーが新興国から先進国へと向かうなか、大規模な金融緩和などで日本が長引くデフレから脱するとの期待が浮上。内外の投資家が取引を活発に膨らませた。来年もこの流れが続くかどうかは、景気の持続的な拡大がカギを握る。


株高41年ぶり、円安34年ぶり… 歴史的値動きの1年  :日本経済新聞 株高41年ぶり、円安34年ぶり… 歴史的値動きの1年  :日本経済新聞 株高41年ぶり、円安34年ぶり… 歴史的値動きの1年  :日本経済新聞

アベノミクス三本の矢の中で政策が十分な形で実行され、成果が出ているのは第一の矢たる「大胆な」金融政策である。4月4日に公表・実行された量的・質的緩和策では、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭においてできるだけ早期に実現すべく、長期国債ETFJ−REIT、CP・社債等の買取りを通じてマネタリーベース(2012年末実績138兆円)を2013年末に200兆円、2014年末に270兆円まで拡大するとしている。

量的・質的緩和策公表時のマネタリーベースやバランスシートの見通しと実施動向を比較すると、日銀が当初見通したとおりの緩和がなされている。今年も日銀の想定通りの経済動向が続くのであれば、見通し通りに緩和が行われるはずだ。

第一の矢は予想インフレ率を引き上げ、円安・株高をもたらした。昨年11月14日の野田前首相の解散発言から11月14日における日経平均株価・ドル/円レートの動きを比較すると、株価は72%上昇し、ドル/円レートは25%の円安となった。

4月時点では、大胆な金融政策を行っても株高や円安といった資産市場の好転しか生じず、実体経済には影響しないという指摘もなされたが、第二の矢の効果も相まって、実質GDP成長率(前期比年率)は、2012年10-12月期の0.6%から2013年1-3月期には4.5%と大きく上昇し、その後2013年4-6月期3.6%、7-9月期1.1%と回復が進んだ。

実質GDPが回復することで2012年10−12月期に17兆円であったデフレギャップは、2013年7-9月期には8兆円まで減少した。そして完全失業率は昨年12月から11月までに0.3ポイント(4.3%→4.0%)、有効求人倍率は同じ期間に0.17ポイント(0.83倍→1.00倍)回復しており、マクロでみた雇用も改善が進んだ。企業利益も輸出企業を中心に大幅に改善している。


第二次安倍政権の経済政策を振り返る | SYNODOS -シノドス- 第二次安倍政権の経済政策を振り返る | SYNODOS -シノドス- 第二次安倍政権の経済政策を振り返る | SYNODOS -シノドス-



この記事にもあるように、今年、2013年は大幅に株高と円安が大きく進み、実質成長率も上昇、デフレギャップも縮小し、景気回復が鮮明になりました。それに伴い雇用状況も改善しています。安倍政権と黒田日銀執行部によるリフレ政策の結果であることは、もはや明白でしょう。
2013年はリフレ政策が実施されて、それが大きな成果を上げた年であったと言えるでしょう。まさに今年は「リフレの年」でした。
正直言って、これほど早く景気が改善するとは僕も予想していませんでした。インフレ期待が景気に与える影響は、長年リフレ政策を支持してきた僕の予想も超える素晴らしいものであったと言えます。
その一方で、リフレ政策反対派が懸念していた長期金利暴騰やハイパーインフレは、その兆しすら見えません。少なくとも「インフレ誘導政策」はコントロール不可能な事態になるという主張は、現実によって否定されたと思います。

しかし、同時に消費税増税が決定され、来年4月からは8%に上がることが確定してしまいました。再来年10月に予定されている10%への再増税も阻止できるかは分かりません。
従って来年はリフレ政策による景気回復効果と、消費税増税による景気落ち込み効果がせめぎ合い、どちらが勝つか分からない状況です。
2014年の日本経済の最大の懸念点が消費税増税であることは間違いないでしょう。


また、ちょうど1年前の大晦日、僕はこんな記事を書きました。

このように振り返ってみると、リベラル左派政権だったはずの民主党政権は、結局リフレ政策に否定的で、消費税増税を進めて、リーマンショック以降の日本経済を衰退させてしまいました。一方で、自民党の中でも右派と言われる安倍氏は、リフレ政策を推進し、消費税増税にも慎重です。
しかし考えてみれば、リフレ政策そのものは需要管理政策ですから、本来はリベラルな政策だと言えるでしょう。アメリカでも、この政策を理論づけたポール・クルーグマン教授は、リベラル派の代表的な学者です。
ところが日本では、リベラルな政策のはずであるリフレ政策や公共事業を右派が推進するという、ねじれた構図になっています。
なぜこうなってしまったかと言うと、日本ではリベラル・左派の経済学に対する無理解があまりにも酷く、その影響を受けていた民主党の議員達が、財務省や日銀の説明をあっさりと受け入れてしまったのでしょう。id:finalventさんが今日のブログで日本のリベラルや知識人を批判していましたが、僕もそれに同感します。


(中略)


一方、右派は中国や韓国の台頭に対する危機感もあって、日本経済の立て直しを本気で考えざるを得なくなり、リフレに好意的になってきたのだと思います。安倍総理自身は前回の政権の頃から、高橋洋一氏を起用するなどリフレに近い立場でしたが、最近はそれが右派に広く広がってきたように思います。

安倍政権のような右派政権は、生活保護などの社会保障削減や、教育政策にトンデモな考え方が入り込む、マンガやアニメなどの表現規制が強まるのではないかという懸念もあるので、一概に歓迎ばかりもできないのですが、ここまでリベラル・左派の経済音痴が酷いと、他に選択肢がなくなってしまいます。
今年の民主党の迷走と崩壊は、そのことをはっきりさせてしまったのだと思います。


2012年を振り返って - Baatarismの溜息通信 2012年を振り返って - Baatarismの溜息通信 2012年を振り返って - Baatarismの溜息通信



参院選自民党が大勝し、ねじれ現象が解消した後の政治は、まさにこの言葉通りになっていると思います。特定秘密保護法案や靖国参拝を巡っては左派・リベラル派を中心に批判の声が上がりましたが、リフレ政策で景気を回復させた安倍政権への支持は根強く、彼らの反対は無力でした。内閣支持率も概ね50%程度を維持しています。経済政策を軽視し、経済成長や金融政策を敵視すらしてきた左派・リベラル派や民主党は、すでに政治的な選択肢から外れてしまっているのでしょう。
もちろん、このように選択肢が1つしかないという状況は好ましくないですが、それを脱却するためにはまず民主党がリフレ政策を受け入れて、景気回復を止めないことをはっきりさせる必要があるでしょう。そうしないと、民主党や左派・リベラル派が求める、社会保障の充実や中国・韓国との緊張緩和も実現できないでしょう。


繰り返しますが、2013年はリフレ政策が大きな成功を収めた年でした。それはマクロ経済学の知見に基づく経済政策が正しいことが実証されたということでもあります。
そのような政策を理解して推進したのが右派の安倍政権であったため、衆参両院で多数を得た安倍政権によって、経済政策以外の分野では右寄りの政策が進むことになりました。もしリフレ政策を実施したのが民主党政権であったなら、経済政策以外でも多くの分野で左寄りの政策が進むことになったでしょう。

安倍政権はこの成功に奢らず、今後も日本経済の再建を最重要課題として欲しいと思います。中国の軍事的膨張が進んでいるので防衛力の強化は必要だと思いますが、貧困層を増やしたり人権を制限したり、日本を国際的孤立に追い込むような政策は止めて欲しいものです。
一方、民主党や左派・リベラル派には、自らの経済音痴を反省して、マクロ経済学の知見に基づいた政策を取り入れて欲しいと思います。そうすれば彼らも再び政治的選択肢として復活するでしょう。


来年は消費税増税などの不安要因もありますが、日本経済がそれに負けずに力強く復活することを願います。

消費税増税決定について

非常に残念なことですが、10/1、安倍総理は消費税を来年4月から8%に増税することを発表しました。
その一方で安倍総理は5兆円規模の補正予算を組むので、実質的には3%増税のうち2%は負担増にはならないという話があります。リフレ派として知られる、内閣参与の浜田宏一氏、本田悦朗氏もそう考えているという記事もあります。*1

 8月30日の金曜日。首相の安倍晋三(59)は、官邸で2人の内閣官房参与を昼食に誘った。米エール大名誉教授の浜田宏一(77)と静岡県立大教授の本田悦朗(58)。その週は政府が消費増税を巡り有識者の意見を聞く「集中点検会合」を開き、27日に浜田は出席。本田は31日に参加を控えるはざまのタイミングだった。

 アベノミクスの理論的な支柱として別格の扱いを受ける浜田は安倍に持論を改めて述べた。「3%をいきなり上げる例は諸外国にもありません。ショックが大きくなる可能性があるからです。それを避けるやり方もいろいろあるんじゃないでしょうか」。浜田は増税の1年先送りや税率を1%ずつ上げる方法、段階的に上げて様子をみるやり方などを列挙した。

 一方の本田は夏休み中の安倍に意見を直接伝えていた。8月11日、山梨県鳴沢村の安倍の別荘を訪れた本田は税率を1%刻みで上げるなどの試算を提示。その数字の作成は旧知の三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員、片岡剛士(40)に頼んだ。エコノミストの片岡は「慎重派も入れるように」と求めた官邸の意向を受け、内閣府の当初のリストにはなかったものの集中会合に参加。「増税はデフレから完全に脱却した後で」と訴えて、本田らの先送り論に加勢した。

 財務省OBで安倍と古くから親交を結ぶ本田は増税を着実に決めたい古巣の役所から「ノイズ(雑音)」(幹部)と批判されても受け流した。「アベノミクスを成功させる思いの強さが、ほかの人とは違うんです」

 意気盛んだった本田から9月中旬、内閣府幹部に要請が入った。「首相の消費増税を巡る発言を整理してほしい」。増税を前提にしたような物言いを受け霞が関では「首相の決断が近い」との観測が拡大。逆に本田の言動は目立たなくなってきた。

