Baatarismの溜息通信

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民主党でもマニフェストにリフレ政策採用の動き(その3)

このブログでも注目していた民主党の動きですが、残念ながらインフレターゲットは採用されなかったようです。

 [東京 12日 ロイター] 政府・民主党が今夏の参院選マニフェスト政権公約)の策定に向け、実務者による「マニフェスト企画委員会」で本格的な調整に入ったが、同党の「成長・地域戦略研究会」が報告書に盛り込んだ「インフレ目標」の導入は明記されない可能性が高まった。

ただ、ギリシャの財政危機問題が顕在化し、厳しい財政事情の中、重要課題に掲げる「デフレ脱却」に向けて、政府・与党による金融政策への期待は継続しそうだ。

 マニフェスト策定のため、民主党が設置した3つの研究会の1つである「成長・地域戦略研究会」は、デフレ脱却に向けて「経済成長、財政健全化を実現するため、あらゆる手段を講じ、デフレ脱却に取り組む」とする報告書をまとめ、7日に企画委員会に提出した。具体策として「政府が先進国の物価目標値などを目安」に数値目標を設定し「日銀が目標達成に向け、自主的かつ果断に金融政策を行う」とするインフレ目標の導入を明記している。

 企画委員会では3つの研究会の報告書を踏まえて20日をメドにマニフェストの素案をまとめ、5月末に鳩山由紀夫首相が議長を務める「政権公約会議」で最終決定する予定。

 企画委員会で党側のトップを務める高嶋良充筆頭副幹事長は11日、ロイターとのインタビューで、研究会の報告書に盛り込まれたインフレ目標の取り扱いについて「(マニフェストに)盛り込まないほうが良い」と言明、マニフェストには反映されない公算が大きくなった。理由として、目標を掲げても実現の手段が乏しいことなどを挙げ、日本がインフレターゲットを設定することに疑問を投げかけた。

 一方の政府側にも「あからさまな日銀に対する圧力ととられたくないとの意向がある」(政務筋)とされ、党の研究会の検討過程では、研究会役員が提示した報告書のたたき台からインフレ目標がいったん削除された経緯もある。

 日銀は、これまで白川方明総裁がインフレ目標を採用している海外の中央銀行の事例を挙げて「インフレ目標の枠組みに反省の機運が出ている」などと繰り返しており、金融政策の目標として明確な物価水準を設定することにはもともと否定的だ。 


「インフレ目標」は民主公約に盛り込まれない公算、日銀に圧力継続 | Reuters 「インフレ目標」は民主公約に盛り込まれない公算、日銀に圧力継続 | Reuters 「インフレ目標」は民主公約に盛り込まれない公算、日銀に圧力継続 | Reuters このエントリーをはてなブックマークに追加



マニフェスト企画委員会」政府側代表である仙谷由人国家戦略担当相がリフレ政策に批判的であることは知っていたのですが、今回は党側の代表である高嶋良充筆頭副幹事長も反対に回ってしまったようです。*1高嶋氏はこれまで経済政策では特に目立った発言はなかったと思うので、おそらく日銀からの根回しがあったのでしょうね。「成長・地域戦略研究会」の提言を見て、日銀がそれを黙って見過ごすなんてことはありえませんから。
この記事には「理由として、目標を掲げても実現の手段が乏しいことなどを挙げ、」とありますが、日銀が国債などの債権を買い続けていけば、必ずインフレになるはずです。「実現の手段が乏しい」というのは日銀が金融政策でデフレ脱却することは困難であるという意味ですから、これは日銀の言い分ですね。こういう理由付けは、日銀や日銀につながる議員や経済学者から吹ここまれたものだと思います。


民主党マニフェストで将来の消費税増税を打ち出すそうですが、現状のような「日銀に圧力継続」を続けていても、日銀に明確な責任を負わせることはできませんから、デフレ脱却は困難でしょう。従って景気も本格的には回復せず、いずれは不況のまま消費税増税に追い込まれ、経済が大混乱した1997〜1998年のような事態を再現することになりかねないと思うのですが、その時民主党は政権を維持できるのでしょうか?
もっとも民主党が政権を失うだけならまだ良いのですが、その時日本経済がどんな惨状に陥っているのか、そしてそれを見た国民が民主的な政治そのものに絶望してしまわないか、最近はそんな心配までしてしまうのです。

*1:高嶋氏のインタビュー記事でも、インフレターゲット反対の発言をしています。 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15246820100511