 消費増税が決まった今、2人の参謀に敗北感はない。税率3%の増収分のうち2%分を経済対策で国民に返して1%の負担増とするのは、本田が主張した1%ずつの増税案に沿う。

 米国に戻った浜田は安倍を励ますメールを送り続けた。「うれしい誤算だが、景気は思ったよりも良くなっている。ほとんどの指標が改善していて、アベノミクスが勝利した」。安倍の決断を受け浜田は「金融政策をうまく使ってほしい。法人税も下げないといけない」と語る。関心は早くも次の政策課題に移っている。(敬称略)


消費税8%、慎重派も「うれしい誤算」(ルポ迫真) :日本経済新聞 消費税8%、慎重派も「うれしい誤算」(ルポ迫真) :日本経済新聞 消費税8%、慎重派も「うれしい誤算」(ルポ迫真) :日本経済新聞



しかし、この補正については、昨年度も同程度の補正を行っているので、消費税増税のダメージを減らす効果は無いという意見もあります。そうなると、3%増税のダメージはもろに日本経済を襲うことになります。

 今年は真水で5兆円の補正予算を打った。だから、今度、5兆円規模の補正を打ったにしても、今のレベルを維持するに過ず、来年の消費増税のデフレインパクト8.1兆円は、そのままかかってくる。経済は素直なもので、需要を抜けば、その分、景気は悪くなる。そこに幻想はない。筆者も残念で仕方がないが、やったとおりの結果が出てくるだろう。

 思い返せば、2010年には、リーマンショック対策を一気に10兆円も切って、景気を後退させ、管政権は評判を下げ、補正予算の編成に追い込まれた。大震災の後は、阪神の際のように、すばやく応急復旧と経済対策の2本立ての補正をすべきところを、復興増税論議をして遅らせ、景気を沈滞させてしまう。野田政権は、消費税法案を優先し、剥落を補う補正予算を打てぬまま、景気を悪くしたところで自爆解散に至った。

 日本の経済運営は堪え性がない。景気回復に応じて徐々に経済対策を減らすことができず、すぐに需要を切ってしまい、成長の芽を摘んでしまう。また、繰り返されるのだ。放漫財政なのにデフレという不思議が生じるのは、こうしたゴー&ストップの特異な経済運営の結果である。またも救われなかった背景には、当初と補正を連結して前年度と比較する需要管理の基本中の基本が浸透していないことがある。

 いつも、前年の補正はなかったことにされ、つねに、今年の補正はプラスと宣伝される。前年の補正の剥落を埋めるだけで、放っておけばマイナスになるものを、ただゼロにしただけで、景気をテコ入れをした気になってしまう。そして、なぜだか分らないままに、景気後退を迎えて首を捻り、景気対策には効果がないと文句を言い、人口減のせいにするのである。


経済運営に幻想は無用 - 経済を良くするって、どうすれば 経済運営に幻想は無用 - 経済を良くするって、どうすれば 経済運営に幻想は無用 - 経済を良くするって、どうすれば

 補正5兆円のうち、公共事業2兆円、低所得者給付0.3兆円、住宅ローン給付0.3兆円の計2.6兆円は需要として見込めるが、復興事業1.3兆円は過去のものの再計上だから、カウント外だろう。復興法人税0.9兆円の廃止による需要創出効果は、第一生命研の熊野英生さんの分析ではGDP比0.1%弱の押し上げ効果があるそうだから、一応0.5兆円としておく。投資減税は、新規分の額そのままの0.3兆円分の効果があるとして、しめて3.4兆円だ。これで、前年補正の剥落の5兆円と消費増税8.1兆円のデフレインパクトに対応することになる。約10兆円、GDP2%分の緊縮財政をしたら、無事では済むまい。


10/2の日経 - 経済を良くするって、どうすれば 10/2の日経 - 経済を良くするって、どうすれば 10/2の日経 - 経済を良くするって、どうすれば



昨年、僕は消費税増税の影響について記事を書きました。

消費税関連のニュースでは政局絡みの話ばかり報道されますが、本当に重要なのはこの増税で私たちの生活や日本経済がどうなるかでしょう。今回はまずそのことを考えてみたいと思います。
ニッセイ基礎研究所で、消費税が実質GDPに与える影響が試算されています。
それによると、2013年度は駆け込み需要で成長率が0.7%押し上げられるものの、2014年度は実質GDPが1.4%押し下げられ、成長率への影響はマイナス2.1%となるそうです。その後も2015年度は1.5%、2016年度は1.9%押し下げられますので、かなり大きなマイナスの影響を日本経済に与えることは間違いないでしょう。


消費税増税後の日本 - Baatarismの溜息通信 消費税増税後の日本 - Baatarismの溜息通信 消費税増税後の日本 - Baatarismの溜息通信



この時の記事では消費税増税の2014年のGDPへの影響がマイナス2.1%だという記事を紹介しました。今でもこの数字の前提は大きく変わってないでしょう。
また、先ほど述べたように、補正予算もせいぜい2013年度と同程度なので、成長率に与える影響はゼロと考えて良いでしょう。マイナスでないだけマシかもしれません。
その一方で、黒田日銀の大規模緩和やインフレ2%目標による成長率への影響はかなり大きいでしょう。その結果、最近の成長率は年率換算で2〜3%くらいにはなっていると思われます。
従って、これらを差し引いた来年の成長率は、マイナスにはならないものの、1%には届かず、0.x%というオーダーになると思われます。
ここで、欧州や中国などの金融危機、あるいは最近噂されている米国の債務上限問題によるデフォルトが発生すれば、日本経済はマイナス成長に沈むでしょう。そんな事態が起こらないことを祈りますが。

その結果、アベノミクスでようやく伸びてきた法人税所得税の伸びはなくなりますから、それで消費税増税分が相殺されてしまうかもしれません。消費税による増収は14年度が5.1兆円、15年度以降が8.1兆円と見積もられていますが、さて、このうちどれだけが本当の増収になるのでしょうか。*2


ここでもう少し消費税増税を待てば、景気回復が進んで増税しなくても税収が増え、デフレ脱却後に消費税増税をすれば日本経済に与えるダメージも少なくなっただろうと思うと、残念でなりません。
まあ、財務省はこんな論理で動くところではなく、自らの「歳出権」の最大化が本当の目的ですから、財務省やその「ポチ」にとってはこれで良いのでしょう。問題はその目的がほとんどの日本人のためにならないことですが。


すでに消費税の10%への増税や、さらにその先の増税を睨んだ発言も、増税派からは出てきています。財務省の「歳出権」の最大化を目指す動きは止まることがありません。*3

麻生副総理兼財務大臣は、法律で再来年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げについて、予算案の編成などを考慮すれば、引き上げるかどうかの判断は、来年の年末までに決めるのが望ましいという考えを示しました。


(中略)


官房長官は閣議のあとの会見で「さまざまな方がいろいろ発言しているが、法律の規定にしたがって適宜適切に判断していくというのが政府の基本的な考え方だ。安倍総理大臣も『判断時期を含めて適切に判断したい』と記者会見で述べており、それがすべてだろう」と述べました。


(中略)


谷垣法務大臣は、宇都宮市で開かれたみずからが顧問を務める自民党のグループの研修会で講演し、消費税率の引き上げについて、「社会保障の財源を確保し、財政の硬直化を乗り越えていかなければならず、来年4月から8%に引き上げる決断をしたのは良かった。ただ、8%で終わりではなく、次に10%に引き上げることが法律で決まっているので、どう道筋をつけていくかが極めて大事だ」と述べ、法律どおり、再来年10月に10%に引き上げることを目指すべきだという考えを示しました。


麻生氏 消費税10%判断は来年末に NHKニュース 麻生氏 消費税10%判断は来年末に NHKニュース 麻生氏 消費税10%判断は来年末に NHKニュース

自民党の野田税制調査会長は、名古屋市で講演し、安定した社会保障制度を実現するためには、将来的に、消費税率を10%を超えるまで引き上げることも検討すべきだという考えを示しました。

この中で、自民党の野田税制調査会長は「民主党などからは、『年金制度の抜本改革を』という話があるが、消費税率10%を前提にしてはとてもできない。安定した社会保障制度をつくるためには、中長期的に、10%を超える税率を前提にしなければならない」と述べました。


野田税調会長「消費税率10%超も検討を」 NHKニュース 野田税調会長「消費税率10%超も検討を」 NHKニュース 野田税調会長「消費税率10%超も検討を」 NHKニュース



止まることがない財務省の消費税増税と「歳出権」への欲望。これをどこかで止めないと、日本の未来は果てしなく暗くなっていくと思います。まるで今の中国のように。

追伸

最終的に安倍総理は消費増税を決定したため、今回の消費増税に関する記事で、僕が「安倍総理が消費税増税決定」という記事を「誤報」だとしたことを批判する声があります。
ただ、あの時点では菅官房長官が内閣を代表して「総理はまだ決定していない」と公式に言っていたのですから、「決定」と決めつける記事が誤報だったのは明らかでしょう。「安倍総理は最終的に消費税増税を決断するだろう」という推測記事なら、僕も批判はしませんでした。

この件についてはid:finalventさんがすでに的確な意見を言っているので、そちらをご覧下さい。僕もこの意見に全面的に賛成です。

単純に情報操作にひっかかる人々について: 極東ブログ 単純に情報操作にひっかかる人々について: 極東ブログ 単純に情報操作にひっかかる人々について: 極東ブログ

消費税問題は、大手紙の飛ばし記事の研究によい事例でもあった: 極東ブログ 消費税問題は、大手紙の飛ばし記事の研究によい事例でもあった: 極東ブログ 消費税問題は、大手紙の飛ばし記事の研究によい事例でもあった: 極東ブログ

*1:すでに消費税に関するマスコミ報道は眉につばを付けて読むのがデフォルトでしょうから、ここではこの日経記事が事実であるという断定は避けます。

*2:消費税増税による14年度の増収が低いことについては、この記事が参考になるでしょう。「消費増税、3兆円が消えるカラクリ 編集委員 滝田洋一 :日本経済新聞

*3:野田税調会長は社会保障制度を理由にしていますが、今回の8%への増税でも最終的に社会保障の問題がないがしろにされたのは明らかでしょう。だから社会保障増税の口実に過ぎないと思います。

渡る世間は(財務省の)ポチばかり

前回の記事で取り上げた「安倍総理が消費税増税決定」の「誤報」ですが、その後報道はさらにエスカレートして、安倍総理が消費税増税を「決断」したという記事が「何度も」繰り返し報道されるという事態になってしまいました。
この件について、日本報道検証機構代表である楊井人文氏が、状況をまとめた記事を書いています。

主要各紙は先週までに、安倍晋三首相が来春の消費増税を「決断」したことを1面トップで相次いで報じた。しかし、安倍首相はまだ「増税を決断した」とは語っていない。(*1) この間、菅義偉官房長官は少なくとも3度の公式会見で「安倍首相はまだ決断していない」と指摘していた。にもかかわらず、各紙は、すでに増税を既定路線とみなしている。安倍首相が最終的にどのような発表を行おうとも、この間の増税「決断」報道の経緯は、記録にとどめておく必要があると思われる。

まず、主要メディアの報道をざっと振り返っておこう。報道に間違いがなければ、安倍首相は11日から20日にかけて、少なくとも4度(11日、12日、18日、20日)にわたり「決断」を繰り返したことになる。


(中略)


官房長官の否定発言は無視


これら報道の間に、菅義偉官房長官は繰り返し、安倍首相はまだ決断していないと説明していたが、そうした発言が報じられることはなかった。


(中略)


ソースの表示なき記事は「ゴミ箱行き」


安倍首相は自らの肉声で「決断」の意思を表示したわけではない。仮に会見等の場で表明していれば「〜を表明した」と報じられるし、一部の関係者に伝達していれば「決断したことを〜に伝えた」と報じられる。しかし、今回はどのメディアも「表明」「伝達」いずれの事実も報じておらず、「意向を固めた」「決断した」といった表現で報じていた。
「意向」とか「決断」とかいう内面的事実を、メディアは一体どのように確認したというのだろうか。さまざまな周辺情報(増税に備えた経済政策の検討を指示した等)から「決断している可能性が高い」と推測できるからといって、「決断した」と断定していいはずがない。
もし、「決断」の裏付けを取れたなら、その根拠となる事実関係や、ソース(情報源)を読者に示してしかるべきである。ところが、各紙の「決断」報道は、日経新聞だけが「複数の政府関係者によると」と書いたほかは、全くソースについて触れていなかった。単に「安倍首相は…決断した」とだけ書いて、根拠やソースは何も書かなかったのである。ソース情報は、読者に報道内容の信ぴょう性や情報源の意図を知る重要な手がかりとなるものだ。それを全く示さない記事は、「メディアが書いたものだから信じなさい」と一方的に事実認識を押しつけているとみられても仕方がない。
日経新聞記者の牧野洋氏によると、こうした「出所不明記事」は英字紙では記事として扱ってもらえず「ゴミ箱行き」となるそうだ(『官報複合体』講談社)。仮に「政府関係者によると」と表記したとしても、あまりに漠然としすぎていてソースを示したとはいえないという。


(中略)


「決断」は早晩、国民の前に明らかにされることだった。各メディアがすべきことは、競って首相の心の中を読み取ることではなかったはずだ。この目下最大の政策テーマについて、「決断」が下されるギリギリまで、様々な観点で徹底的に分析し、分かりやすく論点を整理し、論者に議論を戦わせ、国民や政治家に有益な判断材料を提供し、自社の旗幟を鮮明にすること。10月上旬までにいろいろな観点で、紙面をにぎわせ、人々の「政策」に対する関心を高めることができたはずだ。
各紙が競ってした「決断」前倒し報道は、熟議の時間を減らす以外にいったい何をもたらしたのだろうか。


(中略)


(*1) 本記事掲載後、安倍首相が25日、訪米同行記者団に対し、「まだ消費税を引き上げるかどうか決めていない。さまざまな経済指標を分析しながら判断していきたい」と述べていたことが明らかになりました。「みちばな しとう」様、情報提供ありがとうございました。(2013/9/26 12:30追記)


消費増税報道を斬る(上)―安倍首相「決断」をめぐる異様な報道(楊井 人文) - 個人 - Yahoo!ニュース 消費増税報道を斬る(上)―安倍首相「決断」をめぐる異様な報道(楊井 人文) - 個人 - Yahoo!ニュース 消費増税報道を斬る(上)―安倍首相「決断」をめぐる異様な報道(楊井 人文) - 個人 - Yahoo!ニュース



このように、菅官房長官安倍総理が繰り返し否定しているにも関わらず、マスコミは「安倍総理が消費税増税を決断」という記事を新聞やテレビニュースのトップで流し続け、総理や官房長官の発言は無視されています。
経済評論家の山崎元氏は、この記事を書かせたのは財務省だと推測していますが、誰が考えてもそれ以外の結論はあり得ないでしょう。

 大新聞では、消費税率を来年度から8%に引き上げることが既に決まった事実のように報じられている。

 先日は、社説で消費税率引き上げへの慎重論を述べていた『読売新聞』が、安倍晋三首相が税率を引き上げる「意向を固めた」と報じた。その後、『朝日新聞』も「消費税 来年4月8%」、「安倍首相が決断」とでかでかと1面トップで報じた。

 残念ながら、両紙とも、何を根拠にそうだと判断したのかが書かれていない半人前の報道だが、これが日本の公開情報なのだから、仕方がない。

 それでも分かるのは、誰かがこれらの記事を「書かせた」ということだ。読売・朝日がいかに偉くとも、根拠の全くない記事は書けない。首相側近の人物なり、関連する担当と責任を持つ官僚なりからの情報(非公式な談話で十分らしいが)がなければ記事は書けぬ。本件を主管するのは財務省だから、財務省の官僚ないしは、関係者が、大新聞に情報を流して、記事を書かせていると考えるのが普通の推測だろう。


【経済快説】引き上げ決定?の消費税 首相は財務官僚に従うだけでいいのか - 経済・マネー - ZAKZAK 【経済快説】引き上げ決定?の消費税 首相は財務官僚に従うだけでいいのか - 経済・マネー - ZAKZAK 【経済快説】引き上げ決定?の消費税 首相は財務官僚に従うだけでいいのか - 経済・マネー - ZAKZAK



以前、僕は財務省の「歳出権」の最大化という考え方の行き着くところは中国のような社会であると言いましたが、今のマスコミはすでに中国のような報道統制が実現してしまったと言えるでしょう。
*1

このように財務省が消費税増税にこだわる理由を考えると、「歳出権」の最大化という目標に行き着きます。そして、その「歳出権」の最大化という視点から様々な問題を考えると、これまでは見えなかった別の理由が見えてくると思います。
そのような考え方が行き着く先は、個人の権利が官僚の利権のために当たり前のように蹂躙される、今の中国のような社会ではないでしょうか。


「裁量権」のための消費税増税 - Baatarismの溜息通信 「裁量権」のための消費税増税 - Baatarismの溜息通信 「裁量権」のための消費税増税 - Baatarismの溜息通信



恐らく、財務省安倍総理が土壇場になって消費税増税を撤回することがないように、マスコミを使ってすでに消費税増税が決まったような記事を書かせて、「外堀を埋める」作戦に出ているのでしょう。その手先となっているのが、麻生財務相、甘利経財相、野田自民党税調会長などの、財務省シンパの政治家達でしょう。このような政治家からリークされた情報を情報源として、やはり財務省シンパであるマスコミの記者達が、あのような「出所不明記事」を書き散らしているのだと思います。
また、前回の記事で書いたように、財務省は「歳出権」をちらつかせることで、自民党議員の大部分を消費税賛成にしてしまいました。これもまた「外堀を埋める」作戦でしょう。

自民党議員の多くは、特定の支持団体の支援で当選してきた議員です。そのような議員は自分の支持団体に予算を分配したいため、予算での「歳出権」を握る財務省に従いやすい傾向があるでしょう。また、消費税増税そのものにも賛成しやすい傾向があります。
そのような議員が多くを占める自民党を、消費税増税一色にするのは、財務省にとっては容易なことだったでしょう。その工作によって、安倍総理は「外堀を埋められた」のだと思います。


安倍総理は財務省の「歳出権」の前に屈するのか? - Baatarismの溜息通信 安倍総理は財務省の「歳出権」の前に屈するのか? - Baatarismの溜息通信 安倍総理は財務省の「歳出権」の前に屈するのか? - Baatarismの溜息通信



このように財務省はマスコミと自民党議員という二つの「外堀」(「外堀」と「内堀」と言うべきかもしれませんが)を埋めることで、安倍総理が消費税増税を余儀なくされる環境を作っているのです。まさに安倍総理の周りは財務省のポチばかりだと言えるでしょう。
そのような作戦の中心になっているのが、木下康司財務事務次官でしょう。昨年消費税増税法案が国会を通過したときは、当時の勝英二郎前財務次官が裏側で暗躍しましたが、今は木下康司財務事務次官が同じように政治の裏側で暗躍しています。まさに財務省財務省による財務省のための消費税増税であり、もはや社会保障財政再建も全く顧みられなくなってしまいました。これらの目的のために消費税増税が必要だと考えた人達は、財務省に騙されたと言うしかないでしょう。


[http://farm6.staticflickr.com/5458/9830949194_009d5bb124_o.jpg:image:w320]


今、増税賛成派が主張しているのは「今から変更しては現場に混乱を招く」という理由ですが、そもそも今年10月に総理が最終判断するというのは昨年国会で法案が可決された時から決まっていたことですから、当然現場はそれを考慮すべきでした。だから「現場の混乱」を理由にした増税賛成論は、理屈が通っていないことになります。そんなことを言うのであれば、昨年法案が通る前に言うべきでした。これは財務省のバラマキ路線(エコヒイキ路線という方が適切でしょうが)のために、社会保障財政再建も錦の御旗にできなくなった増税派が、苦し紛れに持ち出した理由でしょうね。


このように、昨年さんざん言われていた社会保障財政再建といううわべの理由が、今ではすっかり消えてしまい、財務省の「歳出権」増大という真の理由がむき出しになってきました。そしてマスコミや政治家、さらには経済学者やエコノミストなど、財務省のポチとなったのが誰かなのかもはっきりしてきました。
来週中に安倍総理は消費税増税の最終決断をして、今度こそ「誤報」ではない本当のニュースが流れるでしょう。その決断はアベノミクスの行方を決め、今後の日本の政治や経済を左右するものになるでしょう。


今、消費税増税対策として、数兆円規模の公共事業や法人税減税が行われるという「出所不明記事」が出ています。その財源には今年になってからの税収増を充てると言われていますが、その税収はアベノミクスの「第一の矢」、すなわちリフレ政策がもたらしたものです。消費税増税による景気悪化を防ぐために、リフレ政策で得られた税収を充てるというのですから、このようなことが検討されているのであれば、長年リフレ派が主張してきたように、デフレ脱却を優先するリフレ政策が正しく、デフレ脱却前の消費税増税が間違いであることを示していると言えるでしょう。
ならば、消費税増税は先送りか増税幅圧縮をして、増税がデフレ脱却の邪魔をしないことが必要だと思います。昨年、野田政権が14年4月から3%の消費税増税を行うと決めたのは間違いでした。古来、「過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」*2と言われています。安倍総理にはこの言葉の重みをもう一度考えて欲しいです。そして、野田民主党政権と谷垣自民党執行部がやってしまった過ちを正して欲しいと思います。

*1:余談ですが、マスコミを制圧した財務省が次に考えるのは、中国共産党と同じく、ネットの規制だと思います。消費税増税法案が可決されたときに裏で暗躍した勝英二郎財務事務次官が、今は日本有数のインターネットプロバイダーであるインターネットイニシアティブ(IIJ)の社長になっていますが、この天下りはネットの将来を考えると不気味な話だと思います。

*2:これは「論語」の言葉のようですね。http://homepage1.nifty.com/kjf/China-koji/P-011.htm

安倍総理は財務省の「歳出権」の前に屈するのか?

消費税増税を巡って、先週、マスコミが奇妙な「誤報」を出しました。

読売新聞は、9月12日付朝刊1面トップで、安倍晋三首相が消費税を来年4月に8%に予定どおり引き上げる意向を固め、増税による腰折れ対策として5兆円規模の経済対策を実施する考えだと報じました。共同通信毎日新聞なども同様に報じました。これに対し、菅義偉官房長官は12日午前の会見で、安倍首相が増税について「決断をしたという事実はありません」と否定。5兆円規模の経済対策についても「具体的な数字は全く出ておりません」としています。

官房長官は、10日の閣僚懇談会で安倍首相が経済政策のとりまとめを指示したことは認めていますが、増税するかどうかの最終判断は「10月上旬」になるとし、「全く固めたということは事実と違う」と述べています。

他方、12日付朝日新聞夕刊や12月付NHKは、安倍政権内で増税を想定して5兆円規模の経済対策を検討していると報じる一方で、安倍首相は経済対策を見極めた上で最終判断すると伝えており、まだ最終判断には至っていないことを示唆しています。


来年の消費増税 「首相の決断事実ない」と官房長官 | GoHoo 来年の消費増税 「首相の決断事実ない」と官房長官 | GoHoo 来年の消費増税 「首相の決断事実ない」と官房長官 | GoHoo



マスコミの憶測記事や「飛ばし」記事はよくあることですが、この「安倍総理が消費税増税決定」記事は、菅官房長官が記者会見で否定した後も、流され続けました。

関連記事を時系列で並べると、このようになります。


安倍晋三首相は9日、来年4月に消費税率を8%に引き上げるための経済指標面での環境は整った、と判断した。内閣府がこの日発表した4〜6月期の国内総生産(GDP)の2次速報値が大幅に上方修正されたためだ。安倍政権は増税した場合に景気が腰折れするのを防ぐため、経済対策の本格検討に入る。首相は好調な指標に自信を深めており、経済対策の規模や中身を見極めたうえで、10月1日にも増税の可否を最終判断する方針だ。

(2013/9/10 06:20 朝日新聞


朝日新聞デジタル:安倍首相、増税指標クリアと判断 GDP上方修正で - 政治 朝日新聞デジタル:安倍首相、増税指標クリアと判断 GDP上方修正で - 政治 朝日新聞デジタル:安倍首相、増税指標クリアと判断 GDP上方修正で - 政治

安倍晋三首相は10日、10月上旬に行う消費税率引き上げの最終判断を前に、9月中に経済政策パッケージを取りまとめるよう、関係閣僚に指示した。

消費税率を予定通り引き上げる場合は十分な対策が必要との判断で、あらかじめ経済対策をとりまとめて、増税を予定通り行う場合には、十分な景気腰折れ対策と一体で実行する。

<9月中に政策パッケージ、消費増税最終判断の材料>

安倍首相は、現在は15年続いたデフレから脱却する最後のチャンスと位置付けており、消費増税によってこの機会を逃すことは避けたい思いが強い。この日も、経済政策パッケージ取りまとめを指示した際、消費増税について10月上旬に判断するとしたうえで「デフレ脱却、経済再生と財政再建への道筋が確かなものかをしっかり見極め、判断したい」と発言。「消費税を引き上げる場合には十分な対応策が必要だ。景気を腰折れさせてはならない」と語った。

ただ、官邸サイドはこの政策パッケージについて「成長の果実を全国津々浦々まで届けるためのものだ。消費税の判断とは分けて考えてもらわないといけない」(世耕弘成官房副長官)と位置付ける。消費増税ありきで政策をまとめるわけではないという認識だ。

一方、甘利明経済再生担当相は、経済対策パッケージは消費増税の最終判断の材料になると指摘。麻生太郎財務相消費税法には3%と2%の引き上げが明記されており、対策はその方向で考えることになるとの認識を示した。

(2013/9/10 17:18 朝日新聞


安倍首相が経済政策とりまとめ指示、消費増税判断の材料 | ビジネスニュース | Reuters 安倍首相が経済政策とりまとめ指示、消費増税判断の材料 | ビジネスニュース | Reuters 安倍首相が経済政策とりまとめ指示、消費増税判断の材料 | ビジネスニュース | Reuters

 安倍首相は11日、消費税率を来年4月に現行の5%から8%に予定通り引き上げる意向を固めた。

 増税が上向いてきた景気の腰折れにつながることを防ぐため、3%の増税分のうち約2%分に相当する5兆円規模の経済対策を合わせて実施する考えだ。経済対策は、2013年度補正予算案と14年度予算案の一体的な編成や、減税を柱とする税制改正で対応する。

 首相は、10月1日に日本銀行が発表する9月の企業短期経済観測調査(短観)を分析した上で最終判断し、直後に記者会見を行い、増税に踏みきる理由や経済対策などを表明する方向で調整している。

 消費税は、1%の税率引き上げで2・7兆円の税収増となると見込まれる。複数の政府筋によると、首相は、3%の引き上げで約8兆円の負担を国民に求めた場合、回復基調にある景気が失速しかねないと懸念している。このため約2%分を経済対策で国民に事実上還元することで、景気への影響を1%引き上げと同程度に抑えることにした。

(2013/09/12 04:05 読売新聞)


消費税率、来年4月に8%…首相が意向固める : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) 消費税率、来年4月に8%…首相が意向固める : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) 消費税率、来年4月に8%…首相が意向固める : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 安倍晋三首相が、来年4月に消費税率を5%から8%へ予定通り引き上げる方針を固めたことが12日分かった。政府は、増税による景気腰折れを防ぐため、税率上げ幅3%のうち2%分に当たる5兆円規模の経済対策をまとめる方向で本格検討に入った。首相は10月1日に増税方針と経済対策を表明し、財政再建とデフレ脱却を両立させる姿勢を示す構えだ。

(2013/09/12 09:34 共同通信


消費税率、来年4月8%に 首相、10月1日表明へ - 47NEWS(よんななニュース) 消費税率、来年4月8%に 首相、10月1日表明へ - 47NEWS(よんななニュース) 消費税率、来年4月8%に 首相、10月1日表明へ - 47NEWS(よんななニュース)

安倍晋三首相は12日、現行5%の消費税率を、消費増税関連法に沿って2014年4月に8%に引き上げる意向を固めた。各種経済指標が堅調なことから、増税の環境は整ったと判断した。増税による景気の失速を避けるため、5兆円規模の経済対策を合わせて実施する方針だ。

増税の是非を判断するに当たり、首相は4〜6月期の国内総生産(GDP)改定値を最重視していた。9日発表のGDP改定値は、名目で年率換算3.7%増、実質で3.8%増となり、消費増税関連法付則18条に増税の目安として明記された経済成長率(名目3%、実質2%)を上回った。
 11日発表の7〜9月期の大企業全産業の景況判断指数や、8月の国内企業物価指数も改善。首相は10月1日に発表される完全失業率や日銀の企業短期経済観測調査(短観)の内容を確認した上で、同日中にも記者会見して増税を表明する。
(2013/09/12 10:08 時事通信


時事ドットコム:消費税、来年4月に8%=経済対策5兆円で下支え−安倍首相、来月1日にも表明 時事ドットコム:消費税、来年4月に8%=経済対策5兆円で下支え−安倍首相、来月1日にも表明 時事ドットコム:消費税、来年4月に8%=経済対策5兆円で下支え−安倍首相、来月1日にも表明


Q.消費税についてお伺いします。一部報道で、安倍総理が来年4月から8%に引き上げる方針を固めたと報じられています。長官の所見と事実関係をお願いします。
A.総理が消費税を引き上げるというですね、決断をしたという事実はありません。総理は種々の経済指標をしっかりと見きわめて、総理自身が来月上旬に判断をされるということであります。ただ、先般の閣僚懇でですね、消費税を引き上げる場合には経済への影響もあるため、十分な対応策が必要であり、そうした意味合いも含めて経済政策パッケージをまとめるように、総理から10日の閣僚懇で指示があったところであります。規模や中身については、これから甘利大臣と麻生大臣を中心に詰めていく、そこはそうした事実です。
Q.10日の閣僚懇でそうした指示があったということは、素直に受け取れば、消費税引き上げとセットで経済対策のパッケージもという受けとめもできると思うんですが、そうではないんですか。
A.私も実は総理との会談に同席をしました。さまざまな状況を考えた中で、総理は10月上旬に、私が責任を持って判断しますと、そういうことでしたから、全く固めたということは事実と違うと思います。
Q.同じ読売の報道で、経済対策の規模なんですが、5兆円規模で総理が指示を出したということなんですが、これは大体5兆円という指示なんでしょうか。
A.具体的な数字は全く出ておりません。
Q.数字というのも、じゃ、これから……。
A.今申し上げましたように、経済政策、パッケージ取りまとめるようにですね、総理がこういうことを指示したわけですから、それに基づいて、規模や中身については、今申し上げましたように、麻生大臣と甘利大臣との間で詰めていくということになるだろうと思います。ただ、そうしたもの全体を総理自身が掌握した上で、最終的に判断するということですから、まだ判断はしてません。


平成25年9月12日(木)午前 | 平成25年 | 官房長官記者会見 | 記者会見 | 首相官邸ホームページ 平成25年9月12日(木)午前 | 平成25年 | 官房長官記者会見 | 記者会見 | 首相官邸ホームページ 平成25年9月12日(木)午前 | 平成25年 | 官房長官記者会見 | 記者会見 | 首相官邸ホームページ

Q.午前中、消費増税の決断したという事実はないということだったんですが、その後も一斉に報道が続いて、株も為替も金利も非常に落ち着いているんですけれども、その辺はどうごらんになっていらっしゃいますか。
A.午前中、申し上げたとおりでありまして、それがすべてであります。
Q.報道にもかかわらず、市場全般が落ち着いていたということに関しては、いかがでしょうか。
A.それは、私は、あまりよくそこはわかりません。マーケットというのは報道で動くのかどうか、そこを承知してません。


平成25年9月12日(木)午後 | 平成25年 | 官房長官記者会見 | 記者会見 | 首相官邸ホームページ 平成25年9月12日(木)午後 | 平成25年 | 官房長官記者会見 | 記者会見 | 首相官邸ホームページ 平成25年9月12日(木)午後 | 平成25年 | 官房長官記者会見 | 記者会見 | 首相官邸ホームページ


 安倍晋三首相は十二日、二○一四年四月から予定通り消費税率を5%から8%に引き上げる方針を決めた。最近の各種経済指標が堅調だとして、増税の環境はほぼ整ったと判断した。増税に伴う景気の落ち込みを避けるため、五兆円規模の経済対策を合わせて実施する方向。ただ、五兆円は消費税2%分に相当し、社会保障に充てるはずの増税の目的が大きく損なわれる。

(2013年9月12日 夕刊 東京新聞


東京新聞:消費税 来年4月8% 首相決断 社会保障目的どこへ:政治(TOKYO Web) 東京新聞:消費税 来年4月8% 首相決断 社会保障目的どこへ:政治(TOKYO Web) 東京新聞:消費税 来年4月8% 首相決断 社会保障目的どこへ:政治(TOKYO Web)

政府は、来年4月に消費税率を現行の5%から8%へ予定通りに3%分引き上げる方針を固めた。デフレ脱却の芽を摘むことがないよう、2%の増税分に相当する5兆円規模の経済対策を検討することが浮上している。関係筋が12日明らかにした。

安倍晋三首相は10月1日に日本銀行が発表する企業短期経済観測調査(短観)などを踏まえ最終判断する。

(2013/09/12 19:09 ロイター)


UPDATE 3-政府、来年4月消費税3%引き上げ方針固める 2%分の経済対策も | Reuters UPDATE 3-政府、来年4月消費税3%引き上げ方針固める 2%分の経済対策も | Reuters UPDATE 3-政府、来年4月消費税3%引き上げ方針固める 2%分の経済対策も | Reuters

政府は、今月末をめどに取りまとめる新たな経済対策について、法律どおり消費税率を来年4月から8%に引き上げることを想定し、少なくとも5兆円規模とする方向で調整に入りました。
安倍総理大臣は、経済対策の内容も見極め、景気の腰折れがないと判断できれば、来月1日にも法律どおりの消費税率引き上げを決断することにしています。
(2013/09/12 19:23 NHK


新たな経済対策 5兆円規模で調整 NHKニュース 新たな経済対策 5兆円規模で調整 NHKニュース 新たな経済対策 5兆円規模で調整 NHKニュース



このうち、9/10の朝日新聞の記事については、朝日新聞の予想による記事であると、朝日新聞自身が回答したという情報があります。

 ただいま、朝日新聞社の「お客様センター 記事問い合わせ」に確認しました。
電話対応は「×××さん」とおっしゃる担当者でした。


 当方質問
「安倍首相、増税指標クリアと判断 GDP上方修正で」の記事について、文章上は安倍首相が主体的に増税指標クリアしたと判断したと捉えることができる。
 御社がこの記事を書くにあたって一次資料となる会見やインタビューはいつどこで行われたものか教えていただきたい。


 繰り返します。
 御社がこの記事を書くにあたって一次資料となる会見やインタビューはいつどこで行われたものか教えていただきたい。


 お答え。


 ×××さんには記事及び担当部署に確認を頂き、次の回答を頂きました。この記事については、安倍首相がこのような発言をしたものではなく、朝日新聞の記者が、GDPの上方修正や米倉経団連会長が増税を求めているなどの外部環境を総合的に鑑みた上で、このような記事を作成いたしました。


 さらにmercury55さん(この電話をした方)のツッコミ。


 こちらより、つまりこれは朝日新聞社自体の予想に基づく記事ということですねと念押しをしたところそうですと言われました。
 この記事の記述ではあたかも安倍首相が発言したように取られる、朝日新聞社の意見であることを明示するべきと意見はしました。


大学では教えられない歴史講義 : 倉山塾生、朝日の捏造を見破る! by kurayama - 憲政史研究者・倉山満の砦 大学では教えられない歴史講義 : 倉山塾生、朝日の捏造を見破る! by kurayama - 憲政史研究者・倉山満の砦 大学では教えられない歴史講義 : 倉山塾生、朝日の捏造を見破る! by kurayama - 憲政史研究者・倉山満の砦



ただし、9/12の記事については、官房長官が明確に否定した後も、「増税決定」報道が流れ続けています。特にNHKは午後7時のニュースのトップでこの報道をしたそうです。
通常の「飛ばし」ならば、当事者が報道を否定すればそれで収まるのですが、今回はそうなってはいません。恐らくマスコミは、マスコミ自身が官房長官会見よりも信憑性があると考えているニュースソースから、情報を得ているのでしょう。それもほぼ全てのマスコミが。
だから官房長官が否定した後も、それを無視するかのように報道が流れ続けたのでしょう。


ただ、このニュースが根も葉もないものかというと、そうでもなさそうです。
高橋洋一氏はこの件について、次のような推測をしています。

来年4月から消費税率を5%から8%へ引き上げるのは、各マスコミでも既成事実のように報道している。筆者は、意見としては「上げるべきでない」という消費税増税の反対論者であるが、客観的に先週の動きをみれば、「増税になる可能性が高まりつつある」のは否めない。

筆者は並のキャリア官僚では経験できない官邸勤務が長い。各紙が報じる首相動静などを見ていれば、大体のところは見当がつく。


10日の4者会談+11日のナベツネとの会食


筆者が注目したのは、10日(火)と11日(水)の首相動静だ。10日は、

「午後0時55分から同2時2分まで、麻生太郎副総理兼財務相甘利明経済再生担当相、菅義偉官房長官。」

「同4分、閣議開始。午後2時23分、閣議終了。」

「午後6時同38分、東京・丸の内のパレスホテル東京着。同ホテル内の日本料理店「和田倉」で渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長らと会食。午後9時15分、同ホテル発。」


11日は、

「午後3時54分から同4時42分まで、自民党高村正彦副総裁、野田毅税制調査会長。」


これから推測できるのは、10日の安倍、麻生、甘利、菅氏の4者会談の結果、増税の方向となって、閣議後の閣僚懇談会で安倍首相が経済対策を今月末をめどにまとめるよう指示をした。

その夜に、渡辺恒雄氏との会食では、明言はないものの、その日の雰囲気が伝わった可能性はある。

渡辺恒雄氏は、8月上旬政治家らへの手紙を書いて、来年4月の消費税増税を見送り、軽減税率の整備とともに再来年の消費税増税を主張していた。この手紙は、新聞業界への軽減税率の適用なしでの消費税増税に反対しただけで、ひょっとしたら増税を見越したアリバイ作りかもしれない。筆者も手紙を某政治関係者からみせてもらって拍子抜けだったが、永田町界隈ではかなり話題になっていた。

翌11日、自民党への説明というの「要路」を踏まえている。ここまで来れば、情報は事実上公開である。マスコミも、党の関係者からウラをとれたはずだ。

そして、12日(木)の読売朝刊に、安倍首相は消費税増税の方針と報じられた。しかも、同日付けの読売のスポーツ報知が、読売を補完するように10日の政府内の動きを報じていた。

一方、12日、菅官房長官は「あの総理が、消費税を引き上げるというですね、決断をした事実はありません。総理は、経済指標をしっかり見極めて、総理が来月上旬に判断されるということであります。」と記者会見で語ったが、これは、10日と11日の官邸の動きと矛盾しない。


ナベツネの手紙はアリバイ!?元官邸勤務者として10日、11日の首相動静から消費税増税を読み解く  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] ナベツネの手紙はアリバイ!?元官邸勤務者として10日、11日の首相動静から消費税増税を読み解く  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] ナベツネの手紙はアリバイ!?元官邸勤務者として10日、11日の首相動静から消費税増税を読み解く  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社]



さて、これが本当ならなぜ安倍総理増税実施へと傾いたのでしょうか。
一つの要因として、9日に公表された4〜6月期四半期別GDP速報 (2次速報値)で、実質GDPが前期比0.9%増(年率換算3.8%増)だったことがあるでしょう。ただ、高橋洋一氏はそのうち3分の1が10兆円の景気対策の結果であり、今回の景気対策はその半分であるため、消費税増税のマイナス圧力には十分でないと論じています。

さて、報じられている経済対策であるが、5兆円規模といわれている。あるべき論をいえば、消費税増税で景気失速の懸念があるなら、消費税増税を見送ればいいという簡単な話が出来ないのが痛い。

また、消費税増税は恒久的案措置なので、それへの対策も恒久的な措置にしないと消費税増税のマイナス効果のほうが上まわるということになる。ただし、今、検討されているのが経済対策なので、一回限りの5兆円ということであるので、今回の消費税増税3%は年間8兆円なので、今後5年間だけを考えても、一回限りの5兆円では一時的なもののはずで、5/40=6%しか還元しておらず、話にならない。

新聞では、1年だけを見て、年間8兆円のうち5兆円を還すので、実質1%の消費税増税と同じという解説もあるが、恒久措置と一時措置を混同しており誤りだ。なので、経済対策5兆円では3%の消費税増税に対して雀の涙だ。

なお、9日に公表された4〜6月期四半期別GDP速報 (2次速報値)では、実質GDPが前期比0.9%増(年率換算3.8%増)だった。これを国内民間需要、国内公的需要、国外民間需要の寄与度に分けると、それぞれ0.4%、0.3%、0.2%となる。公的需要が0.3%と三分の一なのは、今年1月にやった10兆円の景気対策の賜だ。今回の経済対策はその半分しかないことも留意すると、消費税増税のマイナス圧力には十分でない。


ナベツネの手紙はアリバイ!?元官邸勤務者として10日、11日の首相動静から消費税増税を読み解く  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] ナベツネの手紙はアリバイ!?元官邸勤務者として10日、11日の首相動静から消費税増税を読み解く  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社] ナベツネの手紙はアリバイ!?元官邸勤務者として10日、11日の首相動静から消費税増税を読み解く  | 高橋洋一「ニュースの深層」 | 現代ビジネス [講談社]



このように、今回のGDP成長率は景気対策でかさ上げされた数字です。これを除けば、まだ今回の消費税増税の目安とされる名目3%成長には達しないでしょう。実質2%成長には達していますが、まだ実質成長率(年率換算3.8%)が名目成長率(年率換算3.7%)を上回っている状況なので、デフレを脱却しているとは言えません。


そのような状況なのに、なぜ安倍総理増税へと傾いているのか、その理由と考えられる記事がありました。

 自民党税制調査会野田毅会長)は9日、来年4月の消費増税を巡り、全議員対象の会合を党本部で開いた。2020年夏季五輪の東京開催決定や4〜6月期の国内総生産(GDP)の上方修正など好材料が続く中、予定通り8%への引き上げを求める意見一色となった。税調は増税そのものの議論は今回限りとし、臨時国会に向けて成長戦略の検討を加速する方針だ。

 野田氏はあいさつで「わが党がどういう公約をし、選挙を戦い、今日に至ったか確認したい」と発言。「先送り」などの意見が出れば好材料を打ち消しかねず、増税は既定路線とくぎを刺した。

 これに対し、出席者は「増税は3党合意で決めたこと。きちんとやるべきだ」「五輪開催が決まり、景気先折れの懸念はなくなった」など、いずれも予定通りの実施を求めた。首相と金融緩和策で歩調を合わせる山本幸三衆院議員も「デフレ脱却と消費税は関係ない。10月まで延ばさず早く決めるべきだ」と首相の早期の決断を求めた。


消費増税:自民、8%への引き上げ論一色に 全議員会合で− 毎日jp(毎日新聞) 消費増税:自民、8%への引き上げ論一色に 全議員会合で− 毎日jp(毎日新聞) 消費増税:自民、8%への引き上げ論一色に 全議員会合で− 毎日jp(毎日新聞)



このように、自民党内部が消費税増税賛成一色では、安倍総理もその声を無視するのは難しいでしょう。
かつて、小泉総理は、自民党内部が郵政民営化反対一色の状況で、あえて郵政民営化を公約にして解散総選挙を行い、反対派を離党させて「刺客」候補を立てて追い詰め、その結果大勝しました。安倍総理が消費税増税反対を貫くのであれば、同じ事をやる覚悟が必要になるでしょう。
ただ、今は野党がボロボロの状況ですし、世論調査では消費税を8%に上げることについては反対の方が多いですから、そこまでやっても安倍総理は勝てるでしょう。ただ、その覚悟が安倍総理にはないのでしょう。
だから総理は増税実施に傾いているのだと思います。


さて、自民党内部が消費税増税賛成一色になってしまったのは、なぜでしょうか。
昨年9月に書いた記事で、僕は特定の支持団体に支えられた政治家は、税金によって集めた予算を特定の企業や団体、業界に分配することで支持や票を得るため、増税によって自分たちの財布を膨らませることに魅力を感じると言いました。

一方、政治家は選挙によって選ばれる存在ですから、一番関心があるのは票です。税金によって集めた予算を特定の企業や団体、業界に分配することは同じでも、得られる利権は最終的には団体・業界の支持を得たり、政治活動で票を獲得するために使われます。このような政治家は、増税によって自分たちの財布を膨らませることにも魅力を感じるでしょう。
ただし、政治家が票を得る手段はこのような利権によるものだけではありません。幅広く大衆の支持を得て(悪く言えばポピュリズム的な方法によって)票を獲得することも可能です。このような方法で票を獲得できる政治家は、予算を特定の企業や団体、業界に分配する必要はありませんから、増税によって自分たちの財布を膨らませることには、大きな魅力は感じないでしょう。


消費税増税を主導したのは誰なのか? - Baatarismの溜息通信 消費税増税を主導したのは誰なのか? - Baatarismの溜息通信 消費税増税を主導したのは誰なのか? - Baatarismの溜息通信



また、前回の記事で、財務省が消費税増税にこだわる理由は、「歳出権」の最大化であると言いました。
(この記事はタイトルを間違えていて、「歳出権」を「裁量権」としていました。すいませんでした。)

しかし財務省の視点から見ると、消費税増税による税収を景気対策名目で補正予算として配分することで、財務省の権力が増します。財務省シンパの政治家にとっても同様でしょう。
このように、消費税増税はマクロ経済の視点で見れば無意味ですが、財務省など増税派の利権確保という視点で見れば、大きな意味があります。
高橋洋一氏は、財務省増税を志向するのは予算での「歳出権」の最大化を求めているからだと言っています。


(中略)


僕もこれが財務省の本音であり、財政再建社会保障はそれをカモフラージュするための名目にすぎないと思います。


「歳出権」のための消費税増税 - Baatarismの溜息通信 「歳出権」のための消費税増税 - Baatarismの溜息通信 「歳出権」のための消費税増税 - Baatarismの溜息通信



自民党議員の多くは、特定の支持団体の支援で当選してきた議員です。そのような議員は自分の支持団体に予算を分配したいため、予算での「歳出権」を握る財務省に従いやすい傾向があるでしょう。また、消費税増税そのものにも賛成しやすい傾向があります。
そのような議員が多くを占める自民党を、消費税増税一色にするのは、財務省にとっては容易なことだったでしょう。その工作によって、安倍総理は「外堀を埋められた」のだと思います。


ただ、今回消費税増税を決定すれば、それはアベノミクスの「終わりの始まり」になると思います。
先ほども述べたように、今回の決定の根拠となった4〜6月期四半期別GDP速報は、景気対策でかさ上げされた数字です。消費税増税は「マイナスの景気対策」ですから、マイナス8兆円の景気対策になります。それに加えて景気対策が10兆円から5兆円に減らされるわけですから、マイナス13兆円の景気対策になります。そしてこの景気対策も1年限りですから、その次の年はマイナス18兆円の景気対策となってしまいます。(もしこの5兆円が複数年度の金額なら、来年のマイナス幅はもっと大きくなるでしょう)
今年、10兆円の景気対策が成長率の3分の1を占めている状況を考えれば、マイナス10兆円を超える「マイナスの景気対策」が景気に与える影響は大きいでしょう。そこに消費税増税の駆け込み需要の反動や、懸念されているユーロ圏や中国などの経済危機が加われば、2014年度はマイナス成長の可能性もあるでしょう。そうなると、1997年の消費税増税の失敗の二の舞となりかねません。
もっとも、当時は円高を志向する速水日銀総裁の時代だったのに対して、今はデフレ脱却を目指す黒田日銀総裁の時代です。だから金融政策はあの頃ほど緊縮的にはならないと期待できます。しかし、財政政策が足を引っ張る状況では、2015年のインフレ目標2%達成は困難となるでしょう。その結果、期待インフレ率は上がらず、リフレ政策の効果が上がらないということも考えられます。リフレ政策はインフレ期待に働きかける政策ですから。
このようにしてアベノミクスが失敗すれば、安倍政権の支持率も下がり、安倍総理の地位も危うくなるでしょう。


それを避けたければ、安倍総理は党内の反対を押し切って、消費税増税を延期するか、少なくとも増税幅を1%に押さえるべきだと思います。
安倍総理財務省の「歳出権」に屈して消費税増税を受け入れるのか、それともそれに逆らって消費税増税を見直すのか、それはアベノミクスや安倍政権の命運を左右することになると思います。安倍総理には、今回の決定がそれだけの重みがあることを、理解してもらいたいと思います。

「歳出権」のための消費税増税

[東京 12日 ロイター] 安倍晋三首相のブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米エール大名誉教授は12日、ロイターとのインタビューに応じ、同日朝に発表された4─6月期国内総生産(GDP)を踏まえ、予定通りの消費税増税は日本の景気に悪影響を与える可能性があるとの認識をあらためて示した。

その上で政府が予定している2014年4月に8%、2015年10月に10%に税率を引き上げるタイミングについて、それぞれ1年先延ばしにすることも一案と語った。インタビューは電話で実施した。

内閣府が12日に発表した2013年4─6月期国民所得統計1次速報によると、実質GDPは前期比プラス0.6%、年率換算プラス2.6%となり、市場の事前予想から下振れた。

浜田氏は以前から、消費税率の予定通りの引き上げには年率4%程度の成長が必要と主張しており、今回の数字を受け、あらためて増税による景気への悪影響を懸念。現状の経済環境で消費増税を実施しても「歳入がすぐに増えるとは限らない」とし、「経済のパイが大きくなることが重要であり、メンツだけを考えて急いで上げる必要はないと思う」と語った。


インタビュー:消費増税、1年先送りも一案=浜田内閣官房参与 | Reuters インタビュー:消費増税、1年先送りも一案=浜田内閣官房参与 | Reuters インタビュー:消費増税、1年先送りも一案=浜田内閣官房参与 | Reuters

4〜6月期の国内総生産(GDP)速報値は年率換算で2・6%増と高い成長が確認されたものの、市場の事前予測(3・4%)は大きく下回った。安倍晋三首相は今回のGDP速報値や9月9日発表の改定値などを基に消費税率を引き上げを最終判断する。先行きに懸念材料も残すなか、最終的にどう決断するのか。政権の命運をかけた議論はこれから大詰めを迎える。


消費増税に最大の難局 4〜6月GDP、高成長も市場の予測を下回る (産経新聞) - Yahoo!ニュース 消費増税に最大の難局 4〜6月GDP、高成長も市場の予測を下回る (産経新聞) - Yahoo!ニュース 消費増税に最大の難局 4〜6月GDP、高成長も市場の予測を下回る (産経新聞) - Yahoo!ニュース



消費税増税を実施するかを判断するための重要なデータとなる、2013年4-6月期実質GDPの1次速報が出ましたが、前期比プラス0.6%、年率換算プラス2.6%となり、市場の事前予想ほど大きな数字ではありませんでした。
この数字を受けて、浜田宏一内閣官房参与は、消費増税の1年先送りを提案しています。


しかし、このように景気の状態を見て、消費税増税の時期や上げ幅を柔軟に変更しようという意見は、安倍総理、菅官房長官、浜田参与、本田参与などが主張していますが、その数は少なく、財務省やその息がかかった政治家やマスコミ、学者は、法律通り来年4月に3%の消費税増税を行うべきという意見です。


そのような意見に対抗している菅官房長官からは、このような発言も出ています。

菅長官は税率引き上げの判断に関し、「デフレ脱却は安倍政権にとって一大事業だ。安易に決めるのではなく、ありとあらゆる(経済)指標、可能性を国民に示した方がいい」と指摘。「官僚は既成事実をつくり(引き上げを)判断せざるを得ない仕組みをつくる。それを今、私はぶち壊している」と述べた。1997年の橋本政権時の消費税率引き上げ後、税収が減少したことにも触れ、その原因や、必要となる対応策を検討していることも明らかにした。


時事ドットコム:消費増税、秋の臨時国会前判断=橋本政権の教訓参考−菅長官 時事ドットコム:消費増税、秋の臨時国会前判断=橋本政権の教訓参考−菅長官 時事ドットコム:消費増税、秋の臨時国会前判断=橋本政権の教訓参考−菅長官



「官僚は既成事実をつくり(引き上げを)判断せざるを得ない仕組みをつくる。それを今、私はぶち壊している」という発言は穏やかではないですが、増税論に対抗している菅官房長官の偽らざる本音なのでしょう。

政府税調の記事を見ても増税論一色ですし、自民党税調の野田会長も予定通り増税すべきとの意見です。

 政府税制調査会(首相の諮問機関)は5日に開いた総会で、来年4月の消費税率引き上げについて議論した。ほとんどの委員は「予定通り消費増税を実施すべきだ」と述べ、政府内で浮上する増税見直し論をけん制した。ただ安倍晋三首相は週内に、増税に慎重な有識者も加えた消費増税の検証の場を設けるよう指示する見通し。現時点では増税見直しを排除しておらず、議論の行方は波乱含みだ。

 5日の政府税調総会には麻生太郎財務相ら関係閣僚と約30人の委員が出席した。

 「財政健全化は日本が成長するうえで根幹となる」。自由討論の場で消費税論議の口火を切ったのはボストンコンサルティンググループの秋池玲子パートナー&マネージングディレクター。増田寛也総務相も「税収とほぼ同じ額の国債発行は極めて異常な姿」と語り、消費増税を予定通り実施すべきだとの考えを力説した。

 産業界の出席者も同調した。「消費税は予定通り絶対上げるべきだと思う」。ローソンの新浪剛史最高経営責任者(CEO)は、日本の財政への信認確保に増税が不可避と指摘。東芝佐々木則夫副会長は「新興国発のリスクなどに対応するため(消費増税で)歳入を確保しておく必要がある」と語った。


消費増税見直し論けん制 政府税調  :日本経済新聞 消費増税見直し論けん制 政府税調  :日本経済新聞 消費増税見直し論けん制 政府税調  :日本経済新聞

 自民党野田毅税制調査会長は31日、産経新聞のインタビューに対し、来年4月に予定されている消費税率の引き上げについて「(安倍晋三政権の経済政策)アベノミクスは消費税率引き上げを前提に成り立っている」と表明。「消費税増税法」で定めた通りに実施すべきだと強調した。増税後の景気対策に関しては、投資減税などで、設備投資を促す仕組みの導入を検討する考えを示した。

 消費税率は平成26年4月に8%、27年10月に10%に引き上げの予定。首相は、4〜6月期の国内総生産(GDP)などの経済指標を踏まえ、今年10月までに8%への引き上げを最終判断する。政府内では、消費税率引き上げに慎重意見もあるが、野田氏は「迷っているイメージはマイナスで、国債金利に影響する。金利が上がればアベノミクスは根底から壊れる」と語った。


野田毅・自民税調会長 アベノミクスは消費増税前提+(1/2ページ) - MSN産経ニュース 野田毅・自民税調会長 アベノミクスは消費増税前提+(1/2ページ) - MSN産経ニュース 野田毅・自民税調会長 アベノミクスは消費増税前提+(1/2ページ) - MSN産経ニュース



安倍総理参院選自民党大勝に導いたにも関わらず、消費税増税問題では四面楚歌に陥っていると言えるでしょう。

しかし、自民党支持者ですら消費税先送りや現状の税率維持が多数であり、国民の声は消費税増税反対に傾いているといえるでしょう。支持者の意見すら無視して増税に走る自民党幹部は、財務省しか見ていないんでしょうね。

共同通信社世論調査によると、来年4月に予定される消費税率の8%への引き上げについて、自民党支持層の40・1%が時期の先送りを求めた。「5%を維持」も32・8%で、「予定通り引き上げる」は25・4%にとどまった。安倍晋三首相は22日の記者会見で「今年4月から6月の経済指標などを踏まえ、経済情勢をしっかり見極める」としており、今秋に最終判断する方針だ。

 自民党以外の主な政党支持層では、いずれも5%維持を支持する意見が最多で民主党の43・6%、日本維新の会の43・7%、公明党の45・2%、みんなの党の55・3%、共産党の61・9%が増税反対を唱えた。

 「支持政党なし」の無党派層でも5%維持がトップの43・0%を占め、先送りは35・4%、予定通りは19・0%。


自民支持の40%先送り論、来年4月の消費増税 現状維持32% - SankeiBiz(サンケイビズ) 自民支持の40%先送り論、来年4月の消費増税 現状維持32% - SankeiBiz(サンケイビズ) 自民支持の40%先送り論、来年4月の消費増税 現状維持32% - SankeiBiz(サンケイビズ)



さて、財務省をはじめとする増税派は、何故そこまで予定通りの増税にこだわるのでしょうか。
彼らの間からは、G20国際公約したとか、増税しなければ国債金利が暴騰して長期金利が暴騰するといった批判が相変わらず聞こえますが、G20などの国際会議はそもそも何かを「公約」する場所ではないです。また、最近は当の増税エコノミストから、長期金利が上がっても円高になるという「国債・通貨の信認」論に反する意見も出てきている始末で、彼ら増税エコノミストの「信認」が揺らいでいるのではないかと思います。

 消費増税について、「国際公約だから実行すべき」「先送りすれば日本の信認が失われる」といった議論がよくある。そもそも「国際公約」とは何か。そして国際公約を実行しないとどんな問題が起こるのか。今さら誰にも聞けないことを解説しよう。

 まず、「国際公約」が行われているとされる国際会議とはどういうものだろうか。主なものとして、G7(7カ国財務相中央銀行総裁会議)がある。G7は日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダの財務相中央銀行総裁がメンバー。G20(20カ国財務相中央銀行総裁会議)は、G7に加え、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、南アフリカサウジアラビア、トルコの財務相中央銀行総裁に、EU議長国の財務相欧州中央銀行(ECB)総裁などが参加する。

 これらの国際会議は、その場で新たな約束を各国間で行うのでなく、既に各国で決められている内容を披露する場である。先進国では、政府の権能は国会の議決の範囲内であるので、国際会議で国会の意向を無視して勝手に国として約束することはできないというのが基本である。

 となると、「国際公約」という言葉自体が怪しくなってくる。消費増税についていえば、「景気回復などの環境が整えば、消費税率を予定通り上げる」と国際会議で発言されるが、これは、昨年に成立した消費税増税法の内容で、決まったことである。

 もちろん、無条件で消費増税するというわけではなく「景気回復などの環境が整えば」なので、その条件整備を秋に判断するのだから、何も目新しいことを言っていない。要するに、「国際公約」とは、国内で決まったことを一方的に国際会議の場で宣言することといえる。

 ところが、消費増税派は、増税の環境条件のところを無視して、増税することのみを強調する。条件を見極めて増税を撤回しても、「国際公約」違反にはならない。要するに、昨年に成立した消費増税法を改正して、消費増税を延期したとしても、前の「国際公約」に反しないし、それが新たな「国際公約」にもなるのだ。

 国際会議において各国ともに「国際公約」として一方的な宣言をするが、仮に国内法によってそれが変更されても、各国ともに変更した国を非難することはない。


【日本の解き方】国際会議は各国が一方的に宣言する場所 増税撤回でも国際公約違反にならない - 政治・社会 - ZAKZAK 【日本の解き方】国際会議は各国が一方的に宣言する場所 増税撤回でも国際公約違反にならない - 政治・社会 - ZAKZAK 【日本の解き方】国際会議は各国が一方的に宣言する場所 増税撤回でも国際公約違反にならない - 政治・社会 - ZAKZAK

<懸念される海外勢の国債・株売り>

これに対して、第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミストは「消費税の増税計画を見直すと財政再建計画は大きく狂う。日本の長期金利が早晩、上昇していくという予想を強め、日米金利差の縮小を意識させる」と指摘。「金利差が縮まるという予想は、円高ドル安要因になる。これは同時に株安要因」とし、「この期に及んで、安倍首相が消費税率引き上げの先送りを決定するのならば、それは円高と株安を誘発する危険な判断」と懸念する。


アングル:株安・円高、消費増税慎重論が誘発との見方浮上 | Reuters アングル:株安・円高、消費増税慎重論が誘発との見方浮上 | Reuters アングル:株安・円高、消費増税慎重論が誘発との見方浮上 | Reuters



このように、今、増税して財政再建しなければ、「国債・通貨の信認」が失われて財政破綻するという意見は、成り立たないでしょう。
また、昨年、消費税増税が決定されたときは「社会保障と税の一体改革」という名目でしたが、その社会保障を論じる三党協議は、参院選民主党の壊滅的な大敗の結果、民主党が離脱して崩壊してしまいました。社会保障改革のための消費税増税という建前も、すでに崩壊してしまったのは間違いないでしょう。

 民主党は5日、社会保障制度改革をめぐる自民、公明、民主3党の実務者協議を離脱する方針を決めた。ただ別に設けられている税制の3党協議は続行する。

 桜井充政調会長が同日夕、国会内で開かれた社会保障・税一体改革に関する党会合後の記者会見で、党の見解を発表した。

 見解では、社会保障3党協議について「自公が抜本的な制度改革の議論を拒否し続け、(昨年6月の)3党合意を踏まえていない」と指摘。その上で「今後3党合意を踏まえた議論ができないような協議には応じない」としている。


民主、3党協議離脱を決定 社会保障制度改革  - MSN産経ニュース 民主、3党協議離脱を決定 社会保障制度改革  - MSN産経ニュース 民主、3党協議離脱を決定 社会保障制度改革  - MSN産経ニュース



このように、財政再建社会保障と言った、これまで使われてきた消費税増税の理由は、すでに論拠を失ってしまったと言えるでしょう。それではなぜ財務省は未だに予定通りの消費税増税にこだわるのでしょうか。


昨年、このブログで、僕は消費税増税の真の目的は、官僚や政治家の利権であると言いました。

財務省の財務省による財務省のための消費税増税 - Baatarismの溜息通信 財務省の財務省による財務省のための消費税増税 - Baatarismの溜息通信 財務省の財務省による財務省のための消費税増税 - Baatarismの溜息通信

消費税増税を主導したのは誰なのか? - Baatarismの溜息通信 消費税増税を主導したのは誰なのか? - Baatarismの溜息通信 消費税増税を主導したのは誰なのか? - Baatarismの溜息通信



これらの記事については財務省陰謀論だという批判も受けましたが、最近になって消費税増税に景気の落ち込みを防ぐために景気対策をするという記事が出てきて、正にこの時の僕の意見を裏付ける話だと思っています。

 政府が消費税増税の実施判断に合わせて平成25年度補正予算を秋にも編成する方向で検討していることが22日、分かった。26年4月から増税しても景気が落ち込まないよう増税前の経済対策を講じることで、景気回復と財政再建の両立を目指す。安倍晋三首相(自民党総裁)は引き続き経済再生に全力で取り組む方針で、「成長戦略実現国会」と位置づける秋の臨時国会を乗り切るため石破茂幹事長ら党幹部を再任させる方向で調整し、政権の態勢固めを急ぐ。


政府・自民、増税前の景気対策へ秋にも補正予算編成 石破幹事長ら再任へ - MSN産経ニュース 政府・自民、増税前の景気対策へ秋にも補正予算編成 石破幹事長ら再任へ - MSN産経ニュース 政府・自民、増税前の景気対策へ秋にも補正予算編成 石破幹事長ら再任へ - MSN産経ニュース



これだと仮に消費税増税で税収が上がったとしても、景気対策財政支出が増えるので、相殺されてしまいます。そもそもそんな景気対策をするくらいなら、消費税増税を見送るのが一番でしょう。
しかも、消費税増税で税収が上がるという意見も怪しいものです。昨年、国会で古谷一之財務省主税局長が、デフレ下で消費税増税をしたら税収は減ると答弁しています。

西田参議院議員

「デフレ下で増税したら
 税収は増えますか?」


古谷一之財務省主税局長答弁

「減ります」


大学では教えられない歴史講義 : 古谷主税局長歴史的答弁「デフレ下での増税は税収を減らす」 by kurayama - 憲政史研究者・倉山満の砦 大学では教えられない歴史講義 : 古谷主税局長歴史的答弁「デフレ下での増税は税収を減らす」 by kurayama - 憲政史研究者・倉山満の砦 大学では教えられない歴史講義 : 古谷主税局長歴史的答弁「デフレ下での増税は税収を減らす」 by kurayama - 憲政史研究者・倉山満の砦



しかし財務省の視点から見ると、消費税増税による税収を景気対策名目で補正予算として配分することで、財務省の権力が増します。財務省シンパの政治家にとっても同様でしょう。
このように、消費税増税はマクロ経済の視点で見れば無意味ですが、財務省など増税派の利権確保という視点で見れば、大きな意味があります。

高橋洋一氏は、財務省増税を志向するのは予算での「歳出権」の最大化を求めているからだと言っています。

財務省の行動原理はシンプルだ。世間一般には財政再建の守護神のように言われているが、それは財務省の広報戦略だろう。本当に財政再建を目指すなら、増税ではなく経済成長を目指す。そのほうが財政再建への近道・王道だからだ。

ではなぜ、財務省増税を指向するのか。それは、予算での「歳出権」の最大化を求めているからだ。予算上、増税は歳入を増やし結果として歳出を増やす。さらに、歳入は見積もりであるが、歳出権は国会の議決で決めるのが重要だ。実際の税収が予算を下回ったとしても、国債発行額が増えるだけで、歳出権が減ることはない。この歳出権は各省に配分されるが、それが大きければ大きいほど財務省の権益は大きくなる。このため、財務省が歳出権の最大化を求めるのは官僚機構として当然となる。

 この行動様式を踏まえると、財務省は今後どのような動きを見せるか。消費税増税のために、増税による財源を使った財政支出(バラマキ)は歓迎するだろう。この点は一部の族議員の利害とも一致する。アベノミクスで税収が上振れするだろうから、来年早々には補正予算の話にもなる。

 安倍政権は法人税減税を目論んでいるが、財務省にとって減税は「歳出権」を減らすので避けたい。小泉政権の時も、法人税減税が政治課題になったが、結局財務省は投資減税で手打ちをした。このあたりの財務省の政治的動きは老獪であり、小泉総理でもかなわなかった。

安倍総理は、財務省とどのように対峙するか。経済政策で財務省をうまく扱わないと、まともな政策はできなくなるだろう。


参院選後に財務省はこう動く  | ドクターZは知っている | 現代ビジネス [講談社] 参院選後に財務省はこう動く  | ドクターZは知っている | 現代ビジネス [講談社] 参院選後に財務省はこう動く  | ドクターZは知っている | 現代ビジネス [講談社]



僕もこれが財務省の本音であり、財政再建社会保障はそれをカモフラージュするための名目にすぎないと思います。
また、この「歳出権」の最大化という考え方を使えば、かつて民主党が公約とした子ども手当や、最近削減されてしまった生活保護*1財務省の裁量が入らない支出であるため、「歳出権」の最大化という目的からは否定すべきものとされるでしょう。恐らく、今後は高齢者の年金や医療費が槍玉にあがり、社会保障負担の圧縮という名目の元、本音では「歳出権」の最大化に反するものとして削減されるのでしょう。その煽りを受けるのは貧しい高齢者であり、彼らは財務省の「歳出権」のために死に追いやられるのかもしれません。


このように財務省が消費税増税にこだわる理由を考えると、「歳出権」の最大化という目標に行き着きます。そして、その「歳出権」の最大化という視点から様々な問題を考えると、これまでは見えなかった別の理由が見えてくると思います。
そのような考え方が行き着く先は、個人の権利が官僚の利権のために当たり前のように蹂躙される、今の中国のような社会ではないでしょうか。

9/17補足

この記事はタイトルを間違えていました。元のタイトルは「「裁量権」のための消費税増税」でしたが、「歳出権」の間違いでした。とんでもないポカをしてしまい、申し訳ありませんでした。

*1:そういえば、生活保護叩きで有名になった片山さつき議員も元財務官僚ですね。Wikipediaによると「大蔵省の厚労省担当主査だった頃からのこだわり」があるそうです。参照:「片山さつき - Wikipedia